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2回目の4回分

良かった。

この日こそ幸福だと感じた事はない。


どうやら香織達には、昨日の生徒会室でのやりとりは聞こえてなかったらしい。今日、それとなく確認してホッとした。


これで香織とも、今まで通り親友としてやっていける。

その喜びのあまり、昨日言われていた図書室の掃除をすっかり忘れて帰ろうとしていた時だった。


「美栄ちゃん。君、図書室の掃除だろ?」


「そうだった」


振り返るとそこにいたのは裏切り大臣新橋鷹瞳だった。


「災難だったねぇ。勉のせいで」


「なによ、薄情者」


「なんだよ。まだ宿題の事根に持ってんの?わかったよ。今度なんか奢ってあげるからさ。それより、図書室の掃除手伝ってあげようか?」


「別にいいわよ。掃除くらい1人でできるし」


「ふぅん。1人でねぇ?」


意味深に笑う鷹瞳君の表情がかなり気になる。


「な、なによその顔」


「別に?行ってみたらわかると思うよ。じゃあね。俺の好意を無駄にした事を後悔しないように」


そう言い、鷹瞳君は去って行った。


どうせ負け惜しみか嫌味だろうけど引っ掛かる。後悔って何よ。


「仕方ない。やりますか」


鷹瞳君の言葉は気になったけど、結局誰もいない。

きっと私が断ったからいい加減な事言ったんだんだろう。


今はそんなことよりさっさと終らせようと、ホウキで床を掃き始めた。


それにしてもなんて汚いんだ。掃いても掃いてもゴミがでてくる。


掃除開始から5分たらずで鷹瞳君の好意を断った事を後悔した。


しかし次の瞬間、もっと後悔する事になる。


「あーもう!なんで私がこんな事を!全部勉のせいだっ」


叫んだ時、後ろから聞き飽きた声がした。


「俺のせいじゃないよ?人のせいにするのは良くないな」


悪寒がした。なんか振り返っちゃいけない気がする。だけど振り返らなきゃもっと恐ろしい事がおきそうな気がして、ついつい振り返ってしまった。


「……なんでここにいるのよ。手伝いならいらないからね」


「手伝い?まさか。手伝う気なんかないさ」


「だったらとっとと出て行ってよ!」


「残念ながらそれはできないんだよ。ほら、あれ見て」


そう言われ、ホワイトボードに視線をやる。そこには恐ろしい事が書いてあった。


『図書室1学期清掃監督・新堂勉』


マジか!


「なんでアンタがッッ!!」


「生徒会だから」


「冗談じゃない!掃除、来学期に変えてもらうわ」


「それは無謀だな織原さん」


あぁ。勉のせいで掃除させられてるのに、その監視が勉だなんて。なんて皮肉なんだろう。

落胆していると、後ろから嫌な音がした。


ガラガラピシャッ!カチャッ。


ガラガラピシャッはわかるとして、『カチャッ』ってのは何だろうか。恐る恐る振り返る。


「今、一体何をしたのかな」


「ちょっと鍵をね」


なにが『ちょっと』よ。

ヤケにニコニコしながら近付いてくる勉を見て、また嫌な予感がした。


「先は長いからね。早く解消しちゃわなきゃな」


やっぱりあの約束か。


「あの約束は無効よッ!なんで私が怒られてアンタの監視下で掃除してあまつキスまでしなきゃなんないわけ!?あの問題、大学のだって知ってて黙ってたくせに!契約詐欺よっ」


すると勉は苦笑いしながら私の手をつかむと、そのまま本棚に押し付けた。


「あぁ、あれ大学の問題だったのか。大して難しくなかったから気付かなかったよ」


全くもってイヤミな奴だ。と言うかこの態勢はかなりヤバイのでは。


「先生が君を試す為にわざとラストは難しい問題にしたのなんか、俺は知らないよ。それに、もとはと言えば自分でやらない君が悪い。君の敗訴は確実だ」


「性格悪ッ!」


「ありがとう。では2回目しようか美栄」


にこりと微笑むと、勉の顔が近付いてきて私の唇と重なった。


「ん………!」


まさかまたあのキスだとは。


勉の舌が固く結んだ私の唇をこじあけて中に入ってきた。


こればっかりは本当に嫌だ。しかし男の力には勝てない。結果的に私は勉を受け入れる羽目になってしまった。


「!?」


口付けに耐えながら、なんだかもぞもぞするのに気付く。

気付けば勉は、片手で私を抱き締めて、片手はスカートの下から足を撫でていた。


このエロ会長!


そう叫びたかったけど、もちろん唇を塞がれているのだから無理だ。

その間も手はだんだんと上にいき、太股から足の付け根にかけてを撫でている。


もしかして、このまま勉と!?

そう思った瞬間、すごく怖くなり、思いきり勉を突き飛ばした。


「は、離しなさいよ!約束はキスだけでしょ!それ以上したらタダじゃおかないからね!恋人だって無理矢理は強姦なんだからねッ!!」


そう叫ぶと、目を丸くしていた勉はふと苦笑いをした。


「ゴメン。俺も男だから、つい」


「ついじゃないッッ!」


警戒する様に睨むと、ゆっくりと近付いてきた勉は優しく私の頭を撫でた。


「わかった。無理強いはしない。悪かった」


「………」


そんな風に言われたら──。


「わ、わかればいいのよ」


許すしかない。

赤くなりながら黙っていると、勉は私から離れた。


「もう図書室にいるのも飽きたから、そろそろ帰ろうか」


「え?いや、まだ掃除が残ってるんだけど」


「いいさ。汚いのが嫌なら使う奴が掃除すればいいだろう。ほら、行こう」


手を引かれて、慌てて掃除用具をしまう。


「でも、やり直せとか言われるかもしれないでしょう」


「俺が掃除してましたって言うから平気だろ?意外とマジメだね君」


優等生にマジメって言われた。


「それと美栄ちゃん」


振り返り、勉は微笑む。


「今日のは2回分にしてあげるよ」


「え?」


「ほら、職員室行くよ」


手を引く勉の背中を見て軽く笑みが漏れる。


なんだかんだいっても、コイツはコイツなりに少しイイ奴なのかもしれない。

背中を見ながら、うっかり見直してしまった。

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