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付与術師の領地経営記  作者: 八咫烏
第1章 僕と異世界と
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3、液化付与と幸せと

 最近、梅雨に入ったので、外で遊べなくなってしまった。財務係のフィナンス家には、たくさんの本があり、僕はたまに付与術の本を読ませてもらっていた。だから、今日は、そこで覚えたことを色々試すことにした。


 まずは石化付与から。本に、付与術は付与した後のイメージを持つことが重要だと書かれていた。前世では、毎日アニメでイメトレをしていたから、イメージするのは得意である。僕の部屋にあった花に付与することにした。


花を見る。集中する。石化した花をイメージする。そして、口に出す。


「『石化Lv1』を付与。」


その瞬間、さっきまで目の前で風に揺れていた花が、石でできた花の彫刻に変わった。花の彫刻は、本物の花を石化しただけなので、細かい所までよくできていた。これは、普通に芸術作品として良い値で売れそうだったので、将来の金策用に使えそうだった。




 次は、ちょうど喉が渇いたので、液化付与の実験である。台所からミカン(地球と名前が同じで、助かる)を持ってきて、果実液(この世界でのジュース)を作ることにした。皮をむいたミカンをコップの中に入れて、液化付与をする。


ミカンを見る。集中する。オレンジジュースをイメージする。そして、口に出す。


「『液化Lv1』を付与。」


ミカンが一瞬にして、液化してオレンジジュースになった。飲んでみると、果汁100%なだけあって美味しかった。この世界には、ミキサーがないので、どうしても果実液を作る時に搾りかすが出てしまう。しかし、これは材料を無駄なく使えるので、良い金づるに使えるはずである。




 今度は、ゴム化を試してみる。僕が今回覚えた中だと、これが一番面白そうだった。細長いものがないか、辺りを見回してみると、ちょうど毛糸の糸くずがあったので、これで試すことにした。


糸くずを見る。集中する。伸びているゴムをイメージする。そして、口に出す。


「『ゴム化Lv1』を付与。」


毛糸の糸くずの見た目は変わっていなかったが、両端を持って引っ張ると、前世のと同じくらいよく伸びた。この世界にも、ゴムの木があり、そこから天然ゴムが作れるらしい。しかし、品質はこっちの方が圧倒的に上なので、これも高値で売れる気がした。





 気付くと、もう夕方になっていて、母さんが僕を呼ぶ声が聞こえたので、夕食を食べることにした。母さんに椅子に座らせてもらい、目の前に座っている父さんを見ると、何やらいつもより元気が無い気がした。


 普通に聞いても、きっと僕に気を使って答えてくれないだろうから、前世で習ったある技を使うことにした。まずは「はい。」と簡単に答えられる問題を2個出して、「はい。」と言いやすくした状況で、本命の質問をして「はい。」と答えてもらう作戦である。


「父さん、外はまだ雨が降っているの?」


「そうだな、ざあざあ降りだよ。」


「疲れているの?」


「うん、色々あったからな。でも、まだ元気だぞ!」


「父さん、何があったか教えてくれない?」


「え...うん、...そうだな。毎年、この時期になると、大雨のせいで問題が発生しやすくなるんだよ。それで、今日は川向かいのモラリス領との橋が流されてね。」


「直すのに、お金がたくさんいるの?」


「そうなんだよ。ただでさえ、うちはお金が無いのに...。」


(うーん、どうしようか...。)


ここで、前世の知識を使って、父さんを助けるのは簡単なことだ。でも、さすがに1歳半の子供が言うと、いくら親バカな2人でも僕を怪しむだろう。1歳半でホームレスになるのは厳しいので、ここは子供らしくすることに決めた。


「父さん、元気出してよ。良いものあげるから。」


「ん、何をくれるんだ?」


「ちょっと待っててね。」




 台所に置いてあるミカンを取ってきて、皮をむいて、コップに入れ、さっきと同じように液化付与をした。これで、レオ特製オレンジジュースの出来上がりである。


「はい、父さん。これ飲んで。」


「お、ミカン果実液(この世界でのジュース)か。ありがとな、レオ。」


僕の作ったミカン果実液を飲んだ瞬間に、父さんの目の色が変わった。驚きと幸せが入り混じったような顔だった。


「何だ、これは!オルガッ(僕の母さん)、早く来てくれ!」


「あなた、どうしましたか?」


「早くこれを飲んでみろ!」


「そんなに焦らなくても飲みますよ。ゴクッ......あなた、これは一体どうしたんですか?まだあるなら、場所を教えてくださいな!」


「オルガも落ち着いたら、どうだ?レオの前だぞ。」


「そうですね。...それで?」


「これはレオが作ったものだよ。」


「えっ、レオがっ!」


「そうだよ、母さん。」


「どうやって作ったの?」


「うーん、秘密だよ。」


「そう。でも、私たちにまた作ってくれないかしら?」


「うん、良いよ。」


思ったより、僕のミカン果実液が好評で安心した。前世とは違って、誰かを笑顔にできて、僕は幸せだった。女神様、僕を転生させてくれてありがとう。




 ミカン果実液で、父さんの悩みの原因は解決しない。しかし、ホームレスになるのは困る。できるだけ子供っぽい案で、父さんを助けなくては。


「そういえば、父さん。大雨で橋が流れたんだよね?」


「そうだな。」


「良い事思いついたよ。橋の手すりの部分を無くせば、橋が流れないんじゃない?」


(前世で見た、四万十川の橋と同じに作れば、問題が起きない気が...。)


「手すりを無くす?大雨の時は良いかもしれないが、普通の時はどうする?人が川に落ちるんじゃないか?」


「そうだね。橋の手すりを取ったり付けたりできるようにして、普通の時は付けておけば良いんじゃない?」


「あ、確かに。明日の朝一番で、レオの言ったような橋ができるか、フィリップ(フィナンス家の主で財務係)に聞いてみるよ。」


「うん、上手くいくと良いね。」


「今日は色々と助かった、レオ。ありがとな。」


「気にしないで、父さん」

色々と付与術にも使い道があるようですね。レオはまだまだ躍進します。


まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあればアドバイスしていただけると助かります。

もし面白いなと思っていただけたなら、評価もお願いします。

今後とも八咫烏をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
一歳半がここまで流暢に喋っている時点で十分怪しいと思うが… もう既に包丁の付与は知られてるのに液化の付与を隠す必要あるか?
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