第1話:目覚めたら無一文・無保険・完全バニラ
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本作は、魔法も超能力も機械化ボディも一切持たない「生身の元コンサルオッサン」が、前世で培った保険知識とコーチング技術、そして頭の中の論理フレームワークだけで1万の星系を大改革していく、ちょっと風変わりなスペースオペラコメディです。
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それでは、第1話をお楽しみください!
「……なるほど。これが噂に聞く『死後の世界』というやつか」
暗闇の中で目を覚ました俺——四条 航は、自身の身体を包む液体と透明なカプセルの感触を確かめながら、極めて冷静に現状を整理していた。
前世の記憶は鮮明だ。
俺は60年の人生を全うし、病室のベッドで愛する妻に看取られながら穏やかに息を引き取ったはずだった。遺族のための死亡保険金も、過不足なくきっちりと遺してきた。男としての責務はすべて果たした完璧な幕引きだったのだ。
……だったのだが。
*シューーーッ……!*
不快な駆動音とともにカプセルが開き、温かい液体がドバッと流れ出す。
俺はゴホゴホと咳き込みながら床へ這い出た。
「おいおい、冗談だろ……」
自分の手を見る。前世の最期にあったシワやシミは消え失せ、張りにある若い肌に戻っていた。見た目年齢は二十代半ばといったところか。
だが、問題はそこではない。
全裸だ。
一文無しだ。
そして何より——
「ギャハハハ! 見ろよ、第三プラントの育成ポッドから『バニラ』が生まれやがったぞ!」
「マジかよ! サイバネティクス拡張も魔導回路の刻印もない、ただの肉塊じゃねえか! 出荷価値ゼロだぜ!」
ゲラゲラと下品な嘲笑を響かせるのは、身長三メートルを超える全身機械化された巨漢の男と、背中に黒い翼を生やし怪しい魔力を漂わせる角生えの男だった。
俺は即座に思考(コンサルタント・脳内フレームワーク)を全回転させた。
(状況確認:俺の身体には魔法の素質も、超能力も、機械化された強化パーツも一切存在しない。異世界転生モノでいう『チートギフト』は完全ゼロ。この世界における最低ランクの生身——いわゆる【バニラ】だ)
強大な魔力や圧倒的な科学力を誇る種族が闊歩する世界。
そこに全裸で放り出された、ただの生身の人間。
普通なら絶望して悲鳴を上げるところだろう。
だが、俺は前世で数多の破綻寸前企業を再生させてきた元コンサルタントだ。
「手持ちのリソースがゼロ」など、日常茶飯事である。
「おい、バニラ! 聞いてんのか! 命が惜しかったら俺たちの奴隷契約書にサインしな——」
巨漢の機械男が、丸太のような義手を振り上げて威嚇してくる。
俺は微動だにしていないどころか、大人の余裕を漂わせた穏やかな笑みを浮かべ、プロのコンサルタント特有の「傾聴の姿勢」をとった。
「失礼。威勢の良いところ恐縮だが、一つ質問をさせていただいても?」
「あぁん!?」
「君たち二人……お互いの事業領域における『事前連絡ルール(プロトコル)』**と**『損害賠償保険』の加入状況はどうなっている?」
「……ハ?」
角生えの男と機械男が、ポカンと口を開けた。
「見れば、そちらの機械化殿は過剰な重量出力による関節部の摩擦負荷が限界を超えている。一方、そちらの魔導殿は背後の魔力炉から不快な高周波ノイズが漏れ出し、隣の機械のセンサーを微弱に誤作動させている」
俺は二人の状態を瞬時に観察し、論理の刃を突き立てた。
「つまり君たちは、互いに無保険かつコンプライアンス(法令順守)違反の状態で同一空間に滞在し、いつ暴走事故が起きてもおかしくない超高リスクな状態で私を脅迫しているわけだ。万が一、私を傷つけて連邦警察に抑留された場合、その損害賠償金を払えるだけの事業計画はお持ちかな?」
「なっ……な、なんだコイツは!?」
「言ってる意味はサッパリ分からんが……なんか凄まじくヤバいヤツな気がしてきたぞ……!?」
知恵とロジック。それこそが、何もない生身の人間が持つ最強の武器だ。
どれほど強大な力を持つ種族だろうと、「理(理屈)」と「リスク」から逃れることはできない。
俺は床に落ちていた予備の布切れをスマートに腰に巻き付けると、呆然と立ち尽くす二人の肩をポンと優しく叩いた。
「さあ、お二人さん。不毛な脅迫(無駄なコスト)はやめて、まずは君たちの抱える事業課題(悩み)を私に話してごらんなさい。……なに、相談料は出世払いで結構ですよ」
こうして、チート能力ゼロ、全裸スタートの「完全バニラ」な元コンサルタント・四条航の、銀河を揺るがす生存戦略が幕を開けたのだった。
第1話をお読みいただきありがとうございました!
全裸で放り出された主人公ですが、前世のロジックと圧倒的な大人の余裕でさっそく怪しい宇宙人たちを圧倒(?)してしまいました。
魔法も超能力もないただの人間が、知恵と対話だけでどこまで登りつめていくのか。
次回は「魔王ギルド」と「天使評議会」の泥沼の縄張り争いに、主人公が単身で突撃します!
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