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プロローグ 老人
リューンの街はずれに遺跡があり、そこに老人がひとりで住んでいた。
かつての玉座は犬の寝床になっていて、石像が置かれていた壁龕は本棚の代わりになっている。白い顎鬚を引きずりながら、蔓草に縛られた回廊をさまよい、ときどききいたことのない言葉をつぶやくことがあった。
彼はときおり鼠皮紙に詩のようなものを綴ることがあった。それは見たこともない言葉で綴られていて、それがわかるのは老人だけだった。
大きな炉台の跡地に横になって眠るとき、彼はときどきつぶやくことがあった。
「わたしは誰の安らぎにもなれない。わたしは土くれだ」




