68 フルフトバールで魔獣狩りだぁ! そのはち
拠点に戻るとクルトたちは先に戻っていたようで、リュディガーとマルクスはなんだか疲れたような顔をしていた。
「どうしたんだ?」
疲労しているリュディガーにイジーが声をかけると、もごもごと口ごもりながらも、ポツリと呟いた。
「ス、スライムが……」
リュディガーの言葉に続くように、マルクスも話す。
「洞窟の奥にいて」
そしてリュディガーとマルクスは同時に深く息を吐き出した。
「もうびっしりと! すごかったですよー!!」
クルトだけが元気だった。
傍にいたゲルプは苦笑いをして、フェアヴァルターに報告をしている。
クルトたちも冒険っぽいことちゃんとできてたんだね。
リュディガーとマルクスは、ついてきたって感じの参加だったから、つまらない思いをしてるんじゃないかって心配だったけど、そうじゃなかったみたいで、一安心だ。
その後、ガーベルが用意したお肉……、これは現地調達したものではなく、持ってきたお肉だと思うんだけど、それを串で刺して網焼きで食べた。
身質的にたぶん牛。
めっちゃおいしかった。
その後は、明日の調査もあるから、早く寝るようにとフェアヴァルターに天幕に追い立てられて、就寝することになったわけだが。
今日のアレ、神秘的なグリューナーディアの姿に興奮して、なかなか寝付けない。
それは、僕だけじゃなく、テオやイジーも同じだったようだ。
それでも横になりながら、他愛ない話をぽつぽつとしていたんだけど、ふいにテオががばっと起き上がる。
「ちょっと、話しておきたいことあんだけど、良いか?」
いつになく真剣な口調のテオ。
イジーは何かを察したのか、同じように起き上がってテオを見ている。
「アルも起きろ」
「え~、このままじゃ駄目なのぉ? あとネーベルやリュディガーたちに聞かれてもいい話?」
「構わねーよ」
なるほど? 誰かに聞かれて困る話じゃないってこと?
「俺は卑怯者になりたくないから、ちゃんと言っておく」
なんだ?
「俺、ヘッダが好きだ」
吹き出してしまう。
「アル、大丈夫か?」
隣にいたネーベルと、反対側の隣にいたイジーが、咳き込む僕の背中をさすってくれる。
テオ、お前ぇ……。
たしかに、テオはヘッダとの初対面で顔を真っ赤にして見惚れていたし、前々からヘッダの外見は自分の好みのタイプだって言ってたよ。そこは全く隠してなかった。
その後だって、一緒に行動するときなんかは、常にヘッダのこと視線で追ってたし、あれはもう外見だけじゃなくって中身にも惹かれてるってまるわかりだった。
あと本人たちは気付かなかったけど、去年の学園祭デートしてたもんね。
しっかり覚えてるよ、僕は。
だけどさぁ、テオ。わかってんの?
ヘッダは内々の話で、イジーの婚約者だって決まってんだよ。
もう後はイジーが立太子すると同時に、婚約者の発表の算段もつけてんの。
それを全部おじゃんにさせる覚悟、ちゃんとできてるんだろうね?
「念のため聞くけどさぁ」
誰も何も言わない中、僕はのそのそ起き上がってテオを見る。
「その好きは、友情ではなく、恋情の方で良いんだよね?」
「おう」
僕の様子にリュディガーとマルクスはビビり散らかしてるけど、テオはいつも通り、悪びれもなく、そして堂々と答える。
「ヘッダには言ったの?」
「告白か? もうそりゃ、ずっと前に言った! 二年の終わりぐらいに」
即決即断過ぎるんだよなぁ~!
「返事は?」
「……今のアルみたいにさぁ、なんかいろいろ言われた」
そりゃ、ヘッダは公爵令嬢としての自分の価値がわかってるからね。
「いろいろやることがあるから、すぐに返事はできないってさ」
それ、もう半分答え出しちゃってんだよなぁ!!
「でもそれでも自分のことを好いてくれるなら、諦めないで欲しいってさ」
ほら見ろ!! 返事してるじゃねーか!!
あー、クソやられたー!!
ヘッダちゃんよー。
最初からイジーのお嫁さんになる気なかっただろう!!
でも立場的にイジーに釣り合うのはヘッダしかいないから、とりあえず自分がその位置について、イジーに変な虫が寄り付かないように、虫よけネットになって、ついでに虫を放とうとしてくる虫飼いを牽制したんだ。
全部何もかも、最初からヘッダの手のひらの上で転がってる。
あー、ヘッダの高笑いが聞こえてくるぞー!!
「俺、諦めねーし。この先も、ずっとヘッダのこと好きだ。気の迷いとか、そういうんじゃねーから」
きりっとカッコつけて言ってんだけどさー、テオもヘッダの手のひらの上だからな。
こわ~。ヘッダ、いつ頃からテオに目を付けてたのかなぁ。
ふとイジーのことが気になってそっちを見ると、イジーはまっすぐテオを凝視していた。
でもそれは思いがけないことを言われて呆けてるとか、思考が追い付けなくってナウ・ローディング状態とかではなく、なにか真剣に考えてる感じ。
そして僕の視線に気付いたのか、イジーはこっちに振りむき、何か言いたそうな様子を見せる。
相変わらず表情筋が仕事してないから、イジーと親しくない人は、無表情で怖いとか、なに考えてるかわからないから不気味って言うだろうけれど、ここにいるのはイジーをよく知ってるメンバーばかりだからね。
これは何か言いたいことがあるのかもしれないって、みんな思ってる。
「あの……、兄上」
「なに?」
「前に、俺に言ってくれたこと、覚えてますか?」
待って待って待って待って!! コレ、イジーまで何かいうやつだ!!
ちょっと待ってー!! お兄ちゃんの心の準備させてー!!
「俺に、好きな人できたら、教えてくれって」
あー!! ほらキター!! この前ぶりは絶対そーでしょう?!
イジーまで恋バナ始める気だぁ!
夏の長期休暇で一番やりたかったエピソード。
修学旅行で恋バナする男子会です。





