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10Pの罰


取りあえずこれで1回か。


ほっと胸を撫で下ろしたい所だけれど、何故か奴は離れない。

ちょっと長いんじゃないだろうか。

すると、勉の唇が開いたと思った瞬間、何か暖かく濡れたものが口内に入ってきた。


「んんっ……!?」


これが舌だと気づくのに少し時間がかかった。

混乱している間に、勉の舌は私の舌を絡めとる。

唾液が喉に落ちてくる。どちらのものなのかは、もうわからない。

ヤバい。力が入らないし、足がガクガクしてくる。

それに気づいたのか、奴は私の腰に手を回すとそのまま支える様にした。


「んんっ─!」


苦しい。キスって、鼻で呼吸をしなきゃならないのだろうか。

完全に混乱していると、やっと口が解放された。


「よく息しないでいられたね」


「はぁ、はぁ……死ぬかと思ったわよ!」


全身全霊の力を込めて勉を引き離した。


「大丈夫かい?涙目になって。そんなに良かった?」


「ふざけんな!いいわけないでしょ!なんなのよあれは!」


「何?知らないのかい?あれはディープキスといって一番熱いキス。気に入らなかったかな」


「気に入るもなにも、なんで急に舌を入れるわけ!?なんで何回も角度変えるの!?なん──」


言い掛けた時、勉に口を塞がれた。そして深いため息を吐かれた。


「君さ。セックスとか言うのいやがるクセに、随分大胆な事を叫ぶんだね。外には鷹瞳達もいるのに」


「え……」


サーッと血の気が引くのがわかる。

私は何を叫んでるんだ。全部丸聞こえじゃないか!


「まぁ俺はかまわないけど」


「私は構うわよ!」


どうしよう。全部香織にも聞こえているに違いない。

勉の手がまだ腰に絡みついてるのも気に入らなかったが、なによりもう二度と外には出られないと、完全に落ち込んでいた。


「織原さん」


「……」


「美栄ちゃん」


「……」


「美栄」


「なによ!!」


こっちは落胆してるって言うのに。

睨みつけると、勉は笑いながら携帯を見せてきた。


「時間。大丈夫かい?」


気づくと、タイムリミットまであと5分を切っていた。


「ヤバい!早くいかなきゃ!!」


せっかく苦労して終わらせたのに、先生が帰ってしまったら意味がない。

恐る恐る会長室のドアを開けて外の様子を伺う。


「あ、美栄ー。どう?宿題やってもらえた?」


「あ、うん。まぁね」


あれ。なんか普通だな。


「早くいかないと先生帰るんじゃない?」


みんな、もしかしたらただ知らないフリしてくれてるだけなのかな。


「みんな、ごめんね!!」


私は叫んでそのまま生徒会室を後にした。


去った後、勉は笑いながら会長室から出てきた。


「ヤケにご機嫌やな。なんか美栄ちゃんにしたんとちゃう?」


「いや、別に。もししたなら彼女暴れるからお前達も気づくだろ」


ソファーに座る勉を見ながら鈴原先輩は苦笑いする。


「去年の会長が音楽聞くために防音にしたんだからわかるわけないだろ」


「あぁ、そうだっけね」


もちろんこの会話は、私には知るよしもない。


----------------------------------------


「失礼します!」


職員室のドアを開けると、私は真っ先に宿題を出した先生の所に向かった。

もう帰る所だったらしく、鞄を片手に上着を着ている最中だった。


「遅かったな」


「なにせ100ページですからね。それよりできましたよ」


問題集を差し出すと、先生は胡散臭そうな顔でそれをパラパラとめくる。

全部やってあるし、解いたのはみんな優等生ばかりだ。

自信たっぷりにしていると、最後の10ページで先生の手が止まった。


「間違ってますか?」


「いや、あってる」


良かった。どうやら真面目にやってくれたみたいだ。ほっとしていると、突然先生は怖い顔で私を睨んできた。


「お前、これを誰にやってもらった?」


「は?」


ヤバい。なんでバレたんだろうか。字が似てないから?

確かに最後は勉が直接書き込んでいたけれど、数字ばかりだ。それを瞬時に見抜ける能力があるとは思えない。


取りあえずこういうのは謝ったら敗けだ。つまり、しらを切って誤魔化す事にした。


「やだなぁ。全部自分でやりましたけど?」


すると先生は怒りながら問題集を机に叩きつけた。


「嘘を吐くな!最後の10ページは大学の卒業試験の問題だ。今の3年にも出きるわけがないだろう!!」


「えぇ!?」


その時ふと思い出した。


『俺にもわからないや』


『なぁ、これって本当に2年の問題か?』


『なるほど。道理で孝文達にもできないわけだ』


あ、アイツ!!わかってたくせに黙ってたな!


「罰として明日1人で図書室掃除をするように」


「えぇー!?」


「ゴチャゴチャ言うと体育館もつけるからな!!!」


せっかく苦労してやったのに。しかしもうすでに時遅し。

私は勉にハメられたのだ。あぁ、なんて不幸でバカなんだろうか。


とぼとぼと職員室から戻る時、ふとそのドアが目に入った。


思い出した。無理な要求の後に簡単な要求を与えて受け入れさせるテクニックの名前。


ドアインザフェイス。


まぁ、それがわかった所で、どうにかなるものじゃないけれど。

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