#25
ブラッティクロムファミリー本社ビル 首領執務室――
背もたれつきのソファーにクロウとバイデンの間にちょこんと座らされているリルは怯えた表情を浮かべていた。
薄明かりではあったが、徐々に見慣れてきた彼ら以外の視線が痛い。
「首領。早速ですが……」
バイデンから話を切り出した。
「何故、オルガント家のお嬢様と一緒にいらしたのですか?」
「それは彼女がオークションに出展されていたからだ」
「「オークションに!?」」
他の幹部やクロウの秘書官、数人の構成員が声を揃えて反応する。
彼は「そうだ」と答えるように頷いた。
「彼女の実の姉が出展していた。最初に見かけた時は仲よさそうに歩いていたから気になってしまい、後を追っていたらつい……」
「首領、それは立派なストーカーですよ?」
「それは分かっている。しかし、その後が見過ごせなかった」
「「…………」」
「それが例のオークション……」
「ご名答。彼女は身寄りがなく――」
重々しい雰囲気のある首領執務室にリスカが任務から戻ってきた模様。
彼女がひょっこりと顔を出した。
「……なんか、重々しい空気だけど、どうかしたの?」
「リスカさん!?」
「任務、ご苦労だった」
「ええ。こちらこそ」
「リスカもちょっと掛けて話を聞いてほしい」
「あ、はい。承知いたしました」
リスカを交え、再度クロウがリルを連れてきた理由を話す。
二度目である今回はリルには身寄りがなく、クロウは命の恩人なので、ついていきたいということも告げた。
はじめは彼の隣に座っていたリル。
バイデンらが見ていない隙に彼女のところに向かっていた。
「それは大変だったわね……でも安心なさい」
「リスカさん、状況が分かっているのですか!?」
「アラン、分かってるわよ。あたしは「ここは託児所じゃない!」って言ってた何処かの誰かさんじゃないから」
「なんだよ。俺のことじゃねぇかよ……」
「そうですね。訊く相手を間違いました。すみません」
「この子は窮地に立たされていたのよ? 実の親じゃなくてお姉様から棄てられたのだから。あたしも放っておけないな」
リルの頭を撫でるリスカ。
はじめはぎこちない撫で方だったが、次第に滑らかになっていく。
「リスカは賛成のようだな。懐いているようだから」
「ええ」
「首領やリスカさんが言うのならば、折れるしかないですね……」
「アラン? もしかしてお前もか?」
「首領、この少女はどうします?」
「……アラン、無視かよ!?」
「そういう時は同性と過ごした方がいいのでは? リスカ、同室になるが、いいか?」
「いいですよ。あなた、名前はなんて言うの?」
「……お姉さん……わたしはリル・オルガントです」
「リルちゃんか。あたしはリスカ。しばらくの間、あたしの部屋で過ごしな。ねっ」
「はい。ありがとうございます!」
「こっちの眼鏡くんはアランね」
「リルお嬢様、よろしくお願いいたします」
「はい、アランさん」
「なんだよ……預かる気満々じゃねぇかよ……アランに関しては首領ほどではないが、デレデレしてるし……」
「バイデンさん? 今、なんと?」
「いや、別に」
首領であるクロウはもちろん、周囲の幹部からは懐いているリル。
その一方で置いてけぼりになっているバイデンは彼女との距離は縮めることができるのだろうか――
2026/01/11 本投稿




