66 フルフトバールで魔獣狩りだぁ! そのろく
初日は二組に分かれて、魔獣狩りをしたわけなんだけど。
僕らはポイントについた早々、ビッグボアの集団に出くわして、集団戦をすることになってしまった。
ボア系は公務で訪れる王領でも出てくる魔獣で、何度か狩ってるからそれほど脅威ではない。でも、集団で出てくるとは思わなくって、もうめちゃくちゃ大変だった。
今回、不帰の樹海で使う僕のバルディッシュは『宵闇』の方で、『宵闇』は『夜明』に比べると癖つよ。
まるで意識を持ってるみたいに、僕の思い通りにいかないときがある。
戦神シュヴェルに祝福をかけてもらってからも、この癖つよは直らなくって、なんだか血気盛んな頑固おやじの相手をしてるみたい。
まだ百年たってないよ? 付喪神になってないはずだよ?
魔導具のインカムも、調子良かった。
特に突進してきたビッグボアの対処で、離れた場所にいる相手に指示を出したり受けたりするのが、すごく楽だった。
ノイズキャンセリングも上手くいったみたいで、風切り音も入ってこなかったし、声はちゃんと聞こえたから問題ないだろう。
あとは、中層、深層で、どうなるかって感じかな?
初日の獲物はビッグボアを四体倒して、拠点に戻ることにした。
一方マルクスたちの方はというと、苔蛙に遭遇したらしい。
苔蛙は毒性はないので、それほど脅威ではないんだけど、集団で固まってるからね。
集合体恐怖症の人が見たら悲鳴を上げてしまう。
あと繁殖率がすさまじいから、夏に入る前に数日間掛けて、若手の魔獣狩りたちに駆除させているそうだ。
今回マルクスたちが見たのは、その生き残りらしい。
苔蛙は小さいものは手のひらサイズで、だいたい仔犬ぐらいの大きさまで成長する。
背中の苔は湿布薬や、魔法薬に使われて、皮も武器や武具に使われるから、重宝しているのだ。
僕はフェアヴァルターに不帰の樹海にいる魔獣のことをいろいろ教わってるけれど、実物は見たことがないものも多い。
ガーベルが苔蛙の実物を僕に見せるために数匹狩りましょうと言って、狩ってきてくれたのだ。
「ふぁぁっ、苔蛙ってこんな風になってるんだねぇ」
僕は黒いアレ以外は、昆虫も両生類もどっちも大丈夫。
ピートがお手本の苔蛙の解体を見せてくれる。
お腹を割って中の内臓は、新鮮なものなら、薬に使うらしいんだけど、数日ここに滞在するので廃棄することにした。
でもガーベルが簡易で作った畑にまいて、畑用の土づくりに使うそうだ。
皮を剥いで、中の肉は本日の夕食の材料となる。
皮から苔をこそぎ取って、この苔は空壺に入れて密閉して、皮は何度か水洗いをして乾燥。
これは僕らのお土産にしてくれるそうだ。
不帰の樹海から出たら、おじい様にあげよう。
そしてトレッフとフェアヴァルターは、僕らが狩ったビッグボアの解体。
拠点には解体のための洗い場や、解体するための吊るし器具なんかがあらかじめ設置されていて、ビッグボアを拠点に持ち戻った時点で、すぐに毛皮の洗浄&水に浸して血抜きを行っていた。
これは僕もやりたいって言ったら、他のみんなもやると言い出したので、トレッフたちに教わりながら解体することにした。
「最初は、このラインに沿って刃を入れてください」
「この辺は力を入れすぎると刃こぼれするので、もう大胆に避けちゃっていいですよ」
トレッフとフェアヴァルターに指導してもらいながら、牙を切り落とし、これも先にお腹を割って臓物を取り除いてから、毛皮を剥いでいく。
ベテランだと、一人で手際よく解体できるけど、僕らはベテランじゃないから、三チームに分かれて解体した。
「うわっ、まじかー。こんなのあるぅ?」
「全部魔石が入ってますね」
四体のビッグボアは、全部魔石持ちだった。
贓物の中を浚っていたピートとガーベルが、驚きの声を上げていた。
「……前も、同じでしたね」
ピートとガーベルの会話を聞いていたフェアヴァルターが、ぼそりと呟く。
「前?」
「若殿が、初狩りの儀をしたときのことですよ」
あ、深層にいるはずのヒポグリフと一戦やったあれね?
そういえば、ヒポグリフからも岩みたいな魔石が出たって言ってたっけ?
あの時のことを思い出していたら、トレッフが説明してくれる。
「浅層の魔獣からは、魔石が出てこないんですよ。全くないというわけではないんですがね。百体倒して一つ出るか出ないかです」
「へ~」
不帰の樹海の魔獣は、中層から魔石持ちの個体が出てくるそうだ。
あれ? でも……。
「ホーンラビットを狩ったとき、出てこなかったっけ?」
テオが帰った後、僕とネーベルトそれからヒルトとヘッダの四人で、何回か浅層でホーンラビットの狩りをした。
その時は、魔石が入ってた。
「一時期、浅層での狩りで、魔石が大量に取れた時期があったと、聞いたことが……」
「それっていつ?」
途中で言葉を噤んで、フェアヴァルターは僕を見る。
「主君が若かったころの話です。あぁ、そうだ。ウィルガーレン様が、浅層で狩りをすると、魔石が取れたと、聞いたことがあります」
大叔父様?!
そういえばフルフトバール城の宝物庫にある魔石のアミュレットって、あれ全部大叔父様が作ったって聞いた。
魔石を使ってのアミュレット作るのが趣味だったんだって。
こういう話、あんまり聞かされてなかったからなぁ。
前回の不帰の樹海での狩りも、普通に魔石が出てるから、それが当たり前のことだと思ってたんだけど、トレッフの話によると、そうじゃないってことだよね?
心当たりは……シルバードラゴンとの盟約。
シルバードラゴンとの盟約の反動って、マルコシアス家にとっては、祝福であり呪いでもあるんだよね。
呪いは、ラーヴェ王族の異性に心惹かれないってこと。
祝福は、フルフトバールの地が実り豊かで恵まれていること。
もしかして、僕がいる狩りで魔石が出るのは、盟約の反動なのかもしれないね。
王子、黒いアレ苦手言ってますけど、見たら悲鳴も上げずに素手で瞬殺する系です。





