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終活アイドル ラスト☆スターズ ~アイドルの寿命は短い!~  作者: 水鳥 いつき


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20/20

20話 フィナーレ ~終幕!~

さらに半年が過ぎた、幸い俺達の寿命は尽きなかった。 


マコが九段下の駅を降り、お城にあるような立派な木で出来た門をくぐった。そしてしばらく歩くと武道館が見えてきた。

会場の外には既に多くのファンが集まり記念撮影やグッズを買ったりしていた。 

ラスト☆スターズ武道館ライブと書かれたポスターをしばらく見つめてから、マコは列に並んだ。

この列の中には、アヤカ、アキ、マキ、モモカの姿もあった。

開演30分前、時計を見たマコの心臓の鼓動が強くなる。もうすぐだ。

その時マコの身体からもう一人の女性の身体が出てきた。 

マコから出てきた魔女はアリーナの前のほうへ飛んでいった。

あの葬式の日、5人を若返らせた魔女は自分の記憶を消し、たまたま近くにいたマコに取り付き、マコの体験を共有していたのだった。ゲンちゃんや他のメンバーとの思い出を。 


アリーナの一角のスペースに降り立った魔女が右手を軽く振ると死んだノリとシーちゃんが現れた。

3人の姿は周りの人達には見えなかった。


「賭けはワシの勝ちだな魔女さん。今日はあいつらの青春をじっくりみせてもらうぞ、天国への良い土産が手に入るな」

ノリが広いステージを見渡しながら笑顔をこぼす。


「この会場見ただけて涙がでそうになるやん。みんなワシが死んだ後ほんまに頑張ったな」

シーちゃんがステージの壁のラスト☆スターズの看板を見つめる。


もうすぐ始まる……魔女がつぶやいた。


照明が暗くなる。 会場が大きな歓声に包まれると4色のペンライトが輝き激しく動き光の海を作る。

最新曲『宇宙で1つだけの星』のイントロが流れる。 この武道館ライブのセットリストは最新曲から過去にさかのぼっていく構成になっている。 全くの素人だったデビューのあの時に向かって。

満員の会場からファンのそれぞれのメンバーの名前を叫ぶ声が聞こえる。

その声がやがて全員で「ラスト☆スターズ」と何度も叫ぶ声に変わる。


「こんばんわ、ラスト☆スターズです!」 ヨーくんの笑顔でライブが始まった。


「見ろよあのカッコいい4人を。あれで全員童貞なんだぜ? ……ったく、あいつらも魔法を使ってるとしか思えんよ」

ノリはうっすら涙を浮かべ、頼もしくなった彼らを見つめていた。「ゲン、リョウ、キヨ、ヨー……最高だ」


シーちゃんが亡くなった後にゲンちゃんが初めて作った曲『幸せの黄色いハンカチーフ』を4人が歌い終わると、リョウのMCが始まった。


「ここからは、シーちゃんがいた時の5人のフォーメーションで行かせてもらいます」


観客がざわめく中、ステージ上の4人は、あえて「一人が欠けた不自然な隙間」を空けて配置についた。

イントロが流れ始めるとシーちゃんはポッカリ開いた自分がいるはずの立ち位置を見つめていた。 そして、魔女を見ると魔女が指を指し。


「行っておいで。君の居場所へ」


シーちゃんはステージに駆け上がった。 魔女とノリ以外の観客にはシーちゃんの姿は見えない。

しかし4人は何かを感じ取ったのかポッカリ開いた立ち位置に一斉に微笑みかけた。

そしてキヨが小さく叫ぶ。

 

「さぁ行こうシーちゃん」


「やったるで~!」


シーちゃんの声は誰にも聞こえず、スピーカーからは4人の声だけが聞こえる。

曲の中盤、シーちゃんパートの落ちサビ、シーちゃんはメンバーの中央に移動した。

その瞬間、会場の満員の観客が黄色のペンライトを一斉に点灯させた。


(えっ!!?)


シーちゃんの目から涙がこぼれた。 マキ達の呼びかけで密かに用意していたサプライズだった。


「……みんな、おおきに。ワイ最高に幸せや……!」


シーちゃんが心の底から落ちサビを歌い上げる、絶唱だった。


ひまわり畑のような黄色い光が武道館にやさしく広がる。その中に、ひときわ高く黄色いペンライトを掲げるマキがいる、シーちゃんの唄はマキに届いていたのかマキはシーちゃんを感じ涙を流した。


そして次々と5人で思い出の曲を歌い上げる、星型のフォーメーションがステージに広がる。


「シーちゃん最高だ! ワシの仲間は最高だ!……女の子がキャーキャー言ってるよ!」

ノリが泣きながら叫ぶ!


ライブが終わり5人が観客に向かって頭をさげる。 

魔女はいつの間にか緑色ペンライトを両手に持ちステージ上のゲンちゃんに向かって大きく降った。

ステージではゲンちゃんが涙を流しながら「ありがとう!」と手を振っている。


どこからか光が現れ、シーちゃんとノリを照らし2人は天国へ登っていった。


「ワシ、最後に唄えて楽しかった、ありがとう」

「これが青春だな、ありがとうワシに見せてくれて!」


魔女は天に登ってゆく2人を見つめながら呟く。


「馬鹿だね、ラスト☆スターズの推しになった私があんたを地獄につれていくわけないじゃん」


そして魔女は青い煙とともに姿を消した。


武道館を背に駅に向かうマコは魔女が出ていっても記憶は変わらない。スマホを取り出しゲンちゃんへのコメントを打ち込むとラスト☆スターズの次のライブをチェックした。


「推薦入学も決まったし、これからはゲンちゃんのライブ全部観るんだ!」


「推しは押せるときに推さないとね!」


ラスト☆スターズ 終わり







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