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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
69/135

【六日目】 夜間巡回業務


 掃除を終え、一旦部屋に戻る。ミランダさんと、セリカさんと、私は、そのまま、お風呂に向かう事になった。


 ご飯まで、時間はあるので、入ってしまおう、という事で。


 その間、私は、ミランダさんに、カメラの場所をちょくちょく聞いていた。


「あー、ここの通路ねー。ここはー、あそことー、こことー、それとー、そっちー。その先の、上もあるよー」


 そう、聞かされるのであるが。


(うん、ある。……それは分かる。……でも、多くて、やっぱり覚えきれない……)


 そして、脱衣所に入る。


「あのー、ここにも、あるんですか?」

「んー、ここはー、入り口と、あそこだけー」


 あそこ、と言われた先は、髪を乾かしていた場所。ならば、この脱衣場では、ほとんど見えていない、という事になる。

 それは、今、ミランダさんや私が居る、この場所も。


「そんでー、中は、一個も無いのー」


 そして、お風呂場には、一つも無い。お風呂場では、ミランダさんは、何も見えないのだ。

 ミランダさんを、よくよく見ていたら、その機械を、外してた。


 今まで、よく見ていなかった。それに、ミランダさんの髪に隠れて見え辛い。だが、確かに外している。

 雑に置かれてた、服の下に、それも置いていた。


「じゃ、お先」


 セリカさんは、今までで、誰よりも、一番早い。

 頭を、タオルで巻いている。綺麗な黒髪が、多分、その中で、渦巻きになっているのだろう。

 私は、ミランダさんを連れて、お風呂場へ入る。今まで、メイちゃんや、プランさんがそうしていた。

 だが、結構、自分で分かっているようで、掛け湯の桶も、場所も、大体この辺り、というのは、察しがついているようだった。


「あ、ミランダさん、ここから浴槽ですよ」

「んー、おっけー。っと、よっこらしょっと」


 セリカさんは既にオンセンに入って、のんびりしていた。

 そこに、エレナさん、メイちゃんもやって来る。


「あー! もう入られてるー」

「……あ、エレナさん、今は、飛び込んじゃ駄目ですよ」

「おー、来たねー」


 そして、更に、アンカ室長も来た。


「あら、セリカさんも。もう、今日は居たんですね」

「ええ、たまには良いわ」

「折角のオンセンなんですから、もっと、入ったらいいのに……」

「アンカは入りすぎ。ふやけるわよ?」


 そして、結局エレナさんは飛び込んだ。


 -バッシャーン-


「うっひゃー!」

「ちょ! エレナ! 飛び込まないでって、言ってるのに!」

「危ないわよ? エレナさん」

「……ああ。……言ったんですけれど……」

「賑やかだねー。んーんー」

「あ、あはははは……」


 皆で、オンセンに入る。

 欲を言えば、本当に、ここの皆で、全員で入りたい。


 そして、アンカ室長には、やはり、アヒルさんが居る。

 のんびりとオンセンに入っている時、私は、ふと疑問に思い、聞いてみた。


「あのー、ここの、このオンセンって、何処から来てるんですか?」

「んー、そういやー、そうだねー。セリカっちー?」

「ええ、実際は、分かってないのよねー」

「でも、ちゃんと、泉質も調べられてますから」

「そ。だから、そこは気にしなくて良いわ。でも、何処から、……か。大体の、想定はあるけれど」


 質問には、答えてもらえもらえなかった。

 まだ、そこは、確証があるのでは、無いのかもしれない。


「ま、アンカも何回も入ってても、何も無いし。泉質は確かにしっかり分かっているし。気持ち良いのも事実だし」

「ええ。ここでのんびりすると、疲れも薄くなって、また仕事が捗ります」

「んー、……それ分かるわー」

「……ん。……私もですー」


 確かに、気持ちが良いのは、事実だ。

 とても、気持ちが良くて、のんびりする。


 それから、皆でシャワー室に行き、脱衣所に戻って、髪を乾かす。この中で、髪の長い順は、ミランダさん、メイちゃん、それからセリカさん。

 この三人は、髪のお手入れも、大変である。


(…………そういえば、…………ここだと、……何処で、髪を切るんだろ?)


 そして、皆、一度部屋に戻り、食堂へ向かう。もう、そんな時間であった。

 昨日とは違い、今日は、晩御飯は、皆、揃った。晩御飯の挨拶の前に、アンカ室長が言ってくれた。


「皆さんに、お知らせがあります。アカリさん。彼女は、正式にここに配属になります」


「え? もう!?」

「……………………おめでと……」

「…………アカリちゃん」

「ふふ」


 それぞれが、それぞれの反応をする。

 もう、知っていた人。知らなくても、察していた人。歓迎してくれる人。驚く人。少し、心配そうに見てくれる人。


「正式には、今後、本部から、辞令が着ますので。それまでは、試験期間と同様の扱いになります。ただ、辞令もすぐに来るでしょうから。」

「ねー、しつちょー。巡回はー?」

「それは、まだ、ですね」

「そもそも、操縦の仕方を教えないと」

「ああ、アカリさん、確か、車の運転も知らないって」

「ああ、それね。私、考えがあるから、ちょっと待ってて」


 セリカさんが最後に、何か考えがある、と言う。


(へ? 考え? 何だろう……)


 だが、そもそも、聞いていた事から推測すると、兆候が起きないと、”ひずみ”は感じる事が出来ない。

 それが起きてから、ようやく巡回に行けるはず。


「ま、食事が冷めてしまうから、先に、食事にしましょう」

「あ、そうですね。では」


 セリカさんの、その言葉で、食事になった。


(今日の晩御飯は、……えーっと。………これは、………何でしょうか?)


「マーボー!」


 エレナさんが、叫んで食べている。


「いったーーー!」

「ほら、熱いから」


(お米に、お豆腐、……は分かる。……で、他のこれは、……お野菜?)


 一口食べて見る。


(……うん。美味しい。………………へ。………………え、……か、辛い!)


 そう思って、プランさんを見る。


(……………………ほとんど、お米)


 他のみんなは、辛い物は大丈夫なのか、好きなのか、エレナさんとリーゼさんは、お代わりしている。


(いや、いつもの事、……だけれど)


 そして、アリスさん。


「………………………………………………からい。……………………もぐもぐ」


 寝そうな顔で、ちょっと汗をかきながら、結局食べている。

 マイヤさんは、そこまで辛い物は得意じゃないのか、少なめ。

 プランさんは、もう、言わずもがな。


(て言うか、プランさん。……今日の、お食事当番、入ってるのに、…………何で、……苦手な辛い物に……)


食事が終わった、その後に、何人かに声をかけられた。


「じゃあ、改めて、よろしくね」

「よろしくねぇー!」

「あ、アカリちゃん……」



 リーゼさん、エレナさんが声をかけてくれ、メイちゃんも何か言いたげに、私の名前を呼ぶ。

 メイちゃんが、言いたい事は、なんとなく分かる。

 チュンさんは、何も言わないが、肩をポンポンと叩いてくれた。

 ユウカさんは視線だけ、少しこちらをみて頷いていた。

 夜間の二人、アリスさんとマイヤさんも、こちらをチラっとみて、少し笑っているようであった。

 そして、最後にセリカさんに言われる。


「じゃ、明日から、覚悟しておいてね」


 怖い台詞である。それは、本格的に業務をやるから、という事なのは分かった。いや、もしかしたら、他の意味も、含んでいたのかもしれない。

 だが、その後の言葉で、先の言葉が欠き消えてしまった。


「じゃあ、折角だし、後で、娯楽室へ行きましょうか」

「…………え?」

「おー、セリカっちー。やるかねー? あれ」


 ミランダさんが乗ってくる。


「あ、私も行きます! 次こそ!」


 リーゼさんも参加するようだ。


「じゃあ、折角だし、私達もどうですか?」

「あら、そうね。じゃあ、夜間の二人が出た後に」


 ユウカさんとアンカ室長まで、娯楽室に行くようだ。


「あー駄目ー。室長ー、セリカっちは今日はこっちー」

「私、どっちでも良いわよ?」

「じゃあ、後ほど」


 どうやら、これから、夜間の巡回組の、アリスさんと、マイヤさんが出発するので、アンカ室長と、プランさん、リーゼさんは、その補佐をしてから来るようだ。


 私はちょっと気になっていたので、駄目もとでアンカ室長に聞いてみる。


「あの、折角なので、見学できませんか? 夜間の……」

「あら。そう? そうですね。じゃあプランさん、折角ですし、見学してもらってください。……じゃあ、その後ですね」

「ありゃー? アカリちゃんー、ちゃーんと来てねー」


 ミランダさんに、念押しされる。


「あ、はい」


 そして、私はプランさんとリーゼさんと一緒に、食堂の整理を手伝い、その後、巡回艇準備室に向かった。


 一階は、これで三度目になるのか。だが、今後、私も行くようになるのかもしれない。それに、夜の二人が、どんな感じで、作業しているのか、私は全く知らない。そこに向かう途中に、リーゼさんに言われる。


「アカリさん、じゃあこれが終わったら、やりますよ! 負けませんよ!」


 プランさんはニコニコ、コクコクと笑っている。


「えーっと、夜、夜間の巡回は、これくらいに出発するんですか?」

「そうだねー。大体これくらいかなー。でも、夜間は、ちゃんと時間が決まってるわけじゃ、無いんだよね」

「そうなんですか?」


 コクコクとプランさんが頷いてくれる。


「夜間は、昼と違って、無い時も結構あるし、時間もまちまちなんだ」


 私は、一度部屋に戻って、急いでメモ帳を持って来ていた。

 それに、ふむふむ、と思いながら、今聞いた事を、書き込んでいく。


「これまでは、夜間は、アリスさんと、他に誰か、だったんだけど。もう、マイヤさんが決定したし」


 夜間は、昼夜が逆転してしまう。アリスさんを見ていると、よく分かる。そんな大変な業務に、マイヤさんは志願したという。


「何故、マイヤさんは、その夜間に、なりたいって言ったんでしょうか?」

「うーん、多分マイヤさんはアリスさんと仲も良いし、あと、夜間は、さっき言ったみたいに、無い事もあるから。慣れてしまうと、楽なのかも」


 リーゼさんも、理由までは、詳しくは聞いていない、という事だろう。

 だが、そうすると、今度はこの、リーゼさんと、プランさんの二人も、また大変なんじゃないかと思う。そして、アンカ室長もだ。

 それも聞いてみたが、二人は、意外にそうでないらしい。


「ほら、私達はさ、基本、巡回の出発と、帰着の時に居ればいいだけだからさ。それ以外の時間は結構あるんだよね。多分、一番大変なのは、アンカ室長だと思うよ」

「じゃあ、それ以外の時間は……?」

「うん、基本、巡回艇のメンテナンス。でも、毎日やってるけど、そんなにやる事もないし。まあ、改造できる所は、研究したりも、してるけど」


(ああ、そういえば、昨日、リーゼさんお風呂の途中で……。という事は、改造とか、前のブースターとか、あれは、義務でやっている訳では、無いと言う事なのかな……?)


 そして、プランさんが教えてくれた。


[だから、お昼のご飯とかは、時間を使えるの]


 なるほど、と納得する。

 つまりは、お昼の食事当番は、お手伝いは、無かったけれど、単純に、時間をかけてやっている、と言う事だ。だから、お手伝いは無かったんだ、と気が付く。

 そして、巡回艇準備室に着く。二人は、作業着をそのまま着て、夜間の巡回艇、と説明された船を、チェックし始めた。私は、それを、少し離れた所から、見学していた。


 そうすると、夜間の二人の、アリスさんと、マイヤさんがやって来た。


(アリスさん、大丈夫かな……?)


 今まで、ほぼ、ほとんど眠そうにしていたアリスさんだが、もう、この時間になると、もしくは、仕事になると、しっかりするのか、リーゼさんと話をし始めた。


「……メンテ。……どうです? ……ブースター、……こっちにも付きました?」

「うーん、夜間の巡回艇にはブースターは、まだ、ちょっと」

「……発進。……もう行けますか?」

「もう少し」

「アリス、きょうあ、あそこ、とおくないよ」

「……うん、でも、……ブースター、使ってみたい」


 そんな事を話しつつ、アリスさんと、マイヤさんの二人が、私のところへ来た。

 プランさんと、リーゼさんは、そのまま、チェックを続けている。


「……お疲れ。……アカリちゃん。……夜の巡回まで、もう見学するんだね……」

「あ、はい。折角なので」

「アカリさう、まじめあね。でも、よるあもう、あんまりないよ?」

「うん。……マイヤが、専属になったから……」

「でも、夜の巡回なんて、大変だね」


 こうして、この二人と、このような、まともに話するのは、初めてだと思う。アリスさんは、普段いつも眠そうで、マイヤさんも、私が来てからは、ずっと夜間業務だった。


「……ん、そうでもないよ?」

「うん、なれて、きたよ。なれえば、おひるより、らくかも」


 二人とも慣れてしまったようだ。それに、マイヤさん、今、慣れればお昼より楽かも、って。

 確かに、リーゼさんもそう言っていた。


「……でも、……ちょっと残念」

「え?」

「……ブースター、……使いたい」


(…………ああ、そっちですか)


「やかんの、ふねあねー、おひるのより、ちょっと、おそいの」

「あ、じゃあ、そんなにスピード出ないんですね」

「……そう。……ちょっと、遅い。……だから、……早く欲しい。……ブースター」


 夜間巡回用の巡回艇は、お昼のより、スピードが遅いらしい。そして、ブースターを使えば、早くなるようである。


(あれ? でも、夜間は基本、”ひずみ”は出ないんだっけ。という事は……)


「夜間って、もしかして、自分で、えーっと、車みたいに、操縦する事って、無いんですか?」

「……そう、無い。私、一回も、……やった事ない」

「あたしは、あるけど、ちょっと、にがて」


(それは、……ちょっと、羨ましいかも。……私も、出来るのかどうか、分からないし。あんまり、……自信、………………無い)


 マイヤさんは、最近、夜間専属になった。逆に言えば、それまでは、お昼もやってた事がある、という事だ。だから、そうなると、”ひずみ”の際の経験もあるようである。


(でも、じゃあ、アリスさんは、いつから、専属なんだろ……?)


「アリスさん、マイヤさん、準備できたよ!」


 リーゼさんが二人を呼ぶ。


「……あ、行かなきゃ」

「アカリさう、じゃあ、いってくうね」

「あ、はい、じゃあ、お気をつけてー」


 それから、二人は巡回艇に乗り込む。お昼の巡回艇とは、どこが一体違うのだろうか。


(あ、あれは、……そっか。光るんだ)


 見ると、巡回艇の上に、ライトが付いていて、チカチカと光っている。おそらく、私が、前の夜に見た光。あれは、これだったのだ、と気がつく。中もぼんやりと、青白く光っている。

 それから、足場があるところまでは、前に見学した、お昼の巡回艇と同じように、リーゼさんと、プランさんが補佐している。


 足場が無くなった、その先の向こう。そこは、前に聞いた、エンジンをあそこまではかけてはいけない、と聞いた場所。そこを、見てみる。

 夜は、そこの光も、よく分かる。それから、巡回艇の前の方にも、かなり強いライトが点く。こちらを向かれたりすると、とても眩しそうである。


 夜間巡回艇は、前を照らす為の、強いライト、上に、位置が分かるようになのか、点滅するライト。

透明な中もぼんやり光っている。そして、そのエンジンをかける場所まで、のろのろと進んだ後、あっという間に、その光は見えなくなった。


 アリスさんは、遅い、と言っていたが、私は、十分早い、と思った。

 リーゼさんと、プランさんと、それを見送ってから、一緒に、巡回艇準備室の中に戻る。


 巡回艇準備室を出る時、プランさんが、何かボタンを押して、その開いた、城の壁の所を閉めていた。

 上から、鉄であろうか、重そうなシャッターが閉じてきて、外への出口は完全に塞がった。


 そして、それから、娯楽室に向かう。

 途中で、気になった事を、リーゼさんに聞いた。


「あの、お二人は、何時くらいに、帰ってくるんですか?」

「うん。今日は、……と言うか明日だね。今回は、明日の朝の、4時……くらいかな?」

「え? じゃ、じゃあ、あの、あそこも閉めちゃいましたし。……誰が、お迎えするんですか?」

「それは大丈夫。あの巡回艇からなら、あそこは開けられるんだ。それに、夜間のだけには、帰着時の、オートサポート機能が搭載されてる」

「夜間のだけ、……ですか?」

「そうなんだよね。……全部に付けたいけど。……昼の巡回艇は、型が古いから。あ、でも今度、増産されてるのには、ちゃんと付いてるらしいよ。いや、それだけじゃなく、今作られているのには、発進時もオートサポートが、出来るようになるらしいんだ。ブースターも、あれなら問題なく付くし。それに、給水先の所も、換装が出来るって、聞いている! で、さらには、モニターも増える! サウサーからの、オートシフトエチが、早くなるらしい! そしてYJHSEにも、改良が入っている! 後は! サポートエンジンが、付く箇所があるのか? いや、付けてもらわないと!! メインエンジンが、小型化され、かつ速度も保ちつつ、エンジンも、これまでの物と違って、水圧式――――」

「………………あ、あのー、……………………ちょっと、……………………それ以上は……」


 途中から、リーゼさんの火が点きそうだったので、消し止めた。


(……うん、説明してくれるのは、……ありがたい、のだけれど。…………ヨク、ワカリマセン……)


「……あ、そう? あー、早く来ないかなー」


 リーゼさんは、その増産している、新型の巡回艇の事を、心待ちにしているようだ。


(……ああ、リーゼさん。……こういう事、…………本当に好きなんだ。…………あ…………ははは…………)


 そして、三人で、娯楽室に入ると、

 もう、人が居た。ミランダさん、セリカさん、ユウカさん、アンカ室長。

 

(あれ、メイちゃんと、チュンさん、あとエレナさんが居ない……)


「おおー、来た来たー。さー、じゃーアカリちゃんはこっちー」

「あら、ミランダさん。折角だし、こっちにも、入ってもらいたいわ?」

「えー? こっちが先だよー」

「でも、こちらも、多いほうが楽しいわ」


(み、ミランダさんとユウカさんが、……え? 私を、取り合い……?)


 リーゼさんは、ミランダさんの方へ、行った。

 そして、プランさんは、ユウカさんの方へ、行った。

 二組に、分かれた人達。


 ユウカさんや、アンカ室長、それと今、プランさんが行った先は、確か”ダーツ”と教えられた物。


(で、…………ミランダさんの方は、………………なんでしょうか?)


「えー? いいじゃんー。こっち、四人、居ないとー」

「でも、三人でも、それ、出来ますよね?」


 そして、どっちにする? と言う目で、見られた。


(え、えーっと、…………ど、どうしよう!?)


 私がどちらにするか、悩んでいた所に、ドアが開いてエレナさんが入って来た。


「あれぇー? どしたのー? …………はれ?」

「…………えーっと…………」


「あ! これなら4人、4人で綺麗に分かれるよー!」

「あ、エレナ、どっち入る?」


 ユウカさんが、今度はエレナさんに、どっちにするかと、視線を送る。

 エレナさんは、二人の方を交互に見てから、じゃあ、こっち、と、プランさん達のほう、ダーツの方へ行った。


「じゃー、アカリちゃんはーこっちー」


 そして、自動的に、私の方も決まったようだ。


「あら、じゃあアカリ。次は、こっちに入ってね」

「あ、はい。じゃあ、今度」

「まー、いきなし、そのメンバーの中に入っちゃうとー、きついっしょー」


そして、メンバーが決まったのは、良いのだが、私は、これが何か分からない。


 何か、ボタン、と思う物が、四個付いている物が、四台あり、画面が、二つ点いている。


「ねー、これさー、先にちょっと練習させたげてよー」

「ええ、チームは、……もう、これでいいかしら?」

「うんー、じゃー、私とー、アカリちゃんー。でー、そっちがー、セリカっちと、リーゼちゃんねー」

「ええっと、……これで、何をするんですか?」

「んー、簡単、簡単ー。ええっとー。ちょっと見ててー」


 どうやら、ミランダさんが先に、やって見せてくれるようだ。


「これー、これね。これがねー、落ちてきたらー、ここに来たときに、このボタンを押すのー。っと、こんな感じねー」


 画面の上から、マークのような、何かが、落ちてきている。


「それが、四つ分かれて、落ちてくるから」


 セリカさんが、補足説明してくれる。


「そー、ほら、これねー。で、そこのボタンをー、っと、タイミング良く押すのー。これだけー」


(ふむ、……これなら、分かるかも)


「じゃー、ちょっと練習ねー」

「私も、ちょっと、肩慣らしをしてますから」


 リーゼさんは、一人でやり始める。そして、私。


 (えーっと……あ、来た。えーっと、……これがここに、来た時に、……えい!)


「んー、そーそー。次、来るよー」

「ほら、次は、そこの右」


(え、えっと、あ、こっち。……えい!)


「そーそー。そんな感じー」

「その後、一番右が来るわ」

「えっと」


(……あ、これかな。……んー、えい!)


「うんーうんー。そーそー」

「じゃあ、一つ、やらせてみたら?」

「そだねー」


 そう言って、ミランダさんが何やら操作してくれる。


「んー、じゃあ最初だしー、これかねー」

「……えーっと?」

「ああ、さっきの感じでね、落ちてくるから。その要領で、押せば良いだけよ」


 セリカさんに、そう言われて、始めてみる。


(えーっと、……あ! 来た。これが、ここ! ……えい! ……え!? もう、次来てる! えっと、こ、こっち! あ! もう次! こ、これ! つ、次! えい!)


 落ちてくるマークのような物。それに合わせて、えい! えい! と押していく。セリカさんと、ミランダさんは、私がやっているのを見ていた。

 そして、少しすると、それは終わった。


「おー! 結構良いスコアーじゃんー」

「あら、これなら倒しがいがあるわね」

「こ、こういうゲーム、ですか?」

「そーそー。それをねー、二人ずつに分かれてー、点数を競うのねー。難しいのもあるけどねー。それだとー、チームでやっても、あんまり、面白くないんだよねー」

「そう。簡単な物ほど、そのタイミングで、スコアーも、大きく変わるし」

「ええっと、……難しい物って……?」

「んー、……今の感じのやつがねー。…………雨霰のように、落ちてくるんー」

「あれは、少し疲れるわ」


 セリカさんは、一応、出来なくは無い、という事なのか。


「じゃー早速ー、やっちゃおかー。リーゼちゃん、もー、いいー?」

「…………………………………………………………はっ! あ! はい!」


(あ…………熱中してた……………………?)


 そうして、そのゲームが始まった。


「あ! アカリちゃん! そっち!」

「あ! はい! えい!」

「リリーゼ! そっちよ!」

「了解! …………あ」

「あ! ちょ! こっち来た!」

「おー! そりゃー! なはははは!」

「わ! こっち!? えい!」


 どうやら、これは、上手く押せると、その次の人に、その分の、お返しが行くようだ。そして、それが、誰に行くか分からないので、順番、というわけでも無いようである。ただ、それを上手く返せると、自分のチームの点数に、なるようだった。


「えい!」

「おおー、良いじゃん、アカリちゃーん!」

「え!? こっち? また!? で! あ……」


 リーゼさんがミスをしたようである。けれど、ゲームは止まらない。


「あら! ほーら!」

「ってー、それ早い! え! ……あー、……って、次、アカリちゃん!」

「え? え? あ! えい!」

「って! あ! 何よ、それ!」


 私が無我夢中でやった物が、セリカさんの方に行ったようである。


「ナーイス! アッカリちゃーん!」


 と言っていた、ミランダさんに、次が既に行っていた。


「…………あ!」

「油断大敵ー。っぷ」


 セリカさんが勝ち誇った顔。そして、今、吹き出しましたね!


 ゲームのルールは簡単。やる事も簡単。だけれど、面白い。

 確かに、これだと多い人数の人の方が面白い。


「来た来た、……ほら! って! 何で、戻ってくるのよ!?」


 セリカさんは、自分でやった物が、自分に返ってきたようだった。

 これは、自分でやった物も、誰に行くのか分からない。そこらへんは、運のようである。

 だから、戦略的にやっても、それが、自分に返ってきてしまう事もある。

 反射神経が必要のようで、それでも、通常のタイミングは、そう難しくは無いので、勘で、次に誰に行くのか、と考えて、タイミングを好きに合わせる。

 そして、今度は、相手チームに行った、と思っても……。


「あ! アカリちゃん! それは取れんわー……」


 このような感じで、味方に行ったりする。


 そして、結局、最後には、私とミランダさんのチームが勝った。


「……き、……僅差、よ」


 ちょっと悔しそうなセリカさん。


「くっ。自分など、…………まだまだ」


 更に悔しそうなリーゼさん。


「にははー! 勝ったよーん! アカリちゃん、やるぅー!」


 ミランダさんは、心底、嬉しそう。私は、まだ勝ったという実感が無い。でも、面白かった。だが、残念ながら、これは4人でしか出来ないようである。


 そしてその頃には、ダーツのチームのほうも終わりそうだった。


「えいやぁー」


 そんな掛け声で、投げていた、エレナさん。


「え! ちょ! エレナ! なんで、それで、そこ行くのよ!」

「あら、……負けちゃいましたね」


 それを笑顔で見てみる、プランさん。

 あちらの方は、どうやら、それぞれで、順位があるようだった。一番が、プランさん。二番が、エレナさん。そして、三番がアンカ室長。


(…………ゆ、ユウカさん。………………ぐっすん)


 こちらの方が、先に終わっていたので、セリカさんもそれを見ながら言う。


「エレナって、……たまーに、…………恐ろしいスコア、出すのよね…………」


 だが、ならば、それをニコニコ、普通に超えている、プランさんは……?

 どうやらあちらも、終わったようである。そして、アンカ室長が言う。


「残念だわ。……あそこで、ミスしなければね。……でも、プランさんの壁は、高いわね……」

「うぅー、残念」

「…………何故、…………プラン主任は、…………………………あんなに正確に」


 リーゼさんは、呟いていた。


(…………やっぱり、…………プランさんって、…………超人、ですか?)


「はぁー、良い気晴らしになったわ」


 ユウカさんは、既にその事は気にしていない様子。ああやって、みんなで、競って、楽しんで遊ぶ事が、きっと大事なのだろう。それは私も、そう思える。

 楽しかった、と思える。それは、他の人と一緒に遊べたから。勝ち負けよりも、そちらのお陰で楽しく遊べた。

 そして、皆で、娯楽室を整理する。


 ただ、ここに居ない、二人がちょっと気になった。

 それは、エレナさんが教えてくれた。


「えっとねぇー。メイちゃんの、お部屋のカップ整理、チュンさんも、手伝ってるみたいだよー?」


 私も、カップを借りたままだ。少し、申し訳なく思うが、エレナさんがこう続ける。


「あっちは、あっちでー、楽しんでるしねぇー」


 ならば、また、今度、聞いてみよう、と考える。

 メイちゃんは、お掃除も、楽しい、と言っていた。私も、今度手伝いたい、と思った。


 その後、皆、それぞれ、またやる事をやるそうだ。

 アンカ室長と、ユウカさんは、お風呂。

 そして、エレナさんは、もう寝るからと、部屋へ帰るようだ。

 リーゼさんとプランさんは、少し、ミーティングをすると言っていた。

 ミランダさんも、部屋でやりたい事がある、と言っていた。



 私は、部屋に戻って来ていた。

 そして、私は私で、まだ、やる事がある。


 それは、このメモ帳。

 まだ、全然、終わっていない。


 私の事。

 それを書く。


 それは、誰かに伝える為では無い。

 いや、それもあるかもしれない。


 けれど、一番の目的は。

 自分の中で、整理する事。


 今、私が分かる事。

 それは、自分の事。


 これまでの自分の事。


 それを、少しずつ思い出しながら、私はメモ帳にそれを書いていく。


 それが、このメモ帳に書こうと思った事。


 今日はまだ、上手く整理出来ていなかった。

 やっぱり、まだ。



 まだまだ、先は長い、と考える。



お読みいただき、ありがとうございます。


本当に、先は、まだまだ長いです。

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