第25話 ヤンキーの希唯依
「・・・・・・・・・・あっ?とりあえず場所を移動しよう、そこで詳しく話聞くわ・・・この場所はいつゾンビ来るか分からんし・・・それにこんな場所ずっと居たくないしな・・・・・」
慎吾は思考停止から回復する。現在の周辺は7匹のゾンビの頭部の無い死骸が転がり血と体液と油や肉の破片が飛び散り、女と会話していても商店街のシャッターや壁や地面の気持ちの悪い色の物質が張り付く地獄絵図が目に入り悪臭も酷すぎる、そしてゾンビに発見され襲われると話どころでは無くなる。
「はいっス!分かったっス、そしたら私が今避難している店とかどうっスか?、すぐそこっス」
女はお辞儀から顔を上げると、慎吾の提案に同意見で2階建ての近くの建物を指差す。
「そうやね、そこにしよか・・・・・」
2階建ての建物を目で確認して慎吾は悩む『舎弟の件は場所を移動して考える、あとは瑠偉ちゃんのお食事をどうするか?』
「その場所は安全?」
「はいっス、シャッターも機能してるっス、安全っス!」
「・・・・・分かった、それじゃあ~これを見てもまだ俺の舎弟になりたかったら、その建物に案内して?俺もそこに行って舎弟の件考えるわ、それじゃあ~瑠偉ちゃんお食事どうぞ?」
「い”イィィい”イィィか”アァァァァ」
瑠偉ちゃんは低い呻き声で『良いか?』と聞いてくる。
「うんっ、ええよお食事どうぞ」
「ウ”ァァァァァ」
女が息を吞む気配を慎吾は感じて。瑠偉ちゃんは『分かった』と返事をすると1番手前の地面に転がる始末したゾンビに歩いて近付くと、ゾンビの右腕を肩の付け根からブチっブチッっと引き千切ると口を顔半分以上に拡げて口元に持って来て喰らい付く。
「・・・・・・・・・・・・・・・その女の子は何なんっスか?・・・・・」
瑠偉ちゃんの初めて聞く呻き声にも絶句していたが、さらにお食事シーンで頭が真っ白になり小さな声で何とか言葉を吐き出している。
「ゾンビ・・・そして俺の大事な仲間」
慎吾は断言して言い切る。
「・・・・・ゾンビの大事な仲間っスか・・・・・」
女は慎吾の顔と瑠偉ちゃんのお食事シーンを交互に見比べながら呟く。
「それでどうする?舎弟の件の話続ける?それとも止める?」
慎吾は別にどちらでも構わないので、目の前で混乱して頭真っ白な女に先を促す。
「・・・・・・・はいっス!お願いするっス舎弟にして下さいっス」
30秒程無言で呆然としていたが女は最後に瑠偉ちゃんのお食事シーンを見てから慎吾の目に視線を移すと力強く返事をする。
「分かった、それじゃあ~その建物に行こか?・・・瑠偉ちゃん俺達そこの建物に行くからお食事終わったら来てね」
「ウ”ァァァァァ」
瑠偉ちゃんは2匹目のゾンビの足を引き千切って手に持って喰らい付くのを一旦止めると血塗れの口の唸り声で『分かった』と返事を解釈する。それを聞いた慎吾は建物に歩いて行く女も慎吾が歩き出すと後を追う。瑠偉ちゃんは止めていた足に喰らい付くのを再開していた。
「ほほ~ここは天国やんけ、めちゃくちゃ天国やんけ!・・・それに俺の商店街の目的地ですやん」
「そうすっスよね!、えっ?金髪坊主の兄貴はここ来る予定だったんですか?」
建物のシャッター開けて店の中に入ると第一声がそれで店内を見渡す『瑠偉ちゃんに子供用の特攻服とかツナギとか着せたら可愛いやろな~』と後ろ髪を伸ばさせている子供の親の様な感覚で妄想して3か所目にこの変形学生服ショップを選んでいた、慎吾は短ランとボンタンを学校に行くときは愛用していたのでさらにテンションが上がってしまう。
「そう、昨日来るつもりやったけど今日になったんやけどね」
「へぇ~、そうなんっスね」
「・・・・・舎弟の件話する前に・・・・・先店見てええかな?・・・・・」
慎吾は天国の誘惑に完敗で申し訳なさそうに聞いてみる。
「はいっス、全然良いっスよ思う存分見ちゃって下さいっス」
女は快くOKした。
「・・・・・それじゃあ~お言葉に甘えて・・・・・」
「はいっス」
それから慎吾は店内を歩き回り特攻服、短ラン、ボンタン、小物等々、気に入ったものを試着しまくり&拝借しまくって1時間程天国を満喫するとここの店の買い物袋6袋分を有難く頂くことにした。拝借ショッピングの途中では最初の警戒は何処に行ったのか同じヤンキー同士慎吾と女は楽しく好きな商品を目の前にしてあ~だこ~だ言いながら息が合い盛り上がっていた。
「はぁ~楽しかった、こんなに楽しいのは久しぶりやな、怖い思いは多かったけど・・・・・瑠偉ちゃんの可愛い特攻服やツナギもあったし、あぁ~最高~」
「そうっスよね、ここの品揃えは中々ですしそれもタダっスからね~、良かったっスよね~楽しいのは最高っス」
「そうそう、この髑髏の指輪とかたまらん、大きさゴツゴツ感質感良すぎやで」
「そうっス、実は私も同じ奴頂いてたっス」
「そうなんや、これは見逃せやんよな」
「そうっスよね~」
そんな話で慎吾と女が盛り上がっていると瑠偉ちゃんがシャッターを通って戻って来た。
「瑠偉ちゃんお帰り~、新しい仲間出来たから瑠偉ちゃんも仲良くしてあげてね」
慎吾は女を見て紹介する。瑠偉ちゃんはお食事したばかりなので口元は血塗れで女を見つめている。
「・・・・・あっ?・・・・・あっ?・・・・・ありがとうっス、感激っス、本当に感激っス、これからはこの命を懸けてお守りするっス、宜しくお願い致しまっス」
女は突然の仲間発言に驚いてから慎吾の顔と口を二度見して笑顔になるがすぐに顔を引き締めると、両腕を後ろに組み足を少し拡げると頭を深くお辞儀をする。
「そんなんええから、もう仲間やからさっきの服選びみたいに楽しくやっていこ、外に一歩出たら地獄だけで戦うしか無いからね、せめて安全な場所におるときは楽しくやっていくよ、そんで俺が慎吾でこの子が瑠偉ちゃん、ご存じと思うけど瑠偉ちゃんはゾンビやで」
慎吾は瑠偉ちゃんが金属バットペロペロが終わるのを見てからタオルで血濡れの口と両手を拭きながら、深々とお辞儀する女に止める様に諭している。
「あっ!はいっス、分かりましたっス、慎吾の兄貴と瑠偉ちゃん姉さんっスね、この命お二人に預けるっス、私の名前は希唯依っス、何でも言って下さいっス、何でもやりまっス」
「うんっ!そういう性格かも分からんけどなるべく気張らんと楽に一緒に生きていこ、たぶんやけど希唯依は1人で生きてきたぽいっし寂しかったやろ?俺もゾンビの瑠偉ちゃんやけど一緒に居てくれてだいぶ助かってるからな~、戦闘面は勿論やけど精神面でもかなり助けて貰ってるし、1人でこのゾンビが蠢く世界で生きるとかめちゃくちゃ寂しいと思うし、これからは仲間やから遠慮とかは無しで頼むよ」
「はいっス、ありがとうっス」
「それで何で俺達の仲間になりたいと思ったの?こんなチンピラAみたいな奴近付きたくないやろ?」
自分の姿が他人からどういう風に見られるか理解しているので聞いてみる。
「それはっスね、まずは瑠偉ちゃん姉さんの様なっスね小さな女の子を連れられて行動されていた事の安心感と信頼感っスね、後は野生の感、女の感的な直感っスね~私それを大事にしてるっス、それとゾンビ達を始末していた時に私が痺れたっスからやっぱり慎吾の兄貴を見た時の直感が一番デカいっス、慎吾の兄貴の恰好の人達は私は見慣れてるっスよ」
最後希唯依は笑顔で話し終える。
「そうやな俺みたいな奴は希唯依は慣れっこやろな」
金髪ロングに真っ赤な特攻服と白いサラシ姿のヤンキーの希唯依を見ながら答える。それから2人は話を続けて慎吾は『気が合ってるし独特やけど面白そうな奴やな』と『今まで1人はどんだけ辛かったんや?』を頭に浮かべている。




