第八十九話:暴風の怪物ヴァルゴアと、大理石壁の籠城戦
王宮の広間に入った領主ガレス様 は、玉座に佇む俺――ハナシ・リョウガの御前へと進み出ると、険しい表情でこれからの防衛戦略 について問いかけてきた 。
俺は冷酷に微笑み、淡々と告げた。「ア amphitheater める必要はねえ。俺たちはただ、あの外のハイエナどもが互いに血を流し合い、限界まで『弱体化 』するのをここで静かに待つだけだ。もし奴らが共倒れした後もこの街の主権を侵そうとするならば……その時は、俺の影の剣と『消滅』の権能を以て、残らず灰にしてやるさ」
ガレス様はその恐るべき冷徹な智謀に深く頷いた。――しかし、その会話の最中だった 。
ズズズズズズズズッッ!!!!
突如として、三百年前の大崩壊をも想起させるほどの凄まじい「大地震 」が王宮を襲い、大理石の床が激しく鳴動した 。同時に、世界の終末を告げるかのような悍ましい咆哮 が真昼の空全体を埋め尽くした 。
一人の冒険者の斥候 が、全身の血の気を引かせ、(大慌て)で広間へと転がり込んできた 。
「ほ、報告します! 遥か彼方の地平線から、すべてを呑み込む漆黒の特大の『砂嵐 』が、この都市に向かって猛烈な速度で突進してきています! 一体、あの嵐の正体が何なのか、誰も視認できません!」
俺たち七人とガレス様は、即座に大理石の防壁の上 へと駆け上がり、眼下の荒野を見下ろした 。
驚くべきことに、つい先ほどまで血で血を洗う大戦争を繰リ広げていた4つの独立王国の軍勢は、その異次元の地鳴りを聞いた瞬間、一斉に戦闘を中断 し、背後から迫り来る巨大な嵐の壁へと恐怖の目を向け、完全に硬直していた 。
その時、アラマンドン正規軍を率いる最高位の『魔導士隊長 』が、喉を張り裂けんばかりの声で絶叫した 。
「総員、ただちに大壁の内側へ退避しろ! 結界の奥へ隠れるんだ! 奴らが来た……あの伝説の不浄なる捕食種族**『ヴァルゴア(Vargor 』**の群れだ!!」
その名を耳にした瞬間、百戦錬磨の領主ガレス様の顔から完全に色が消えた 。王は即座に突撃の角笛を鳴り響かせ、全軍に命じた。「アラマンドン全軍、退却! 最速で都市の内部へ逃げ込め!」
撤退の喇叭 が激しく吹き鳴らされ、王国の数万の兵士たちは大慌てで城門の奥へと雪崩れ込んでいった 。
さらに、これまで戦いを静観していた**『ヴァラー王国 』**の総大将も、この絶望的な事態を本能で察知し、即座に俺の元へ隠密の『伝令 』を派遣してきた 。奴らは頭を下げ、俺たちの街への緊急避難 を懇願してきたのだ 。
「……入れてやれ。敵の数が減る前に、自滅されては面白くねえ」俺の冷酷な許可により、ヴァラーの軍勢も最速で城門へと滑り込んだ 。
しかし、荒野のど真ん中で孤立した残りの独立王国(アスガルドン、アラディア、ベルヴェデーレ、リバーデル)の軍勢は、己の『傲慢 』と指揮官たちの無能さゆえに、この警告を無視し、迫り来る嵐の前に強固な防御陣形 を維持し続けた 。
ガレス様は防壁の上から何度も彼らに退避を促したが、奴らは動かない 。
「魔導士部隊、ただちに土属性の複合魔術を展開しろ! 破壊された防壁の亀裂 を一時的に修復し、要塞を完全閉鎖するんだ!」
ガレス様の命令により、数百人の魔導士たちが【大地魔法】を発動し、度重なる激戦で崩壊していた防壁の を、数トンの巨石と土壁によって一時的に強固に『修復 』し、巨大な城門を完全に閉ざした 。
俺、ガレス様、タリン、キングラッド、 shadow そして数万の兵士たちは、息を殺して防壁の上から眼下の戦場を見つめていた 。
俺は、立ちはだかる敵のプレッシャーの前に**「 sh兵たちの肉体 」**が恐怖でガタガタと震えていることに気づき、冷淡に問いかけた 。
「……おい。なぜお前たち人間は、あの程度の砂嵐にそこまで『恐怖 』を抱いていやがる?」
エルフの魔導士に代わって、アラマンドンの魔導士隊長が青ざめた唇を震わせながら答えた 。
「リョウガ様……奴らは生ぬるい魔物などではありません。歴史の闇に封印されていた**『巨人族の悍ましき末裔 』**です。皮膚は鋼鉄よりも硬い厚い革 に覆われ、人間の肉 を貪り喰らうことしか頭にない、絶対の無慈悲なる虐殺種族なのです……!」
タリンが大斧の柄を握り締め、太い眉をひそめた。「チッ、そんな不浄な が、なんでこのタイミングで出現しやがったんだ!」
その瞬間、地平線を埋め尽くしていた巨大な (砂塵の嵐)が、防壁の目と鼻の先へと到達した 。
嵐の奥から、空間をへし折るような、太く狂暴な咆哮 が轟いた 。霧を引き裂いて姿を現した奴らの容姿は、巨大なオーク の肉体をさらに数倍に巨大化させ、口元からは長い牙 が突き出、頭頂部からは不気味な二本の角 が生えていた 。 shadow そしてその瞳は、底知れぬ殺意を孕んだ『赤と黒 』の二色に染まっていたのだ 。
驚くべきことに、奴らはただの歩兵ではない 。狼とハイエナ を悪魔の合成魔術で掛け合わせたかのような、巨大な魔獣の背に跨る『狂暴な騎兵部隊』だった 。
ウゥゥゥゥゥォォォォォォンッッ!!!!!
襲撃種族ヴェルモロスに怯える捕食者『ヴァルゴア』
生体特徴鋼鉄を凌駕する強固な『 ch皮革の皮膚』、頭部の一対の角
戦闘形態狼とハイエナを合成した巨大魔獣を駆る「 狂暴な魔騎兵」
捕食傾向人間の肉(生きたまま骨ごと噛み砕く)を最優先とする
ヴァルゴアの突撃の喇叭が荒野に鳴り響いた瞬間、奴らは凄まじい突進力で、防壁の外に していた独立王国の数万の兵士たちへと一斉に襲いかかった 。
「ギャァァァァァァッ!!」「助け……っ!!」
地獄絵図だった 。ヴァルゴアの巨大な短剣の爪と大斧が、人間の兵士たちの肉体をいとも容易く (切断・粉砕)にし、荒野は一瞬にして血の海と化した 。それだけではない 。奴らは恐怖に狂う兵士たちを巨大な手で掴み上げると、その場で『生きたまま骨ごと噛み砕き 』、肉を貪り喰らい始めたのだ 。凄まじい咀嚼音と悲鳴が荒野全域に された 。
その凄惨すぎる蹂躙劇を見かねたタリンが、顔を引き攣らせて大斧を構えた。「大将……! 俺たちも今すぐ飛び出して、あのクソ豚どもをぶち殺しに 行くべきじゃねえのか!?」
しかし、領主ガレス様が即座にタリンの肩を掴み、凍りついた声でそれを制した 。
「……ダメだ! 決してあの外の戦いに連動してはならん! 奴らは通常の武力では絶対に『殺せない 』不滅の肉体を持っている! 奴らの目的は純粋な捕食……。外の強欲な兵士たちを喰らい尽くし、腹が『満たされれば 』、奴らは自ずとこの地から立ち去る はずだ。今はただ……耐えるしかない……!」
しかし、そのガレス様の言葉が終わるか終わらないかの、まさにその瞬間だった―― 。




