5/7
救いのない話
『死んだ君』
ある朝、君は死んでいた。
君の葬儀にきた人々が私に話しかけてくる。ある人は、死に別れた恋人同士が生まれ変わって運命的に巡り合った話を。またある人は、不慮の事故で亡くなった若者が別の世界で新たな人生を謳歌した話を。私の反応がないとわかると、人々は憐憫の情を持って私の体に触れ、元の居場所へ帰って行った。
君の墓を訪れた。花束を携えて。隣の墓では親子のようなふたりが笑って話をしていた。前は親友同士で、つい最近に片割れが生まれ変わり再会したそうだ。ふたりが去った後、私は、君の墓に飾った花を踏みつけようとした。できなかった。墓石の汚れを掃除して帰った。
君のいない家へと帰った。