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ブルーデイズ  作者: fujito
第二章 蒼い日々 色々
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【十話】 かつての激オコプンプンセリカの話を聞いた、お茶会の日

「ちょ! アカリ! 間違ってるわ!」


 今日も、仕事でミスをしてしまった私。

 セリカさんに絞られていた。


「ここのミス! 三度目! 次やったら、激辛カレーの刑だからね!」

「は! はいぃぃぃい! すみませんー!」

「メイ!」

「……は、はい!」

「オッケーよ」

「は、はいー……」


 激辛カレーの刑はまだ受けた事が無いので分からないが、プランさんなら、即倒してしまうかもしれない。

 そして、メイちゃんは問題なかったようであるが、あの威圧感のある声で呼ばれると、つい、びくっとしてしまうのは、よく分かる。


 そうして、ようやく仕事が終わった。その瞬間にミランダさんに言われる。


「終わった、終わったー。ねーねー、アカリちゃーん。これから行っちゃうー? 天国へ――」

「駄目だ」

「――って、チュン、何でー!? もう仕事終わりっしょー?」

「うむ、仕事は終わった。で、これからメイとアカリは、私とお茶するんだ」

「えー? こないだもー、やってたじゃんー。たまにはこっちにも来てよー」

「お前はいつも娯楽室じゃないか……お前こそ、たまにはこっちに来たらどうだ?」


 最近は、確かに仕事が終わってよくお茶をするようになっていた。

 もちろん、ミランダさんと一緒に、娯楽室へ遊びに行く事もある。

 私の割合としては、お茶をする方が多いかもしれないが、娯楽室に行く時は、チュンさんやメイちゃんも一緒に行く事も多い。

 だが、確かに、お茶会にミランダさんが参加する事は多くは無い。


「えー? んー……んー」


 ミランダさんが悩んでいるが、私もたまにはミランダさんにも来てほしいと思っていたので、同じく誘ってみた。

 それにメイちゃんも賛同してくる。


「それに、今日はユウカも来る。あと、プランさんも来るそうだ」

「んー、じゃーさー。大テラス行こーよー」

「もちろん、そのつもりだ」


 ミランダさんがそう言う理由は分かっている。どうやら、小テラスのほうは、カメラがあまり無いようなのである。

 それに、小テラスでは、テーブルがそこまで大きくは無い。三人を超える人数だと、自然と大テラスに行くようである。

 

 そして、私達は、一度部屋に戻ってから、自分達のお茶を用意する。

 私は何でも良いのだが、やはり好みもあるようで、こういったプライベートのお茶の時は、自分の部屋から、自分の好きなお茶を淹れていく事がほとんどである。


(……えーっと、今日は、うーん、これにしよ)


 私は、ジャスミンティーを入れたティーポットと、カップ、それから湯沸かし器を持って、メイちゃんと合流してから、大テラスに向かった。


「大テラスでお茶するの久しぶりだねー」

「そうだね、遠いから……」


 そう、そこが意外に問題であった。

 小テラスは、私達の部屋のすぐ近くなのだが、大テラスは、この二階のほぼ反対側。ちょっと遠い、と言うだけなのだが、ティーセットを持つと、どうも近場の小テラスに行ってしまう。

 それだけ、この城の二階が広いと言う事でもある。


 大テラスに出ると、既にチュンさんとミランダさんが居た。


「あー、来た来たー。ねーねー、二人は何のお茶ー? チュンってば、いっつも煎茶ばっかりだからー。コーヒー無いのー?」

「あ、私、ジャスミンティー入れてきちゃいました……」


 忘れていた。

 ミランダさんは、コーヒーが好きなのだ。だが、かなり砂糖とミルクを入れるので、もはやアレンジコーヒーになっている。

 最近分かってきたが、ミランダさんは、ここでもかなりの甘党のようである。


「あー、私ー、それ駄目ー……」


 ちなみにメイちゃんはコーヒーは飲まない。どうも体質に合わないらしい。

 煎茶は飲むから、カフェインが駄目と言う訳でも無いようだが、どうも調子が悪くなるらしい。


 「……あ、私、紅茶ですけど、アールグレイなので、ミルクとお砂糖も持ってきてますけど……」


 どうやら、メイちゃんがミルクティーを用意してくれるようであるが、おそらくミランダさんには、砂糖が足りないと思われる量しか無い。

 そこに、もう一人の甘党、いやここのメンバーでの一番だろう、プランさんがやって来た。

 お盆には、少し大きめなおしゃれな器に、白い何かが乗った、物を入れているようである。


「あー! プランさん、それー、私もそれが良いなー!」


 それを聞いて、プランさんはコクコクと頷いてこちらに来る。


(……さすが、プランさん……ちゃんと二人分ある……)


 お盆には、それが二つ。

 そして、皆と同じ席に座りつつ、一つをミランダさんの座っている前に置く。


「わ、これ、何なんですか?」

「んー、これねー。プランさん特製のー、生クリーム大量のココアだよー」


 とても甘そうであるが、美味しそうである。


「わー、良いなー。美味しそうですねー」

「あ、アカリちゃん、私、飲ませてもらった事あるよ。とっても美味しかった」


 メイちゃんの言葉に、ニコニコ笑い頷くプランさん。


(ああ、これ、次は絶対用意してくれる顔だ)


 最近は、プランさんの事も良く分かってきている。こういう時の後、プランさんはちゃんと用意してくれる。


「あれ? ユウカは?」


 チュンさんは、自分の湯飲みを持ちつつそちらを気にする。

 それにはミランダさんが答えてくれる。


「うんー、まだー、四階フロアーだねー。うわー、セリカっちまだ仕事してるわー」

「さすがに、今のセリカさんの作業は手伝えん……」


 セリカさんは何か研究をしているようである。そればかりは、出来る人は少ない。


「ああ、そう言えば、アカリ。今日もまた絞られてたな?」

「はう! また……ミスしちゃいました……」


 私は、今日の仕事の時を思い出す。今日もセリカさんに、こってり絞られた。


「でもねー、すごい進歩だと思うけどねー?」

「私もそう思う。多分、セリカさんもそれは分かっているから、簡単なミスに怒るんだろ?」

「最近はー、メイちゃんもー、多いねー」

「……あ、そ、その、まだ作業が遅くって……」


 今度はメイちゃんに話題が飛ぶ。今日は怒られてはいなかった。


「ま、今だから言えるんだが……まぁ、あれだ。セリカさんは二人に期待してるんだと思うよ」

「「は、はい……」」


 チュンさんはそう言ってくれるが、セリカさんが怒ると怖いのは、先刻承知である。しかし、あくまで私達には、叱咤しているだけであり、怒りのままに言っている訳では無いのも、良く分かっているつもりではある。

 それでも、怖い物は怖い。


「だから、そう怖がる必要は無いと思うぞ? ま、本気で怒ったら、アレだ。前、社長が来た時の……」


 その言葉で思い出す。あの時は、確かに怒っていた。明らかに違うオーラを纏っていた。


「あのー、それでちょっと思い出したんですけど……」

「ん?」

「あの時、セリカさん怒ってましたよね?」

「怒ってたねー。あれ、ほんとー、何時以来だったっけー?」

「アンカ室長の時だな……」

「あのー、それなんですけど……その、アンカ室長の時って……何だったんですか?」


 確か、前もそう言っていた事を思い出した。だが、それが何だったのか、私とメイちゃんは知らないし、分からない。


「…………あー…………あれはねー…………」

「うむ……まぁ、仕方が無い……」


 うんうんと、プランさんも頷く。


「「……え……?」」


「あれは、二年半くらい前だったかな?」

「うーん、それくらいかねー?」


 そして、チュンさんとミランダさんが、昔の話をしてくれた。



======================================



 まだ、アンカがここの室長に就任し、あまり間が経っていない頃であった。

 ここのメンバーから、ミカが抜けた為、ここの人数は、9名になってしまっていた。

 どのメンバーも、まだ若く、そして日が浅いメンバーも多い。そして、実働は8人。

 プランが唯一の主任であり、技師でもあった為、多忙な日々を過していた。

 巡回艇もまだ少なく、夜間用も無かった頃である。

 メンテナンスにも時間がかかる為、プランはほとんど四階フロアーには居る事は無く、セリカとアンカで、日の浅いメンバーをほぼ全員見ていた。

 チュンと、ミランダはそれでも長い方であり、最も作業を多くこなしていたかもしれない時期である。ユウカやエレナは、まだまだ作業も覚束ない。リーゼは、ずっとプランに付いていたが、それでも何とか日々を過していた。

 そして、夜間巡回も専属が居ない為、その中のメンバーでやらないといけない。


 アンカも、セリカも、そしてプランも多忙であった。


 だから、”ひずみ”発生の際に、フロアー内に人が居ない、等という事もあった。

 夜間巡回を行ったメンバーが、就寝しているからである。


 しかし、”ひずみ”が起きれば、対応しないといけない。


 その為、必要な物があった。

 それは、就寝しているメンバーに、”ひずみ”を知らせる物である。

 だが、寝ていても、彼女達はそれを感知出来る。しかし、感知できたからと言って、必ずしも起きれる訳ではない。


 しかし、それが悲劇を生んだ。


 その日は、午前に”ひずみ”が起きた為、皆、疲れていた。

 前の晩、夜間巡回に出ていた、セリカやチュンは、それで叩き起こされた。

 だが、それは仕方の無い事である。


 それを感じ取った二人も、寝ていた自室から、すぐさま四階フロアーに向かった。

 先程、寝たばかりだというのに、すぐに起こされる。

 仕方が無いが、腹が立つ。それがセリカの心象だった。


 その”ひずみ”は少し大きく、その日は大変であった。

 結局、事後処理等もあって、夜遅くになってしまった。


 セリカは、その前の晩も、あまり寝ていない。かなり寝不足だった。

 事後処理の後は、すぐにベッドに直行したのだった。


 そして、夜にそれが起きた。


 サイレンの音が、城中に鳴り響いた。


 それが、その時に使用されていた、”ひずみ”を知らせる合図である。

 感知が出来ても、疲れて寝ているメンバーが起きない事もあったので、かなりの大音量のサイレンなのである。


「……う、嘘よ! 夜中なのに……! まさか……」


 セリカは一人で、そう叫びながら、四階フロアーへ向かった。


(何? 感知も出来ない。いや、予知も出来なかった……一体……)


 四階フロアーへ行くと、他のメンバーも、慌てて来ていた。


「今! 夜間行っているのは誰!?」

「リーゼちゃんとー、プランさんー!」

「皆、感知出来てる!?」

「なんにもぉ」

「ああ、感じないよ!」

「……どういう事? 感知も出来ない”ひずみ”……?」


 そこは、これまでに無い緊張感で包まれていた。

 夜に”ひずみ”が発生する事は、これまで無かった。しかし、別の”ブルー空間”では起きたことがあるとも聞いている。

 だが、それなら何故、誰も感知出来ないのか。

 それとも、夜に起きると、感知が出来ないのか。

 

(どういう事――)


 そうセリカが思っていた所に、焦ったようにアンカが入ってきた。

 それはそうかもしれない。このような事態は、初めてなのだから。


「み、皆! はぁ!」

「アンカ! 何があったの? 何処で起きてるの!?」

「……あ! ……皆……やっぱり来ちゃったのね……」

「どういう事?」


 アンカの声色は焦っている。しかし、発言がどうも変である。


(やっぱり来ちゃった……?)


 セリカは、嫌な事が頭を過ぎった。しかし、あり得なくは無い、とも感じ取った。

 この、アンカなら――


「そ、その……い、今のサイレンなんだけれど……」

「…………まさか………………誤報、……とか言わないわよね?」

「……………………えーっと」

「……………………言わない……わよね……?」

「………………お掃除をね、していたんですけど…………」

「………………間違えて押したとか、……言わないわよね……?」

「……………………あ、え、う、そのー…………」


 間違いなかった。

 アンカは、たまに、大きなミスをする。天然で。

 それが今起きたのだ。

 起きたのは、”ひずみ”で無く、アンカの天然。


「ねぇ、アンカぁ? あれってぇ? とーっても大事な物よねぇ?」

「お、お掃除する暇が……この時間になっちゃいまして……」

「掃除ってダイジヨネェ!? デモサァ!? それをっ! このっ! お、オバカアンカぁぁぁぁぁああああああああ!!」



=================================



「ありましたね、それ……」

「本当にね……困った物よ、アンカのドジッっぷりには……」


 仕事の締めをしながら、ユウカとセリカが話をしていた。


「あれって、今どうなってるんですか?」

「三重に蓋をしてるわ。ま、今はもう、普段使われる事は無いでしょうね」

「使われないほうが、私は助かりますけど……」



==================================



「――ってな感じだったんだよねー」

「その後しばらく、アンカ室長は、セリカさんに怒られ続けていたよ……」

「「は、はぁ……」」


 ミランダさんと、チュンさんがその時の事を話してくれていた。

 私とメイちゃんは、その時に居なかったので、想像するしかないが、何故だか分かる気がする。


「サイレンより、セリカさんの方が、その日は煩かった気がする……」

「確かにねー。室長なんかさー、正座させられてなかったー?」

「してたな。させられてたな……」

「セリカっちがさー、ああなるとねー、一旦怒りが静まったと思ってもー、何度も来るんだよねー」

「ああ。そして突然叫び出す。鬼の顔でな」


 なるほど、と納得する。

 確かに前、怒っていた時はそんな感じだった。


「……あ、その、私もそのサイレンは聞いた事が無いんですけれど……」

「メイちゃんも、そうなの?」

「……うん」


 どうやら、メイちゃんはそのサイレン自体を知らないらしい。


「まーねー。今じゃさー、ほら、アリスちゃんとー、マイヤちゃんが夜間やってくれてるしー。その頃よりも人数も居るしー。だから使わないんだよねー」

「まぁ、私もあの音は好かん。鳴らない今は良いよ、本当」


 それを知っている、チュンさんと、ミランダさんと、プランさんはそれに頷く。


(それにしても、昔は大変だったんだなぁ……夜間もやってお昼もやって……)


「さて、ユウカは来られなかったなぁ」

「当座のセリカっちとー、なんか話してるぽいねー」


 チュンさんは立ち上がりながら言う。残念だが、今日はユウカさんは来れないようであった。それに、もう時間になる。


「じゃあ、掃除するか」

「「はい」」

「……ありゃ!? まずいよ、ソレ!」


 そして、けたたましい音が鳴った。


「え!? こ、これって……」

「おい! ミランダ!?」

「…………あー、やっちゃったー…………」

「み、ミランダさん……?」

「あー、うん。”ひずみ”じゃないよー? でも残念ー。しばらく激オコプンプンだねー、こりゃ……」


 カメラで室長室を覗いていたのだろうか。ミランダさんは成り行きを分かっているようである。

 アンカ室長が、またもやらかしたらしい。

 そして、その後、サイレンよりも恐ろしい声が聞こえていた。


「ちょっと! アンカぁ!? どうやったらっ! 三重の蓋を間違って開けるのよっ!! ねぇ! きいてんの! くぉらぁぁぁぁぁああ!」

「だ、だって突然、くしゃみが何回も……!」


 その日は、終日その声が聞こえていた日だった。



お読みいただきありがとうございます。



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