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アルケニアイル  作者: 犬助
二章 入学試験編
20/26

20話 嵐の前の静けさ

「雨、か。」

 レンは呟いた。

「嵐が近いようね。」

「知ってるのか。」

「ええ。聞いてたもの。」

「俺らの話を?」

「そう。あなたが世界樹に近づいた時にたまたま見つけてね。」

 ずっと近くで聞いてたってわけか……。

「でも、もう手遅れかも。」

 美雪は言った。

「あぁ。この嵐、上空から落ちてきてる。」

 雨風が強まる中、レンは晴天を見上げる。

「タクトの言ってた"足掻き"の時間のようだな。」

「本気で言ってるの? 嵐を破壊するなんて。」

「美雪のおかげで不可能ではないよ。まずは雨風を凌げる場所に移動しよう。」

 こうして、二人は近くの洞穴に避難する。


「それで、どうするつもり?」

 美雪は濡れた髪や服を気にしながら尋ねる。

「冷やすんだ。嵐を。」

「はぁ?そんなことできるわけないじゃない。」

「そうとも限らないだろ。ここは魔法世界だ。地球での原理なんて当てにならない。」

「やっぱり、日本人なんだね。」

 美雪が言った。

「わかった。あなたにかける。本当にどうにもならない時はこの洞穴で一緒に心中かしら?」

「冗談で済むように頑張らなきゃな。」

「頑張るのは私でしょ? でも、問題は魔力量。絶対に足りない。」

「それなら、俺の魔力。少しの足しにしてくれ。足りるかはわからないけど。」

「魔法っていうのは魔力を練れば練るほど精度が良くなる。私は今から嵐が来るまで練り続ける。」

「あなたの魔力を私に渡してほしい。」

「あぁ、そのくらいしかできない。美雪のケアは任せてくれ。」

 美雪は小さく頷き、魔法を作り出した。


 あれから、どれほどの時間が経っただろう。

 雨風はどんどん強くなっていく。

 空は暗く、太陽も見当たらない。

 外に出るのは困難になっていた。

「焚き火もこれ以上は用意できないな。」

レンが呟いた。

「結局、二人は見つからなかったわね。」

 すると、美雪は言った。

「俺がタクトたちと出会った時点で、こうなるのは決まってたのかもな。」

「どういうこと?」

 美雪は尋ねる。

「この会場はきっと世界樹が中心だ。美雪と会った洞窟から世界樹まで3日もかかったんだ。広すぎる。」

「高速移動の能力でもなければ、一人じゃたどり着けない距離ってことだ。」

 美雪はそれを聞いて首を傾げる。

「随分と時間がないのね。まるで嵐の破壊が前提みたい。」

 レンは闘技場の違和感を思い出す。

「協力だ。――それがこの試験の答えだったんだと思う。」

「何もかも遅すぎた。……厳しい試験なのね。」

「すまないな。全て押しつけてしまって。」

 俺が、あいつを呼び出せれば……この試験、希望はある。でも、駄目だ。美雪がいる。きっと巻き込んでしまう。

 レンはもう1人の自分を思い出す。しかし、そんな考えはすぐに捨てた。

「いいわ。日本人に会えたってだけで嬉しい。なんだか安心するの。ずっと一人だったから。」

「どうだ。日本にいた時のこと、話さないか?」

 二人は思い出話に浸った。

 嵐の前の静けさが心地よかった。

 ずっとこの時間が続けばいいと思ってしまうほどに。

 しかしその時間はすぐに過ぎてしまうのだった。

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