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#22

 実の姉か妹なのに「出来損ないで不必要」。

 クロウはその言葉に対して納得がいかない。


「実の姉だか妹だかは分からないが、今回のオークションに出展した目的はなんだ?」

「あなたがその目的を知ったとしても関係ないわ。見ず知らずの人間がわたくしの気持ちなんか分からないくせに!」

「要は嫉妬心からきているのだろう? 姉だか妹だかに対して。ははっ、歪んだ姉妹だな」

「あなたに言われたくないわ!」


 彼は煙草に火をつけ、嘲笑する。

 一方のルイーゼはある程度の年齢差や身長差がある関係上、見下すような視線に耐えられなくなっていた。

 はじめて会った時は紳士的だったが、今では氷のように冷たい視線で威圧感のある男性が煙草をふかしながら嗤っている。


「ではでは、最後の商品となりました! 今回の最年少出展者、ルイーゼ・オルガントさんからです! 可愛らしい女の子です!」


 ようやくルイーゼの番がきた。

 出展した実の妹であるリルが司会者の誘導で姿を現す。


「目隠しを外してください!」


 司会者の声かけでリルは目隠しを外すとたちまき歓声が沸き起こり、値段をつけ始めていった。

 どんどん高額になっていく彼女。


「いいわ! 出来損ないで不必要な餓鬼はもっと高額になりなさい!」

「……見ていられない……!」

「……あら?」


 対の感情で見守る二人だが、ルイーゼが気がついた頃にはクロウは何処かへ向かって歩いていた。


 小さい子供を誘拐することには慣れている。

 しかし、今回の場合はオークションのため、金銭を払わなければならない。

 彼女らのような歪んだ姉妹の関係を断たせるには第三者が必要。

 ならば、自分が第三者になればいいと彼は思っていた。


「その少女は私が買わせていただこう!」

「えっ!?」


 ルイーゼやリル、司会者はもちろん、周囲も目を疑い、徐々に静かになっていく。

 ステージには階段はないため、クロウは飛び乗るしかなかった。


「ど、どのくらいの金額で購入いたしますか?」

「このくらいで買わせていただく」


 彼は小切手に金額を書き込み、金銭を添え、司会者に手渡した。


「こ、これでいいんですか? 今回の最高額ですよ?」

「いい。この少女の命ならば安い物だ」

「というわけで、歴代最高額で可愛らしい女の子が落札されました! 今回のオークションはこれにて終了! また次回もたくさんの出展、落札をお待ちしております! 今回もありがとうございました!」


 司会者が終了の挨拶をし、今回の闇オークションは終了した。

 参加者は「最後の子、欲しかったなぁ……」「あの子、いくらで落札されたんだろう」と言いながらぞろぞろと帰路に着く――。



 ◇◆◇



 司会者も他の参加者がいなくなったオークションには出展者であるルイーゼ・オルガント、落札者であるクロウはステージに腰かけ脚をぶらつかせている。

 彼の胸にはお姫様抱っこされているリル・オルガントの姿があった。


「これでお父様もお母様もみんな、わたくしのものですわ!」

「下衆な姉か妹だな」

「ぐはっ!」


 ルイーゼの頭にクロウの靴の先で蹴り上げる。


「痛いですわ! なんてことをしてくれますの!?」

「気のせいだ。私は何もしていない。さて、どちらがどっちだ?」

「わたしは妹です」

「下衆な姉と違って妹は可愛いな。それでは私達は行くとしよう」

「はい」


 リルはお姫様抱っこされたまま彼らはステージから飛び降りた。

 彼のロングコートがふわっと翻り、走り去っていく。


「さようなら。ルイーゼお姉様」

「ごきげんよう」


 周囲から愛された妹と彼女に対して嫉妬心に駆られた姉。

 愛情によって歪んだ姉妹は決別することになった。


 他の兄妹と同じ形の愛情(・・・・・・)を受けるのではなく、異なる形の愛情(・・・・・・・)を受けることになったリル。

 彼女は新たな地で生きていく覚悟を決め、父親代わりになるであろうクロウの胸の中で眠りについた。

2025/11/13 本投稿

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