第四十話 赤牌の条件
沢野が第一打を切り、エリカが山に手を伸ばす。エリカはもう無様な負け方をして先輩方に怒られることをすっかり忘れていて、ただこの勝負を勝ちに行こうと考えていた。そしてはるかは何も変わらず自摸った後はいらない牌を切る。木下は東一局のように好牌から切って沢野をアシストしようとした。しかし沢野は鳴かなかった、というよりは鳴けなかった。鳴いても役が無いから鳴いて手を進められなかった。
沢野が鳴きを見せなかったからエリカとはるかはこれをチャンスととらえていた。ただエリカは鳴いて手を進めて沢野よりも早あがりをしようと考え、はるかは面前でツモあがりをして沢野との点差を縮めようと考えていた。エリカは沢野の切った牌を鳴こうとしたが泣ける牌では無かった。そしてエリカが切った牌をはるかは鳴こうとしなかった。
「松山選手は鳴いてきませんね」
「沢野選手の親番ですから、ここは安くても親を蹴るのが一番ですが、面前で仕上げて点差を縮めようとしているのでしょう」
「でも積み棒も有りますから、手牌のドラを生かす意味で鳴いてあがった方がいいですね」
「ドラといっても赤牌ですから、祝儀狙いで面前で行っているのかもしれません」
「え、この勝負祝儀有りですか?」
「それははるかちゃんがルールを決めますから僕に聞いてもわかりませんよ」
と店長は苦笑する。サバンナルールは赤牌は面前であがれば、祝儀として百円が貰えることになっていた。ただ今回はそういう条件は無かったが、はるかがいつルールを変えるか分からなかったので、店長はそう答えていた。




