プロローグ『昔話』
一つ、昔話をしよう。
昔々のそのまた昔、世界は飢饉に見舞われていた。
どれくらいかというと、一年に茶碗一杯分の米や麦しか取れないような地域が、数えられないくらいにあったっくらいだ。
そんな現状に困った『ガーリー国』の王が、とある探検家を雇った。
しかも数々の功績を残してきたとても優秀なのをだ。
王は探検家たちに言った。
「どんな所でもいい。作物が大量にとれる土地を見つけ出すのだ!」
探検家たちはその依頼を受け、わずかな食料と地図のみを手にし、旅立っていった。
しかし、その探検家たちは本当に優秀で、生きて帰ってくるどころか本当に方策の土地を見つけてきてしまったのだ。しかもたったの三か月で。
探検家たちの話によると、その土地は半径五百キロメートルほどの円形で、豊作なことはもちろん、鉱石やその他資源も大量にあって、まるで世界のエネルギーを一点に集中させたような土地だったという。
そして不思議なことに、その土地ではとても身動きが軽くなり、基礎的運動能力が底上げされたらしい。
何より異常だったのが、その土地の中心にはとても大きな花が咲いており、その花に近づくにつれ空気が重く、というより何かこの世のものではない異質なものが混ざったような感覚が強くなっていったのだという。
気になる点も多々あったが、ちょうど国がすっぽり入る程度の大きさの上、豊作の土地だということで、ガーリー国の王はそこに国を移すといった。
しかし、一番の問題がまだ残っていた。
それは、その土地がもうすでに違う国のものだったということだった。
国の名は『マハト国』。昔からこの土地に住んでいるため、当然土地の所有権はマハト国側が持っていた。
そしてこれもまた当然のように戦争が起きた。
結果は途中までマハト国の超有利。
身体能力が異様に高い兵士たちや物資の関係で、ガーリー国は絶体絶命のピンチに追い込まれた。
彼らが来たのは、その時だった。
ガーリー国の王の前に、九人の兵士が現れた。
しかし、その兵士たちはガーリー国の者でも、マハト国の者でもない。
彼らは自分たちのことを賢者だと名乗った。
それ以上のことは言わなかった。
彼らは王に対して、この戦争に協力する代わりに戦争に勝ったら自分たちにこの国の戸籍をくれと言ってきた。
王は何者かもわからない奴らを信用するかと突っぱねたが、賢者たち一人一人が一兵団よりも強いとわかるや否や、手のひらを返して協力を求めた。
賢者たちの戦い方は、少し特別だった。
手から衝撃波を放ったり、巨大化したりなど、明らかにこの世のものではないような力を賢者一人一人が一つずつ持っていた。
そんな異能の力を持つ者たちが実行した戦略が、マハト国の本拠地に九人で奇襲をかけるというものだった。
結果は大成功。数の力はあれど人間を逸脱した怪物たちに急に襲われたらひとたまりもなかった。
賢者たちはそのまま、戦争の指揮権を持つ上層部の人間を皆殺しにし、マハト国に大ダメージを負わせることに成功した。
あとは詰めだ。上層部を失って慌てふためいているマハト国の兵士たちを次々に倒していき、最終的に相手のすべての陣地を奪い取ることに成功した。
その時点でマハト国の人口は、およそ半分にまで減っていたという。
なんにせよ戦争に勝ったガーリー国は、勝利の立役者、賢者たちを称賛しつくした。
そして、国民たちや王の意見で、今までの軍隊制を廃止して、賢者を頭に据える新治安維持組織、『賢者隊』を結成した。
ガーリー国はそれに乗じて、国の名をアメリスト国えと改名した。名前の由来は賢者を統括するリーダー的ポジションの者の名がアメリストだったからだ。
それだけではない。アメリスト国に長く住んでいればいるほど、基礎的身体能力や反射神経、動体視力などが上がっていったのだ。住んでいるだけで。
そうして、わずか数年で軍事力、経済力ともに最強となったアメリスト国は、未来永久、発展し続けるのであった。
めでたしめでたし。
と、ここまでが昔話だ。
どこにでもあるような、国を称える御伽噺。
さて、これから語るのは、この昔話から千年がたった後の物語だ。
御伽噺とはまた違う、どこまでも幻想的で現実的な物語。
そして、この物語を読んで考えて欲しい。
愛とは、何なのだろうか――




