20話 温泉旅行①
「ユウくーん、そっちのお湯加減はどぉ?、こっちはサイコーだよーーー!」
「ゆうともおんせんにはいってるの? こっちにきていっしょにはいろー」
「ダ、ダメですよ!! みんな裸なんですから来られても困っちゃいますよ!!」
「全くです。他の男性が欲情しかねないことを言うのはひかえてください。ユウト様だけならまだしも、他の男性が聞いてたらどうするんですか?」
「あほユキの体じゃ誰も欲情しないっての」
「根拠のないことを言うのやめてもらっていいですか? イキリ有翼人さん」
「なっ? あんたってやつはいつも……、こうしてやる!!」
「ちょっと何するんですか!? ッきゃあ」
「あっ! なんか楽しそうなことやってる! 私も混ぜて!!」
……向こうでとんでもないことが起こっている。
「お、お、王子、おれたちも流れにのってあっちにいっちゃってもいいんじゃないですかね?」
「ユウト、神である僕はあっちにいくことを許されてるよな?」
「2人とものぼせて頭がおかしくなったのか? もう風呂を上がったほうがいいと思うぞ」
俺たちは今、温泉に入って英気を養っている。
数日前のことだ。
俺たちは魔族討伐や親父との騒動にまきこまれてたこともあり、心も体も非常につかれきっていた。
「ねーねー、ゆうと、わたし、おんせんにいってみたい」
「温泉?」
「らんちゃんとみーろんがおんせんにいきたいっておしゃべりしてたのきいた。わたしもきょうみわいた。だからつれてけ。じゃないとのろう」
「分かった分かった。お前を連れてけばいいんだろ……」
「わたしだけじゃない。みんなつれてく。これめいれい」
このやりとりがきっかけで、みんなを温泉旅行に連れていくはめになってしまったのである。
俺、ストラ、クロノスの3人は温泉を出た後、先に街の中を散策した。
街はもう夜だというのに、かなりにぎわっていた。
どうやら祭りが開催されているらしい。
「おいしそうな食べ物がたくさん売られているではないか! おい、2人ともさっさと行くぞ!」
クロノスはいそいそと出店がある方へ走っていった。
「ストラ、悪いがクロノスのメンドウを見てやってくれ。俺は向こうで少し休んでくる」
「え、あ、はい。わかりました」
そうして俺は2人からはなれ、近くにあったベンチに座った。
2人の姿は人ごみにまぎれてだんだん見えなくなっていった。
たくさんの人が祭りを楽しんでいるさまをぼーっとながめていると、遠くから聞きなれた声がきこえてきた。
「ゆうとみつけた。おーい。ゆうとー」
「え? ミアちゃん、ユウくんどこにいたの? 教えて教えて」
……ミアちゃんってあのサキュバス幼女のことか?
いつの間に名前決めたんだ?
温泉につかってたときにみんなで名付けたのかな?
「あそこでのんきにすわってる」
「あ、私も見つけた! おーい。ユウト―!」
「ユウトさん、探しましたよ。なんで先に行っちゃうんですか?」
「ランディアさんの言う通りです。ひとこと声をかけてくださっても良かったのでは?」
まずい、このままじゃみんなに説教されてしまう。
とりあえずみんなをほめてキゲンをなおしてもらうか。
「悪かったよ。それにしても、みんな『浴衣』似合っているじゃないか。普段の服とはまた違ってとてもいいと思うぞ」
そういえば、この『浴衣』って服も日本の衣装なんだよな……
いったい日本っていうのはどんなところなんだ?
「お、お褒めいただきありがとうございます」
「えへへー。そうでしょ♪」
なんとかみんなのキゲンをなおすことが出来たな。
「ねーねーゆうと。わたしたちのなかでだれがいちばんきものにあってる?」
……この子はいっつもとんでもないことを言ってくるな。
全員の視線が俺に集中する。
これは慎重に答えを選ばないとな。
答えによってはまたみんなから非難されかねない。
「えっーと」
みんなの視線がさらに強くなる。
……この答えが一番無難だろうな。
「ミア、お前が一番似合ってるぞ。浴衣も花火の絵柄でとてもかわいらしいしな」
「やったー!うれしい!」
ミアがうれしそうにぴょんぴょん跳ね回っている。
どうやらいちばん良い答えを導き出せたようだな。
みんな最初は不満そうな顔をしていたが、ミアならしょうがないと言って誰も文句はつけてこなかった。
ただ、ユキだけはほっぺを膨らませて俺をにらみ続けていたので、それは気づいていないふりをしてやり過ごすしかなかった。
「せっかくだしみんなも祭りをたのしんできたらどうだ? あと少しで祭りも終わってしまうぞ」
「ええ! それ早く言ってよ! みんな早くいこう!」
「ゆうともいっしょにきて。こなかったらのろう」
「分かった分かった。今行くよ」
俺は一番後ろでみんなについて歩いていた。
すると、ユキが俺の隣に並んで小声で俺にささやいていた。
「ユウト様、さっきの質問にちゃんと答えてもらっていいですか?」
「さっきの質問?」
「はぐらかさないでください。さっきはミアちゃんって答えることで、みんなのキゲンを損ねないようにしたんですよね?」
ユキには全部ばれていたのか……
「本当は誰なんですか?」
「全員だ。全員魅力的に見えたから順位なんて付けられない。みんな1番だ」
「……またはぐらかしましたね」
そういうとユキは少しがっかりしていた。
落ち込んでいるユキの姿はあまり見たくないので、俺は少しフォローすることにした。
「ただ、その桜色の浴衣はユキが一番似合ってると思う。みんながその浴衣を着ていたらユキを1番って言ったかもな」
俺がちらっとユキの方に目をやると、ユキは少しだけ微笑んでいた。
※次は明日の18時20分ごろに第21話を投稿します。
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