第9話 並行修行。身体強化。魔力干渉
結局遅くまで3人で酒を飲んでいた。
セフィもオレも酒が大好きな訳でも得意な訳でもないがラルフは違った。しこたま呑んでベロベロだ。
しまいには泥酔し寝てしまった。
悪いやつではなさそうだが…めんどくせぇ。
店じまいだとオヤジさんに言われてしまったので支払いを済まし店を出る。半分出すとセフィは言ってくれたがそんな気を使う事はない。支払いは任せろ。
ワンワンの財布から全て支払って店を出る。
何故なら代金のほとんどはこいつが呑んだ酒代だ。
前世でも酒で失敗した人間を大勢見てきた。
コイツももれなくその仲間入りである。
問題はこの大型犬をどう連れて帰るか、である。
一瞬悩むが即決。うん、捨てていこう。
心優しい飼い主に出会えるといいな…
そんな事を考えながら宿に向かおうとするとセフィが軽々と肩に担いだ。
と言っても身長が違う。足は引きずっている。
「こんなとこで寝ちゃったら風邪引きますよ」
ええ子や…早速優しい飼い主に巡り会えたようである。
捨てていこうとした自分を恥じる。
捨て犬、ダメ絶対。
それにしても…
「凄いなこんな巨体を軽々持ち上げるなんて…」
涼しげな顔でセフィが答える。
「さっきラルフさんが言ってたじゃないですか。身体強化がどうこうって。魔力干渉は大きく分けて2つ、大気に干渉するスキルと自身の肉体に干渉するスキルです。今私は自身の筋力に干渉して普段の何倍もの力を出しているんです」
なるほどそういうものなのか…
ここまでに来る間、全身に風を纏う練習をしていた。
それよりも肉体に魔力干渉した方が戦闘には向いているのかもしれない。
身体強化を練習していればウサギに弄ばれる事もなかったのか…
そうなると昨日の修行はなんだったのか…
いや、決して無駄ではあるまい。
魔力総量はなんとなくだが上がっている気がする。
修行を始めた時より長く魔力干渉を行えてるような手応えがあった。決して無駄ではあるまい…決して。
「魔力干渉と身体強化、同じ魔力を使う技術でも実は全くの別物なんです。それに使えるかどうかは生まれ持っての才能が全てらしいです。出来ない人は一生出来ないとも言われています。」
才能か…嫌な言葉だ。努力しても才能に勝てない事はよくある。前世でも嫌という程見てきた。
「それに覚えるなら早い方がいいんです。普通子供の内から一通りやらせて得意な魔力干渉を伸ばしていくのが一般的みたいですよ」
そうかオレはセフィの補助付きとはいえ魔力干渉を使う事が出来た。だから魔力を使う修行をさせたのか。
魔力干渉の才能アリと見なされた訳だ。
ほどなくして先ほど通り過ぎた宿まで戻ってきた。
結局息1つ切らせる事なくセフィはラルフをおぶってきた。身体強化パネェ。
運良く空いてる二部屋を取ることに成功。
ラルフを一部屋に押し込みもう一部屋でオレとセフィ…
もの凄い笑顔で閃光を打ち出そうとしてたので慌ててラルフの部屋に戻る。アレは食らったらシャレにならん。
ベットで豪快ないびきをかいて寝ているラルフを横目に布団に入る。
明日から修行と依頼をこなしながら元の世界に戻る為の情報収集だ。忙しくなりそうだ……
なんだかんだ疲れていたのだろう、悠矢はすぐに寝てしまった。ラルフと同様にすぐに寝息を立てる。
……
…………
静かに起き上がるラルフ。
寝ている悠矢を見つめながら複雑な表情を浮かべてる。
「そうか…転生者の器に選ばれたか…死んじまったんだな…ガレア」
ならばせめて親友の肉体に転移したこの異世界人の力になろう。
そんな事をしてもアイツは戻ってこない。
それはわかっている。
わかっているがこのまま何もせずにはいられなかった。
応援ありがとうございます。まだまだ修行の日々が続きます