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ディンギルマキア~神々の曙光~  作者: あんで
第一章
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1-7. 「悪逆の徒②」

第七章 悪逆の徒(アサグ・マン)


 恐らく太古の昔には水が通っていたのであろう、滝裏にある洞窟を利用したアジトは内部の通路が狭く、せいぜい一人~二人分程度の横幅しかなかった。だが長年の地形の変化により水流が途絶えた現在、水ではなくならず者(バルバロイ)の溜まり場と化した。


 ノイシュの予想通り、長期的な集団生活をするための場ではなく、あくまで儀式の時などに利用するためのアジトなのであろう。人質を運ぶために人力で幅広くされた箇所もあるが、その大部分は戦闘に向いた造りとは到底言えなかった。


  ならず者(バルバロイ)達が鬨の声を上げながら次々と襲い掛かってくる。前後から挟み撃ちにされることもあるが、背後を守ってくれるスカアハのお陰で前方の敵にだけ集中できるノイシュは、一度に多人数で襲い掛かれないと言う手狭さも相まって、襲い来るならず者(バルバロイ)達をひたすら斬り進めて行った。構造上、剣を振る動作が制限されるため突き合いの勝負となる。だが多勢であるならず者(バルバロイ)は、前方に居る味方が災いし視界の確保もままならない。前の味方がノイシュの剣に貫かれ崩れ落ちるのを見た瞬間には、ノイシュのその者への攻撃が始まっていた。


「はあああああ!!!!」


 後方で裂帛の気合と共に神速の突きを放つスカアハの影を視界に捉える。突き合いが求められるこの空間で、その巧みな槍捌きは一層の輝きを見せつける。ノイシュ独りであれば、背後から迫る敵を警戒し、より慎重に進まなければならなかったであろう。スカアハの存在は、ノイシュの進行ペースを大幅に引き上げてくれていた。


「セタンタが惚れるのもわかるぜ…!」


 親友の想い人を死なすわけにはいかない。護聖としての使命が、彼の振るう剣を更に力強いものとした。



――――――――――――――――――――――――


 おおよそ50人ほどのならず者(バルバロイ)を打ち倒し、分かれ道を進みながら、二人は重々しい扉の前へと立った。


「結構な人数が居たね…自由都市(ギルス)に残してきたのは下っ端の四分の一ぐらいだったのかい。」


 頬から滴る血を拭いながらスカアハが言った。いかに手練れの二人でも、これだけ大人数が入り乱れる狭い空間の中を、多人数の敵を殲滅させて進むのに無傷と言うわけにはいかない。とは言え、深い傷は一つもないことが、ノイシュとスカアハの高い実力を示していた。


「ああ。でも、いよいよ大詰めだな。」


 明らかにその他の箇所とは区切られている扉は、この部屋こそが儀式を行うための最深部であると思われた。中からはうっすらと呪文のようなものが聞こえる。予想通り、中では何らかの儀式が行われているのだろう。呼吸を整え、ノイシュはスカアハに目で合図を送る。


 後方を確認したスカアハは、背後からくる敵の気配がないことを確認し、頷いた。ノイシュは勢いよく扉をあけ放つ。


 その空間は、洞窟の中に合って一際広く、半球状の空間だった。長い蝋燭がいくつも火を揺らめかせ、薄気味悪い法具がそこかしこに転がっている。中央には鉄製の寝台が置かれており、拘束具とともに血が染みついていた。漂う異臭だけでなく、全体を覆う淀んだ空気がここで行われているであろう()()が、どれほど邪悪で禍々しいものかを一如に物語っていた。

 

 無人の寝台の前に、髪の毛を剃り落とした修行僧のような男の姿が見える。寝台の奥に備えられた、異教の偶像に向かって、なにやら唱えていた。


「寝心地が悪そうなベッドだな…まあ、あんたの棺桶にゃちょうど良さそうだ。」


 ノイシュが剣を構えそう言い放つ。男は呪文を止め、無言で振り返った。


「…魔徒(まと)、か。」


 このアジトの最深部らしき場所に到達した現在、人質と思しき人たちの死体は目に入っていない。この儀式場でもその姿が無いことから、恐らく奥に見える鉄格子の牢の奥に、生存したまま捉えられているのだろう。男の呪文が止んだ今、確かに奥から複数の女性のすすり泣く声が聞こえる。ひとまず人質達は無事であると思われた。


 本来であれば、無言で斬りかかるのが道理であるが、人質の無事が確認できたならば時間的な猶予もある。ノイシュ自身が疑問に思っていることを、この首謀者らしき男に尋ねることとした。


「お前がアッハーズか?それ、本名じゃなくて、「アガデのロード団」の旧神(ふるがみ)の「()」…かい?」


 ノイシュの言葉に、アッハーズと呼ばれた男が反応した。


「……貴様、ディアドラの手の者か?」


 奇岩地帯(パヌルル)と違ってここなら天地郷の場所が露見することはない。不要な問答を避ける為にも、また囚われた人たちに希望を与える為にも、ノイシュは声高に叫んだ。


「俺は護聖、ノイシュ・ウシュナハ!自由都市(ギルス)で拐われた人たちを助けに来た!」


 このノイシュの名乗りに、鉄格子の奥から聞こえたすすり泣きは、しばらくして希望の声に変わったように思われた。


「貴様が護聖…だと?小僧にしか見えぬが…いや、ここまで辿り着けた時点で並みの者ではないか。」


 アッハーズはぎろりとノイシュとスカアハを睨みつける。


「お前らは何をしようとしている?なぜ破滅的な特攻を繰り返すんだ?」


 一歩もひるむことなく、ノイシュが剣を構えたまま尋ねた。少しの静寂のあと、アッハーズが鋭い目つきのまま口を開く。


「識れたこと…旧神(ふるがみ)の「(たい)」を得る為よ。」


「ありゃあ滅多に降ろせるもんでもないんだろ?不確実なことのために数を減らすなんて賢いとは言えないんじゃないのか?」


「ふっふっ、確かに今までならそうだろう…今までならな。」


 自信に溢れた声で笑いながらアッハーズは答えた。


「………!終末の年か……!?」


「左様。我らの長年の研究により、旧神(ふるがみ)の「(たい)」を降ろすには、莫大な霊力が必要とされることがわかった。だが、その殆どは先天的なもので、それほどの素質に恵まれた者など数百年に一人誕生するかどうか…と言ったところだ。」


 アッハーズの言うことはあながち嘘とは思えなかった。確かに、護聖を始め、各国の「神」、偽帝シャヘルや悪汪レシェフらの歴史を振り返れば、これらの存在が数百年に一度しか誕生しないほど稀有なものであることは間違いないだろう。


「だが、この終末の年…「三神(さんしん)」の出現…!光の旧神(ふるがみ)バアルの誕生…!そして護聖、貴様もまた存在している。これほどの者達が同じ時代に集うことなど、未来永劫あり得まい…!」


「……だから自分たちも、()()成れる…ってか?」


「これらの事実が示すものは何だ!?即ち今この時代、終末の年には、並々ならぬ霊子(マナ)が世界中に満ちているという事だ…!溢れる程に満ちた霊子(マナ)が人に宿り、子に宿り、「神」が誕生している…!我々はそう考えた。」


「………。」


「ならば、どうすれば我々凡人は()()成れる…?一度死んで次代への生まれ変わりを待つか…?クックック…!」


 アッハーズは目を見開き叫んだ。


「いいや違う!霊力が!霊子(マナ)一所(ひとところ)に必要なら!集めればよい!集めれば良いのだよ、護聖!!!」


「……拐ってきた人たちの身体の内にある霊力を抽出するってことか?」


 ―そんなことは不可能に決まっている。人間が秘める霊力というもの自体、まだ解明すらされていないのだ。魂と同様、どこにどう在るかなど空想上の議論でしかないはずだ。…だが。


「…貴様ら…どれだけの人を……!!!」


 だが、もし、彼らがノイシュには想像もつかないほど多くの人間を解剖していたら?そんな唾棄すべき邪悪な研鑽を、旧神原理主義者(ノーデニスト)達は1000年の永きに渡り積み重ねてきたとしたら?そして不完全な彼らの理論を終末の年が後押しするとしたら?恐らくディアドラ達と彼らは、同じ旧神主義(ノーデニズム)でも()()から違う人種なのだ。ただただ旧神(ふるがみ)の妄執に捉われた、討ち倒すべき邪神の眷属…それがノイシュが彼に、彼らに抱いた感情だった。


 怒りを込めてノイシュが叫ぶ。


「お前らが他教の人ばかりを拐うのは何故だ!?霊力を抽出できるなら、お前らの仲間内で()()()()()()よ…!何故より多くの人数を失ってまで、わざわざ…!」


「クックッ…何を抜けたことを…仲間内で身体を開け合う?そんなことはとうの昔にやっているよ…!!ククク…!」


「…なっ……!」


「だが、旧神原理主義者(ノーデニスト)達は霊力の少ない者が多く、他教の者は多い傾向がある。恐らくだが、「神」の居る国は、国そのものに霊子(マナ)が満ち満ちているのだろうよ…故に犠牲を払ってでも、他教の者を連れてくるのは必然というわけだなぁ?」


「じ、自分たちの命を棄てても…だと?何故だ…。何故そこまで…!!」


 歪んだ欲望に彩られた我執(エゴイスト)。そしてその我執によりどれだけ多くの人が犠牲になるかを想い、ノイシュの全身は怒気に満ちていた。


「何を憤る護聖?貴様らも似たようなものだろう?護聖という一人の英雄のため、その他の人間は全て餌、玩具だ。違うか?」


 その言葉に飛びかかったのは、ノイシュではなくスカアハだった。


一緒にす(なめ)…るなよっ!!外道がぁっ!!!」


 だが、()()。いつものスカアハの速度の半分以下だ。目を見開いたノイシュだったが、自身も動こうとすると身体が重く、非常に強烈な眩暈(めまい)が起こるのを感じた。


(な…に…っ!?)


 スカアハの突きを回避し、避けざまに彼女の腹部に強烈な膝蹴りを見舞う。


「がはぁっ!!」


 突進の勢いもあいまり、空中で円の軌道を描きながらスカアハはそのまま前方に激しく転がった。


「スカアハ姉っ!!!」


 ノイシュも飛びかかろうとするが、身体が思うように動かない。何らかの呪力がこの空間に満ちていた。


「我が名はアッハーズ。「病呪(わくらじゅ)旧神(ふるがみ)」アッハーズ也。」


 ノイシュとスカアハがこの部屋に突入する前から唱えられていた呪文は、敵対者の身体の自由を奪い、神経を攪乱するためのものであった。


 先述の通り、この世に満ちた霊子(マナ)で大規模な魔法を使おうとした場合、()()()()()()()()が必要となるが、アッハーズが敵襲を知った時点でそれらの準備を行う時間は十二分にあったと言える。


 また、ノイシュやスカアハが使う魔法はあくまで()()()()()()()()()()魔法であり、アッハーズが用いた()()()()()()()()()()()魔法の存在を知る由もなかった。


「がふっ…!マイナーな邪神を…引っ張りだすんじゃ…ないよ…くっ!」


 追撃を避けるため、スカアハは重い体を何とか立たせるも、腹部に受けた一撃よりもむしろめまい・身体能力の低下の影響のが甚大であった。平衡感覚が著しく乱れているのを感じる。


 霊子(マナ)は場所・地域により濃淡はあるが大気中に満ちており、体系化された手順を踏むことで霊子(マナ)に様々な性質を持たせることが出来るが、無から有を生み出せるものでは無い。その殆どは霊子(マナ)自身、あるいは空気中にある霊子(マナ)以外の物質の働きの強化や指向性の付与、触媒化などである。


 今回アッハーズが用いた呪法は、空気中に漂うウイルスの働き。働きを強めたウイルスを鼻腔から侵入させ前庭神経に一時的に強烈な炎症を起こさせることで、相手の平衡感覚を著しく狂わせ、また非常に強い眩暈・悪心(おしん)を生じさせる。膨大な数の人間を切り開き、人体を知り尽くした病呪(わくらじゅ)旧神(ふるがみ)たる所以である。  


 アッハーズは鉄の寝台に備え付けられた錫杖のようなものを手に取り、戦闘態勢を取る。通常の錫杖と異なり、先端は刺股のように大きく開き、また無数の棘状の突起が目立つ。武器というよりは拷問・捕縛用の得物であろう。ノイシュを生かしたまま捕えたいのは事実のようだ。


「貴様の霊力も我が物としてやろう、護聖っ!!そして旧神(アッハーズ)の「体」を得るのだ!」


 正常な状態であれば簡単に避け得た攻撃だろうが、現状では剣で受け止めるだけで精一杯だった。胴体を挟める作りとなっているその錫杖は、盾では防ぎきれない。その独特な形状故に、受け止めても壁際に押し込まれてしまえば身動きが取れなくなるであろう。侵された前庭神経により、強い眩暈と猛烈な悪心もまた同時にノイシュを襲う。剣を握る手に力を込めるだけで精一杯だった。片手では堪えきれないと判断したノイシュは左手の円形盾(ラウンドシールド)を投げ捨て、剣を両手で握り足に体重を懸ける。


「はーっはっはっ!!」


 嘲笑うかのようにアッハーズは錫杖を少し引いた。通常であれば、その瞬間を見極めて相手の側背を突けたであろう。だが、アッハーズの錫杖に押し切られない為に全身で突っ張っていたことが仇となった。


「なにっ!?」


 自然、前に荷重していたノイシュの体勢は前方につんのめる。その瞬間、アッハーズの膝蹴りがノイシュの顔面を捉えた。


「ぐはあっ!!」


 現状のノイシュには最悪の一撃だった。前庭神経が侵されている現在、顔面、特に内耳を揺らす衝撃は加速度的に症状を増悪させてしまう。ましてや強烈な膝蹴りで生じた鼻血は呼吸を乱れさせ、ますます脳は正常な状態とかけ離れてしまうだろう。


「シャアアアアッ!!!」


 再びアッハーズが錫杖を突く。だがその一撃だけはもらうわけにはいかない。


―ギィィィィン!!!!


 なんとか剣で受け止めるが視界は定まらず、地に足が着かない感覚は悪化する一方であった。しかも先程の様にアッハーズの力の匙加減を読み間違う訳にもいかない。再び同様の攻撃を食らえば二度と立ち上がれないだろう。


―油断した…!!


 定まらない思考の中で、その思いがノイシュの脳内をこだまする。ディアドラの話を聞き、バアルへの警戒心は十分に抱いていたノイシュであったが、その他の旧神原理主義者(ノーデニスト)達には正直然したる注意をしていなかった。奇岩地帯(パヌルル)で戦ったダゴンの実力から類推して、旧神(ふるがみ)の「()」を得た程度のレベルならば、問題なく勝てるだろうと判断していたのである。また道中のならず者(バルバロイ)達にも大した実力者はおらず、天地郷で培った剣術が圧倒的だったことによる慢心もあった。現状の危機は、命を懸けた実戦経験にはまだまだ乏しい、ノイシュの過信が招いた失態であった。


(こんなんで世界を救おうなんて…どの口が…言えてんだっ!!!)


「あああああああああっ!!!!!」


ガギィィィ!!!


「なにぃ!?」


 だがそれはまだまだノイシュに成長の余地が有ることと同義でもある。護聖としての強い使命感がノイシュを奮い立たせ、アッハーズの腕を錫杖ごと上方へ弾き返す。


「はあっ!!!!」


 後方に弾かれたアッハーズを目掛け、剣を横薙ぐ。だが、その剣速は見る影もなく遅い。


「温き也、護聖!!」


 上に弾かれた腕の反動をそのまま利用し、錫杖の柄で剣戟を受け止める。その態勢のまま、アッハーズは横蹴りをノイシュの胴体目掛けて放った。打倒を目的とするものというよりは、ノイシュの身体を後方に飛ばし、壁に押し込みやすくするためのものだろう。


「くっ!!」


 だが、その程度の蹴りでも今のノイシュには十分な威力だ。左手の前腕部に装着されている籠手でダメージは防ぐが、軽い衝撃でも内耳は揺れる。


「ぐうぅ!!」


 肉体の痛みや毒物に対する刺激などに対する訓練は積んだ。だが、これはそれらとは異なる、別種の苦痛だ。死に至るものではないが、戦闘の続行は極めて困難である。


「苦しそうだな護聖!楽にしてやろう!!」


 再びアッハーズは錫杖をノイシュに向かって突き延ばす。ノイシュは屈むことでそれを回避した。正確に言えば立っていられないのだろう。だが―


(好機…!!)


 ノイシュの眼がギラリと輝く。偶然とはいえ、相手の攻撃を回避したこの瞬間は絶好の反撃のチャンスとなる。屈んだ状態でノイシュは力を振り絞り剣を前方に勢いよく突き出した。


「ぐああああああ!!!」


 ノイシュの剣は錫杖を突くために踏み出されたアッハーズの右足を貫く。アッハーズが戦士であれば脛当てが装着されていたのだろうが、儀式用の装いだったことが功を奏した。だが、致命傷ではない。まだまだ形勢が逆転したとは言えないだろう。


「貴様ぁぁ…!!」


 憤怒の形相に変わったアッハーズはノイシュと距離を取り、独特の手印を組みながら呪詛を唱え始めた。


(まずい…!追撃の魔法か…!)


 刹那の速度で繰り広げられる近接戦闘では使いにくいが、現状の様に相手が疲弊し満足に動けない状態ならば魔法は十分に有効な追撃となり得る。ノイシュも追って詠唱を開始を開始するが、呪文への集中も正常とは言い難い。


 その瞬間―


「…ᛗ ᚨ ᚾ ᛁ(命の働き)ᛗ ᚨ ᚾ ᛁ(命の働き)ᛚ ᛟ ᚱ(光を以って)ᚨ ᚾ ᚾ ᛟ ᛉ(解毒せよ)!!!」


 スカアハが魔法の詠唱を完了させた。最初の突撃が躱され反撃を食らったことで、現状の自分たちの戦闘能力がどれほど低下しているのかをスカアハは悟った。このままの状態で戦闘を継続したら、仮に二対一でも敗れる危険性の方が遥かに高いだろう。事実、アッハーズにもその自信はあったに違いない。だがアッハーズは護聖であるノイシュへの執心が強く、ダメージを与えたディアドラは無力化したものとして放置された。それがまたとない好機となったのである。


 スカアハが行使できる魔法で現状を挽回出来得る物。相手を一撃で昏倒し得るような強力な攻撃魔法は到底不可能だ。ならば比較的詠唱・準備が短くて済む、人間の治癒力を高める回復魔法に賭けるしかなかった。アッハーズの魔法のタネはわからないが、魔法により引き起こされたものなら魔法により回復できるはずと期待し、スカアハはノイシュ達が戦っている間ひたすら魔法の詠唱に集中した。


(ここまで粘れたのは流石だよ、ノイシュ…!)

 

 スカアハの魔法が放たれた瞬間、ノイシュを襲っていた眩暈と吐き気はかなり軽減された。全快とまではいかないが、()()間合いを詰めることは充分出来る。


「なにっ!?」


 ノイシュ達にとって、アッハーズの魔法は未知のものであったが、それは彼にとってもノイシュ達の魔法が未知であることを示す。


 瞬間、ノイシュの剣が病呪(わくらじゅ)旧神(ふるがみ)の身体を貫いた―





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