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朝の恒例

「全く、嫌になるわ」


あれから約30分後。「もう次はないからな」というお決まりの台詞で説教は終了し、なんとか解放された私は、重い足取りで階段を登っていた。向かう先は、最上階にある『生徒会室』遅刻届けの用紙を得るためだ。


「遅刻したからなんだっていうのよ。誰にも迷惑かけてないじゃないっ。しかもアイツに見学までされて!」


登校早々、嫌になる。

しかし、やらなきゃいけない事は、当然だがやらなきゃならない。

遅刻は確かに私情なわけだし、卒業するまでのむこう1年間も頻繁に遅刻する予定だ。

そんなわけで、一応決まりは守らなければならない。遅刻如きで停学留年なんて、本当に洒落にならないから。


「アイツ、いなきゃいいな……」


ぼやきながら『生徒会室』と書かれたプレートを見上げる。

一見、まるでどこかの社長室の様な茶色いドア。

それ程この学校は『生徒会』を重要視している。たかが生徒の集まりのどこがそんなに偉いのか、全くもって理解できないけれど。


「失礼します」


軽く数回ノックし、ドアを開ける。見飽きた室内には、更に見飽きた新堂勉が、案の定嫌味な笑いを浮かべてスタンバイしていた。


「おはよう識原さん。何か用かな」


この笑顔、冗談抜きで腹が立つ。私がここに来る理由は、1つしかないのに。


「用紙を貰いに来たんだけど」


なるべく目を合わせない様に言い、右手を差し出す。心の中では(いいからさっさと出せ)と悪態を吐いたのは秘密だ。


「相変わらずだね君は。毎日毎日遅刻して、よく飽きないね」


「うるさいわね」


遅刻は飽きない。でも、コイツの顔を見るのは飽き飽きしている。できるならばそう言いたい。言ってやりたい。でも出来ない。なぜならコイツは――。


「文句を言うなんて、素直に渡せないな。それともまた安西先生に叱られたいとか?意外だったな、君にそんな趣味があったとは」


そう言い、見るからにドSそうな笑みを浮かべる。

新堂は頭が良い。なんでも、前代未聞のなんとかの頭脳の持ち主らしい。

しかも母親はPTA会長らしく、教師の評判が恐ろしく良いのだ。こんな縦の、しかも上に伸びている関係に強い奴を敵に回すなんて馬鹿な真似は、いくらなんでもしない。


「大変申し訳ございませんでした!用紙をいただけますか」


敵に回したくはないけど、仲良くもしたくないし、尻尾を振るなんて絶対に嫌だ。

睨みつけ、右手を差し出す。

すると新堂は、1枚の用紙をこちらに差し出した。それを文字通り引ったくると、まるで万引きをした中学生のように走って逃げた。



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