Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 26
更新ペース抜くって言ったけどそれ冷静に考えたら7日だったわ!ガハハ
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というわけで以後は↑からストーリーを追ってください
こちらの更新は以後停止とし、期を見て7万字ないしチャプターごとに保存した「アーカイブ版」として投稿内容を再編していきます
至純の光を放つ小さな太陽は、しかし、次の瞬間には、はちるが、ふっ、と息を吹きかけると、
まるで蝋燭の火のように、あっけなく消え失せた。
世界が、再び、元の質量と法則を取り戻す。残されたのは絶対的な力の残滓と、肌を粟立たせるほどの畏怖だけだった。
そしてはちるは、いそいで自分の腕や胸を撫でまわし、
「よかった……おばあちゃんにはなってなさそうちる!」
と声を上げる。
「……よし。やっぱ、やれるよな。ヤバくなったら大怪獣バトルでなんとかなるってワケだ」
一応は制御された創世の力の顕現に、アシュリーは安堵の表情を浮かべた。
「うーん、でも、また同じことができる”ちる”かな……?」
「……えっ?」
その、あまりにも自然に付け加えられた語尾。
――ちる?
3人の思考が、一瞬、完全に静止した。はちるの言葉の最後に、なにか聞き慣れない響きが混じっていなかったか。
おせちとアシュリー、さなは、互いに視線だけで問いかける。
気のせい?
いや、確かに聞こえた。そして、そのあまりに間の抜けた響きが、
宇宙を創り変えるほどの力の「代償」なのだと、3人は直感によって理解した。
しかしはちるの、その問いかけ自体が、3人にとっては好都合な“言い訳”となっている。
はちるが気にしているのは、力の再現性。語尾のことではない。
「……?みんな、どうしたちる?」
「いやなんでもない。大丈夫だし全然技もイケてたよ、リスクも何もなさそうだし」
アシュリーが、わざとらしく明るい声で言う。
「うん、そうだね!」
おせちも、ぎこちなく微笑んで頷いた。そして2人は、はちるにだけ分からないように、
一瞬だけ、欺瞞に満ちた顔を見合わせた。
この、あまりにシュールで、あまりに不憫な秘密を、自分たちだけで抱えていくのだと、
覚悟を決めるかのように。
「……ただし!それでもこのカードはやっぱり――切った時点で私たちの負けって認識でいこう。
力任せの解決は、思考を放棄したのと同じことだよ」
しかしおせちは、安易な結論自体には待ったをかけた。
「――はちるの力は、あくまで、本当に、他に何もなくなった時のための最後の保険にしなきゃ。
だっていいかい?規格外の力同士が衝突したらどうなるか……前の戦いで私たちは見たはずでしょ?
今度こそ、世界が本当に消し飛ぶかもしれないんだよ」
その言葉に、さなも、はちるを庇うように、悲痛な声で続ける。
「うん……。はちるには、もう、あんな思い、させたくないな……」
その一言で、アシュリーはついに折れた。
「……わかったよ」
彼女はバツが悪そうに視線を逸らすと、どこか納得したように、そして吐き捨てるようにそう言った。
「そうだよな。そもそもアキノは敵じゃない。正直言って、ただの、ちょっとかわいそうな奴だ」
アシュリーが意見を取り下げたのを見て、はちるは「待ってました」とばかりに胸を張り、
得意げに片目を瞑ってみせた。
「……ほらね?ウチが正しかったちる!でもウチは心が広いし、
アシュリーの間違いはチェルシーのユニフォームを着て町を1周してくるだけで、
ぜーんぶ水に流してあげるちるよ」
その提案に、アシュリーの顔からサッと血の気が引いた。
熱心なグーナー(アーセナルのサポーター)である彼女にとって、
宿敵チェルシーのユニフォームを着て街を歩くなど、死刑宣告にも等しい、最大の屈辱だった。
「うるさい、このツルツルが!その語尾、一生治らないように呪ってやるからな!」
アシュリーは、精一杯の負け惜しみを吐き捨てるのがやっとだった。
「『語尾』ぃ?ちょっとアシュリー、それどういうこと”ちる”――」
そこまで言ってはちるは、己の口から滑り出たその間の抜けた響きに、ようやく気づいた。
――ちる?
今度は、彼女の血の気が、急速に引いていく。世界から音が消え、姉妹たちの顔が、
遠い世界の出来事のようにぼやけていく。ピシリ、と、まるで精巧な石膏像に亀裂が入るかのように、
はちるの全身が、その完璧な笑顔のまま、硬直した。
やがて、その唇から、ほとんど空気の振動に近い、絶望に染まったささやきが漏れた。
「……嘘ちるでしょ……」
姉妹たちの他愛もないやり取りに、おせちは小さくかぶりを振って、苦笑を浮かべた。
だが、すぐにその表情を引き締めると、彼女はちゃぶ台の上に投影されるホログラムディスプレイに向き直り、チームの新たな方針を、そこにいる全員に、そして何より自分自身に言い聞かせるように、
宣言した。
「アシュリーの言う通り、アキノさんは敵じゃない。だから、私たちが探すべきなのは、
彼女を『倒す』方法じゃない。彼女の『思い込み』を、世界を壊さずに、
安全に『解く』方法。……何か、もっと穏当な解決策があるはずなんだよ」
だが、その『穏当な解決策』が、具体的に何を指すのかは、今のところ誰にもわからない。
「神」となってしまった引きこもりの少女を、どうすれば、ただの「人」へと戻せるのか。
その、あまりに繊細で、あまりに困難な問いの答えを、4人は、これからただ探り続けていくしかない。
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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