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いきなりサキュバス(仮題)  作者: べあ太郎
3/3

あるぅ日っ、森のっなっかっ

そういえばRO好きだったなぁ。

 まるでずっと夜のような薄暗い森の中を、目の前をゆっくりと欠伸しながら歩く子犬におっかなびっくりしながら付いて歩きもうどのくらい経ったのだろうか。

初めて歩く道は時間が長く感じるというがそれにしてももう1時間は歩いているんじゃなかろうか?現代に生きていた身としてはそろそろ精神が限界へとたどり着こうとしていた。


 「ね、ねぇまだ付かないのかしら?私そろそろ色々と限界なのだけれど!」

我ながらとても情けない。しかしこちらも必死なのだ。

身体は何故か全然平気なのだけれど目標地点の解らないマラソンほど恐ろしい物はない。


 「グゲゲ」「きゅ~んきゅ~ん」

情けないとばかりに二匹がこちらをじとっとした目で振り向く。

この1時間ばかりで私の株は急降下の一途を辿っている。それでも見捨てないでいてくれる所にはとても感謝しなければなるまい。


 「ゲギャ、グギャギャーオゥウ、グゲゲ」

意訳すると「最近の若い者はだらしない、自分の頃はな?」という所だろうか、なんか怒られているという事はすごくよく解る。思わずその場に正座をしてしまう。


 オルちゃんはどうも説教が長いタイプのようだ、色々我慢していたこともあるんだろうがゲギャゲギャと解らない言葉での責め苦がそろそろ5分は経とうとしているのに終わりの雰囲気はまだまだ見えそうにない。

「きゅん!」

と、ドラちゃんが鋭く叫び少し遠くの茂みに目を向ける。

ガサガサなどという生易しいものではなくバッサバッサと茂みが大きく揺れる。というか切られている。

私達の前を遮る最後の茂みが何か鋭利な物で切り裂かれたその先には……


 2メーターを優に超える筋肉質な体躯。逞しい蹄。赤く光る双眼。そして流れるような逞しい角。

二足歩行のヤギに鎌を持たせたというしかない、神話に詠われるバフォメットがまさしくそこに出現したのであった。


 (だめだ、さすがにこれは終わったわ。変わってしまった私のこの体と、どうみても悪魔系の代表格。エッチなゲームのバッドエンドしか浮かんでこないわ。)

もう相手が玉座に着いて自分が逞しい体に抱き着いているところしか想像出来なくなってしまった。

思わず正座のまま自身の豊かな胸を隠してしまう。人はあまりの恐怖に対面すると自分の身をなんとしても守ろうとしてしまうらしい。


「グギャオォォオオウ」「きゅううぅうううん」

私が恐怖のままに身を竦ませているとオルちゃんとドラちゃんはバフォメットへ向かいその小さな身を俊敏に向かわせた。

「ま、まって、ややややめ」

声が上ずる。喉がカラカラに乾いて何度も言葉に詰まってしまう。

どうあがいても相手は格上。その小さな体ではデコピン一発ずつで私のように転生待った無しだろう。


 そんな私の声など届くはずもなくあっという間に二匹は肉薄し、バフォメットの懐へと飛び込んだのであった!

私の予想通りとはならなかったが片手でガシっと鷲掴みにされてしまう。こうなってはもうハンバーグかトマトジュースか……

凄惨な絵を前にして私は思わず目を背けてしまう。

カラカランっと鎌が落ちる音が嫌に遅く耳へと残った。




 「ぁんれ~、マリエールさんとこのチビでねぇか。ほったらとこで一匹でなーにしとるべ?」

と、和やか~な声に驚き恐る恐るそちらに目を向ければ大きな手で二匹いっぺんにナデナデされている姿が見えたのであった。

「ギャウフ!ギャウフ!」「きゅふ!きゅふ!」

尻尾をぶんぶん振り回しとても嬉しそうな二匹を見て少し嫉妬してしまう。くそう撫でられれば誰でもいいのかあいつらは。

「ぃえ~からは大分あっけどもなぁ、んま一人で散歩さしてぇ時だってあるよなぁ、そりゃなぁ。おらだってあるもんなぁ。」

うんうん、と一人で頷いているバフォメット…さんはまるで田舎の祖父を思い出させるのんびりとした口調で二匹と会話している。


 しばらく犬とヤギが話せてるのかどうか解らない会話を続けていると、

思い出したようにパッとバフォメットさんから二匹は離れると私の方へとと駆け出してきた。


「ぉお~もう行くのけぇ、迷わんように気ぃつけぇな~…ん?」

二匹を追う視線がその先にある私に漸く気が付いたようだ。会話だけ聞くと気のいいおっちゃんであるがどう見ても相手は大悪魔。その無駄に光っている赤い目と視線が合ってしまうと否が応にも自分を抱きしめる手が強くなってしまう。

そうして固まっている間にもバフォメットさんが折れた小枝をメシリ…メシリ…と臨場感のある音をさせながらゆっくりとこちらへと近づいてくるではないか。


 もう距離が無くなっている。あと5歩も進めば私まで手が届いてしまうだろう。

お父さんお母さん、現世から見てくれてますか?私はどうやらもう一度ここで人生を終わらせるようです。


 とうとう目の前にバフォメットさんが辿り着いてしまった。近くで見ると恐ろしさが更に加速する。赤く光る眼、口から出る白い蒸気も加わりまるでCGを目の前で見ているかのようだ。

この世界にいるかどうかは解らないが、おぉ、神よと祈りたくなってしまう。


 そしてガバっと私の前に座り込み目線の高さを合わせ口を開いた。

「んなぁ~めんこい娘っ子だで、ほったらとこで何してるべ。こったら田舎でサキュバスなんて500年はみたことねぇべ。」


 お父さんお母さん、現世から見てくれてますか?私どうやら


 淫乱悪魔になったみたいです。

方言は適当です。ごめんなさいね。

次回からちゃんと主人公が喋りだす……よね?

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