Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 5 23
パタン、とドアが閉まり、部屋には再び、20年来の沈黙が戻ってくる――はずだった。
ドアが閉まる寸前、その隙間から、白い手がにゅっと伸び、最後尾にいたはちるの腕を掴んだ。
「待って――」
ひやりとする指の感触に、4人全員が凍りつく。ドアが、再び、人が1人通れるかどうかの幅だけ、ゆっくりと開かれた。暗い部屋の奥から、アキノが、まるでホラー映画のワンシーンのように、
底知れぬ闇を帯びた片目だけを覗かせている。
瞳は、じっと4人を観察していた。
はちるの表情が、恐怖に極限までひきつった、その1点で完全に凍りついた。
*
緊張を破ったのは、ドアの隙間から、無言で差し出された4つの物体だった。
それは、4つの新しいアルミ帽子だった。先ほど被っていた、急ごしらえの歪なそれとは違う。
幾重にも折り重ねられ、頭の形にぴったりと合うように、完璧なシンメトリーで成形された、
芸術品のようなアルミ帽子。まるで、妄想と職人技の結晶だった。
「……予備よ。あなたたちが被っていたのは、あくまで緊急用。こっちが、対思考操作用の正式モデルだから。……あげるわ。大事に使って」
ドアの奥から、ささやくような声が聞こえる。
アシュリーは、差し出された“正式モデル”の1つを、まじまじと見つめた。その皺ひとつない見事な出来栄えに、彼女は無意識のうちに、こう感じていた。
(……なんだこのクオリティ?……こういうモンにも、職人技ってあるのかよ……)
やがて、4人がそれぞれ帽子を受け取ると、ドアは、今度こそ静かに、そして固く閉ざされた。
……そして20年来の沈黙がようやく取り戻される。
アキノは、1人、ガラクタの山の中心に立ち尽くしていた。
なりゆきだったとはいえ、この聖域に、自分以外の人間を入れた。
20年以上、決してありえなかったこと。部屋の空気には、まだ、あの騒がしい少女たちの匂いが、
微かに残っている気がした。
彼女は、はちるが神懸っていた床の1点を、そっと指でなぞる。
そして、自分でも気づかぬうちに、その血の気のない唇に、ほんのかすかな、
ささやかな笑みが浮かんでいたことに、アキノ自身は、まだ気づいていなかった。
「本当に不思議なこと。今日はなんだか、ゆっくり眠れそうね。久しぶりに――」
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