Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 25
しかし、アシュリーの威勢のいい宣言も、はちるの不安を拭い去るには至らない。
「うーん……」
彼女は小さく唸ると、姉妹たちの期待の視線から逃れるように、わざと遠くの壁を見つめる。
そのうち視線を、フラダンスの手使いのよう絶え間なく泳がせ続けるようになり、顔中から汗を滝のよう流し、組んだ指先を落ち着きなく遊ばせるようになる。
その妙な沈黙に、最初に業を煮やしたのは、やはりアシュリーだった。
「どうしたんだよ、はちる?」
その問いかけに、はちるは観念したように、しかし消え入りそうな声でこう答えるのが精一杯だった。
「……やっぱり、ちょっと怖いカモ」
そのか細い呟きを、アシュリーは鼻で笑うように遮った。
「何が怖いんだよ。ほら、やってみろって。ビッグバン、ビッグバン」
「やだ、怖いもん!」
はちるは子供のように首を横に振るが、アシュリーは構わず、その迷いを蹴散らすように言い放つ。
「大丈夫だって! 責任は私が取るから」
「責任って……アシュリーがどう取るの!?」
はちるがむっとした顔で食い下がる。すると、それまでの威勢はどこへやら、
赤髪の少女は急にばつが悪そうに目を逸らした。
「えっ?あー……それは、まあ……分割払いとか」
そのあまりに不真面目な返答に、はちるが何か言い返そうと口を開きかけたが、それは叶わなかった。部屋の空気は、すでに彼女の小さな抵抗を許さぬ流れになりつつあったからだ。
「……でもたしかに、頼れるのがはちるだけって状況はこの先十分あり得るからね。全能の力を
相手に――リスクのことは言ってられないよ。やれるかどうかの確認だけはしなきゃ」
これまで制止役だったおせちの、その一言が決定打となった。
アシュリーだけでなく、最も理知的な彼女までもが同調したことで、部屋の空気は完全に「やる」方向へと傾く。逃げ場を失ったはちるに、姉妹たちの期待と焦燥が混じった視線が突き刺さった。
観念したように、はちるは小さく息を吐く。
「……ホントに、ちょっとだけなんだよ!?」
そう言って皆の前に差し出された手のひらは、その悲壮な決意とは裏腹に、
まるで迷子の子どものように、少しだけおずおずとしていた。
その中心に、光が灯る。
「わぁ……!」
さなが、息を呑むかすかな音が聞こえた。
それは、ただの光ではなかった。掌の上でそれが生まれた瞬間、部屋の空気がふっと質量を失い、時間の流れさえもが、このまま逆流していきかねぬほど曖昧に揺らぐ。
姉妹たちの意識には、存在しないはずの星々の誕生と、銀河が渦を巻く時の、
深遠の奥の奥をめぐるその音が、抗いようもなく直接流れ込んできた。
無から有が生まれる、原初の瞬間。「可能性」のすべてが、その1点に凝縮されている。
誰もが、声もなく、直感だけで理解した。――これは、宇宙創成、そして破壊の力そのものだ、と。
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