第四十九話 はるかの気配り
「柳沢さんも焼肉行くわよね」
収録の片付けの陣頭指揮を執っている柳沢にそうはるかが声を掛ける。
「え、今から機材の片付けをしないと」
「そんなの明日でいいじゃん」
はるかの無言の圧力に柳沢も嫌とは言えない。仕方なく
「分かりました」
柳沢は撮影スタッフに自身が焼肉に誘われているのを話して、自分が雀荘を出るまで作業をして、残ったのは明日片付けることに変更した。さすがに柳沢も店長不在で店内で片付け作業は出来ないから、はるかの誘いを引き受けても罪悪感は無かった。
「席の割り振りを決めなくちゃ」
はるかは嬉しそうにもう幹事をする気持ちで、焼肉の指揮を執る気でいた。
海野は突然のお誘いにあわてて準備をしていた。さすがに焼肉屋にタブレットを持って行く訳にはいかず、スマホでFXのトレードを出来るように準備をして、銀灰の狼こと柏木店長に為替相場の事を聞いて、自分も店長と同じポジションを取ろうと考えていた。
海野はメールで伝えられた焼肉屋に向かっていった。そして焼肉屋に入り店内を見渡した。
「あ、海野さんここよ」
既に全員揃っていて、焼肉を食べる準備をしていた。 海野がはるかに教えられて、はるかたちの居るお座敷まで来たら、はるかが笑顔で
「店長の横を開けておいたから」
と海野に言った。それを聞いて海野は顔を真っ赤にして
(この競艇女、狼様が誤解をしたらどうするのよ!)
はるかは海野が店長の事を好きだと思い、わざわざ店長の横に海野が座れるようにしておいたのだった。




