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僕が目を覚ましてから三年の月日が流れた。
変わった事と言えば、コルト君とネイマちゃん、ルイス君とリリアちゃんが結婚した事かな。あ、もう君とかちゃんじゃなくてさんって言わなきゃね。
彼等は僕が目を覚ましてエリスと結婚するまで結婚するのを待っていたんだそうだ。別に待って無くても良いと思うんだけど、恩人より先に結婚出来ないと言われてしまった。本当に色んな意味で皆僕が目を覚ますのを待っていてくれたんだと思うと自然と頭が下がるな。
そうそう、先日僕達の村に名前を付けた。良く覚えてないけど太陽の都市とか言われていた『アスガルタ』とした。最初はアガルタにしようかと思ったけど地下都市じゃないし、この世界アガルティアに似すぎていたので止めた。
そして最近の僕はと言うと苺の様な果物の品種改良を試している。この果汁から砂糖の様な物が作れないかと試行錯誤しているが、そうそう上手い事行く訳も無く頭を悩ませている。
皆からは勿体無いとか言われていて、これに関してはエリスだけが僕の味方だったりする。
そんな或る日の事。
結界(村を覆っている光の膜の事)近くを巡回していたエンゾさんが川岸を歩いて来る集団を発見したと報告があった。
「へぇ、初の来訪者ですね。まぁ何しに来たのかは想像出来ますけど、僕が対応しますから皆さんはけして結界から出ない様にして下さい。エリス、悪いけど今日は帰れないかもしれないから先に寝てて」
笑顔で見送ってくれたエリスを残し、僕はグランさんとエンゾさん、それと周辺の警備をしている人達を連れて出迎える事にした。と言っても結界内に入れるか如何かはあちらさん次第だけど。
川岸を歩いて行くと、先の方で騒ぎながら結界に石をぶつけたり手に持った武器らしき物で攻撃している人達が見えてきた。
やっぱり穏便にとは行かない様だ。と近づいて行き声を掛けた。
「こんにちわ・・・いや、もう直ぐ夕方だからこんばんわかな。始めまして、この先に有る『アスガルタ』と言う村の代表をしているノワールと言います。皆さんは何処から、何をしに来たのかお話頂けますか?」
「ハンッ!貴様の様なガキが代表だと?!俺達はあの山、アラト山周辺を治めるカイラス様の命で南部を捜索している。同時に発見した人里を傘下に収める様にともだ」
「はぁ・・・・・・傘下ですか・・・まぁ、お断りします。僕達は特に困った事も有りませんし、護って頂く必要も有りませんから」
「ほぅ・・・断るか・・・・・ならば川を堰き止める手筈になっているが、それでも断ると言うのか?」
なるほどね、山の水源を握っているからそれを利用して脅して回っていると。こう言う奴等なら遠慮は要らないかな。
「交渉決裂・・・と言うか始から交渉にもなってませんでしたね。残念です」
ピイイイィィー!!
僕の鳴らした指笛が周囲に響き渡ると森の中から次々とコッケーが飛び出し男達を取り囲む。三十匹に及ぶコッケーに囲まれた男達はその恐怖でパニックに陥り、武器を振り回して同士討ちやコッケー達の攻撃により数十秒で沈黙した。あ、殺してないからね。
「皆ご苦労様。後は僕達でやるから戻っていいよ。さて、取り合えず武器を取り上げて拘束してそこらの木に縛り付けておきましょうか」
「え、えげつねぇな・・・・・俺達来なくても良かったんじゃ・・・・・」
「いえいえ、皆さんには彼等を拘束して貰うと言う役目が有りますから。僕一人じゃ時間が掛かってしまいますからね。もう直ぐ日も暮れますし、縛り終わったら皆さんは村へ戻って下さい」
持っていた武器を結界内に放り込んで拘束した彼等の怪我の治療をしてやり、皆を帰して一人で焚き火の前に座って彼等の荷物を漁りながら目を覚ますのを待つ事にした。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




