未来から来た転校生
―――2019年、今から7年前の2012年にタイムスリップします。
注意 タイムスリップした後2012年の自分に会っては行けません。会ってしまった場合は、元の時間軸に自動的に戻ることになっています。また、1年が経過した時、元の時間軸に必ず戻らなければなりません。
「よしっ!いっけえええええええ!」
―――必ず先生と付き合ってみせる!!―――
とある会社の社長の高校2年の娘、宮川かじゃは一途だった。その上諦めも悪かった。そんな彼女が恋をしたのは既婚男性の先生だったため、彼女は父が開発したタイムマシンで過去にタイムスリップすることを決意する。
しんみりと静まり返った教室にいつも猫を被ってきゃぴきゃぴしているさやちゃん先生も、ついつい顔からコイツ痛…という感情が出ている。そして、みんなの視線が完璧彼女に集まった時、
「だからー…未来から来ました!宮川かじゃです!」
彼女は窓側の、黒田 優希に視線を向けて自己紹介しているようだった。なぜか見つめられたことに彼は驚き、視線を逸らした。
「……………ぶっ、フォーーーー!!!」
1番後ろの席の男子Aが吹いた。それに続いてクスクスと笑う声も聞こえてきた。
「冗談キツイよ転校生!つくならもっと上手い嘘にしよーぜ!なー?」
「嘘じゃないし!ほんとだってば!!」
「とりあえず先生、宮川さんの席を…」
学級委員の東山 晴人が声を上げた。東山は優希の親友で責任感があり、クラスをまとめるのがうまいため学級委員になった。先生は自分のキャラが崩れかけたことに気づいていつもの調子に戻り、
「そーね!じゃ、宮川さん。廊下側の1番前の席があなたの席よ。」
「…はい。」
こうしていつもよりドタバタした朝のホームルームが終了した。
「ねえねえ晴人君、あれ…何?」
東山に声をかけたのはバスケ部の神谷 咲。かなりの人見知りだが仲良くなったらとても面白く笑顔が可愛い子だ。優希はそんな彼女に密かに思いを寄せていた。
「ん?あー、…気になる?咲。」
「別にそーゆー意味で気になるんじゃないけど、あれはつまり…
優希もついにモテ期きたかー!」
ホームルームが終了した直後のことだ。転校生がまたまたおかしいことを言い始めた。
「高校生の頃も今と全然変わらないんだあ、…優希先生。」
「…………は?」
優希は心の底から驚いた顔をして彼女を見た。
「あ、…いや、その…」
「今お前優希゛先生゛って…。」
「お、お前!?…………名前で呼んでくれてたのに…。」
彼女はちょっとムッとした表情になった。
普段彼から名前で呼ばれていた彼女からしたらその反応も自然だろう。
「…そっか、俺…先生になるのか…。」
「え?」
「だって、優希゛先生゛なんだろ?」
「うん、え、未来から来たって信じて…くれるの??」
「ああ。」
そう言った彼は小さく笑った。
その微笑みに赤面した彼女に、
「宮川さん真っ赤じゃーん。優希、あんまりちやほやすんなよ」
「してねーよ!!…って東山!」
東山は真面目だがこういう一面もある。
「私もいーるよ。」
「…さ、咲!!」
「東山と咲ね!よろしく!」
コミュ力が高いのかフレンドリーなのか知らないがこの分だと超人見知りの咲とも仲良くなるのは早そうだ。
「おう、よろしく!?」
「…よ、よろしく!」
「聞いてくれよ二人とも。俺、将来先生になるらしいぜ。」
「え!?優希がー!?お前陸上選手じゃないの?」
優希は一瞬時間停止したように止まってそのあと答えた。
「いや、まあ将来の俺は先生になってるらしいから」
「ゆーき君がせんせーかー…なんの教科担当なの?」
いつもは人見知りでなかなか自分からずばずばしゃべれない咲が、今日初めてあったかじゃにしゃべりかけた。
「体育!!高一の私の担任だったよ。」
かじゃが瞳の奥から光を輝かせ、答えた。
「体育かー!!まあ優希は体育だよなー」
「体育!…」
優希は素直に喜んでいるようだった。
「よしっ、俺やっぱり宮川さん信じるよ!なんか楽しそーだし」
「わ、わたしもっ」
「え、ホント?!…うへへへへ」
「………どした?」
優希が若干引き気味にニヤニヤ笑っているかじゃに尋ねた。
「いやぁ、やっぱ信じて貰えると嬉しいなって…。あ!もちろん先生に信じてもらった時も嬉しかったよ!!」
「あのさ、俺ここじゃまだ先生じゃないから優希って呼んで」
「えっ、呼び捨てでいーの!?」
「うん。むしろその方がいい。」
――ついに…!!先生を呼び捨てで呼び合う仲に!!(違う)
「なーんか、宮川さん勘違いしてそーだけど、…いーや!」
転校初日、過去に来てから初めての1日、そんな感じで上手いこと過ごすことが出来た。
――――この調子で先生とも上手く行っちゃうかも?!――
この時はまだ、新しく友達になった咲が先生(優希)の妻になるということに、かじゃはまだ気づいていなかった。