58話 雪降る冬の湖畔
「グハッッ!!」
体中に激痛が走る。おそらく10本以上は骨が折れた。……使えるのか分からないが、聖回復魔法をやってみるしかない。
「――パーフェクトヒール」
徐々に体の痛みがなくなってくる。……なんとか回復できてよかった。
だが、痛みの次は息苦しさに襲われた。しまった、早く浮上しないと……。俺はユキを抱きかかえたまま浮上し始めた。
「ップハァ!! ハァハァ、た、たすかった」
最後の気力を振り絞り、なんとか水面から顔をだすことができた。
ふとユキの状態を確認すると、耳を真っ赤にしてうつむいたままだった。
「ユ、ユキ、だ、大丈夫か?」
「…………バカ」
「えっ?」
「ユウト様のバァァァァァカァァァァァァァァァァ!!!」
ユキはいきなり怒り出し、ポカポカと俺のことをたたき始めた。
「お、おい、いったいどうしたんだ?」
「いったいどうしたんだ? ……じゃないですよ!!! 全然大丈夫じゃない、泉に落ちてるじゃないじゃないですか! もし湖がなかったらどうなってるのか分かってるんですか!?」
……ぐうの音も出ないほどの正論だ。俺は何も言い返せず、ただただ聞くしかなかった。
「そ、れ、に、私をかばって自分を犠牲にしましたよね? そんなこと二度としないでください!」
「いや、それはユキを守ろうとしてやったことだし。それに俺は聖回復魔法を使えるし」
「だからと言って自分が犠牲になるってことはやめてください! そんなことされても全然うれしくありませんから! ……もっと自分を大切にしてくださいよ」
そういってユキは泣き出してしまった。……相当心配をかけてしまったようだな。
「悪かった。今度から気を付ける」
「……絶対ウソ。全然反省してませんよね」
全然信用されてないな……。まあ、今まで俺のやってきたことを考えれば当然か。
「……もうこんなムチャ二度とさせません。……私がずっと隣で監視するので、覚悟しておいてくださいね」
「ハハッ、それは手厳しいな」
……なんだろう? なんだか少しこっぱずかしくなってしまった。
この会話以降、俺たちは少しの間黙りこんでしまった。
「……ユウト様、いつまで私を抱いているつもりですか?」
あっ、しまった。今までずっと抱き続けてしまっていたのか……
「ご、ごめん。今すぐ離すから」
「……、ちょっと待ってください!」
「え?」
「なんで離そうとしてるんですか?」
「いや、だって、離してほしいんじゃないのか?」
「そんなこと一言も言ってません!」
「え? じゃあこのままでいいのか?」
「いや、そ、それはその……。ちょっと恥ずかしいので……」
ええ……、めんどくさいことになったな。いったいどうすればいいんだ……。
「……今、私のことめんどくさいって思いましたか?」
「……いや、そんなことないぞ」
「嘘ですよね?」
「…‥ああ」
「やっぱりそう思ってたんですね。ひどいです……」
まずい……。少し怒らせてしまったかな?
「いや、あの、これはだな……」
「フフッ、別に怒ってませんよ。そんなに焦らないでください」
「なっ!? ……ユキ、俺をだましたな」
「だまされる方が悪いんです」
そう言ってユキは再び笑い出した。
……ユキが笑っている顔を見ていると、なんだか不思議と心臓の鼓動が早くなったのを感じた。それに、少しだけ顔が熱くなった気もする。
「……ユウト様、顔が赤いですけどいかがいたしましたか?」
「えっ? 俺そんなに顔赤くなってるか?」
「はい。……フフッ、いったいなぜでしょうね?」
そういってユキは俺をからかうような笑みを浮かべた。
「さ、さあ、なんでだろうな……」
「もしかしてですけど、ユウトさ……、……クシュン!」
「……ずいぶん可愛らしいくしゃみだな」
「う、うるさいです。……早く陸に上がりましょう。すごく寒いので」
ユキに言われて今更きづいた。その瞬間、強烈な寒さに襲われた。寒さが苦手な俺にはすごく苦痛だった。
(そういえば俺たち今、湖の真ん中にいるんだったっけ。完全に忘れてた)
空を見上げると雪まで降っている。
「た、たしかにそうだな。は、はやくあが……。ハッ、ハッ、ハックシュン!!」
「……これじゃあ2人とも風邪をひいてしまいますね。屋敷に戻ったら温かいスープでも飲みましょう」
「そうだな。そうとなったら早く戻ろう」
俺たちは急いで湖から飛び出した。
その後俺たちはノルンと合流を果たし、無事に国に戻ることが出来た。街では多くの住民が俺たちの帰りを盛大に祝福してくれた。
また、倒したドラゴンは石板を使って封印した。結果的に龍神様や親父たちを封印することになってしまったのが少し心残りだった。……いつか彼らも救ってあげるとするか。
だが、これでようやく平和なゆったりした日々を過ごすことが出来る。
……そう思っていたのが完全に間違いだった。
「ユウト、あなたをこの国の国王に任命します」
母さんから言われた一言に俺は絶望した。
「な、なぜですか?」
「なぜって……。あなたはこの国の危機を救ってくれた英雄なんですから! ……これから頑張ってくださいね、ユウト国王」
「いや、俺はまだ……」
「そうだ! せっかくだしパレードも開催しましょう! フフフッ、これから忙しくなりますね」
こうして、お試しの国王だった俺は流されるままに本当の国王になってしまった。
※次は15時20分ごろに最終話を投稿します。
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