表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界なんてクソくらえ  作者: 南都河埜
西の国の動乱
122/194

西の国の動乱の終息

寝すぎたので遅れました。

と言うか寝落ちする前に三行しかかけてなかったのは内緒



 イフナース前教皇が元西の国のエリアの統治を任された事は大体的に告知された。

 色々な反応はあったが、何で前教皇がそんな事を、と言う反応が王国貴族から出たのはある意味自然だったのかもしれない。

 教皇その人のプロフィールはそれほど詳しくは知られていない。

 何故かと言うと、イフナース前教皇の家が元々西から亡命してきて、ピレネーの血筋と結婚して王国に根付いた事はそれほど知られている事では無かったからだ。

 王国貴族からしてみたら、あの地はピレネーの分家辺りが統治すればいいと思っている。

 元々僻地扱いされている国なので、ノイベルトと繋がっていたピレネーの分家が責任をもって統治すべきだとハッキリ言う家もある。

 大歓迎だったのは勿論統治される側の元西の国の住人達だ。

 逆にアテが外れて心底困っているのはノイベルトの当主であるハーゲンだろう。

 意義を唱えるわけにも行かず、思い描いていた通りにもならず、なら自分がどうなるのかも知らず。

 教皇がその席から辞する事は事前に知られてはいたし、選挙の日がいつか周知されていたが、まさか新教皇が決まった矢先に前教皇が新領地の領主に就任だなんて思ってもみなかっただろう。

 ピレネーのフレデリク爺様にもノイベルトの扱いに関しては保留にして、西の街に留めておいてくれと伝えてあった。

 後日、全ての準備が整ってイフナース前教皇は西の古城にオイレンブルク一家を連れて行った。

 それを聞いてハーゲンはどう思っただろうか。

 傍観するしか無くなったテオはどう思っただろうか。


 西の地は正式にヴァンダム領となり、イフナース前教皇も正式にヴァンダム公爵家の当主となった。

 西の古城は旧西の国にとって重要な文化財に当たるらしいが、イフナース前教皇改めイフナース閣下が住むのならとヴァンダム領の理解も得られた。

 敬称に関しては悩んだが猊下とも呼べないし、以前爺様達を卿と呼んでいた事もあってそれでどうかとルーベルトの爺様に相談した所、自分達と同列に扱うなと怒られてしまい、閣下と言う敬称で落ち着いた。

 予定通りと言うには右往左往してしまったが、ヴァンダム領はイフナース閣下の存在もあって一瞬で前のような生活に戻った。

 これからの発展に関しては何も決まっていないが、とりあえず西の古城と王国中央から西にある一番王都に近い設置式の転移門を繋ぎ、少しずつ物資や補給人員を送る事になっている。

 爺様連中に言うと怒り狂いそうなので言わないが、俺としては発展の具合によっては独立の可能性も頭にあったりする。

 理由は色々あるが、西の地が隔離されたような場所なので、本腰入れて山脈に道を通さないと陸路での移動が大変だったり、ヴァンダム領の特産と言う物がそれほど無く、デニスが言っていたように王国にとって何の利益も無い土地だから――と言うわけでも無い。

 実際それらは課題としてあるが、違う国の人達と交流が持てればいいがそれも難しい土地なので、恐らく王国の一部と言うよりかは『イフナース前教皇の国』と言う考え方になって来てしまうと思うのだ。

 理由は前教皇の威光が強すぎて、彼を王のように扱ってしまう事が容易に考えられるからだ。

 個人的にはそれを悪い事だと思わないし、一応侵略では無いと言い訳が出来る形で収めようとはしたが、他の国が王国の領土を広がる事を良く思うわけも無い。

 王国は他の国に比べれば小さい。

 とは言え国がサウスルタンに続いて西の国まで得たとなれば、近隣の国は表向き黙っていても内心心穏やかじゃないはずだ。

 サウスルタンの時も復興が終えれば独立させると言う事になっているし、西の国もイフナース閣下の国として独立してしまってもいいと思っている。

 まぁ普通の国と言うよりかは宗教国家みたいになりそうだけど。


 魔法陣の部屋の調査もしたが、分離のような構成の魔法陣を発見してしまった。

 魔法陣になっているのは、発動から終了まで通常の魔法よりも時間が掛かり、魔力消費も非常に多いからだ。

 地脈の魔力を使って魔法陣を起動、対象に精神を移す。

 それだけの魔法だった。

 あの俺が会った狸親父は、誰かに狸親父の精神の一部を移して簡単な動きを出来るようにしただけで、姿形はシェイプチェンジで狸親父に見せていた可能性が出て来た。

 つまり別人だ。

 他にも何か変な魔法が無いか調べてはいるが、恐らく使われた魔法はそれだろうとの事だ。

 だが、狸親父はいいにしても、ライナーとか言うアークウィザードの代用はいないはずだ。

 仮にあれだけの転移門の魔法を使えるウィザードを影武者として使ったとしたら、無駄使い過ぎて頭が痛くなる。

 ――と思ったが、偽物の方も逃げ切るつもりだったのだろう。

 だからこそ、それだけのウィザードを使ったと考えれば辻褄が合う。

 恐らく最大距離飛ぼうとしていただろうに、落下地点が国境の山中だった事もそれで納得できてしまう。

 書庫にその分離のような構成の魔法陣の説明が書かれた本があったが、やはり分けた物は回収しなければならないらしい。

 回収出来なかった場合、自分の精神に空白が出来てしまい、場合によっては次第に精神の均等が保てなくなって病んでいく可能性があるようだ。

 デニスは狸親父が逃げるために万全を期したと言っていたが、ぶっちゃけ素直に高跳びするだけでよかったんじゃないかと思う。

 いや、考えようによってはだが、影武者を使って俺に嫌がらせをしたかっただけなのかもしれない。 

 とにかくこの件は本人が不在で解明が出来ないので、とりあえず見つかるまでは保留と言う事にした。


 これで西の国の件は終わり、と言うわけにも行かない。

 ヴァンダム領と言う形で成立はしたが、各式典やら行事でしばらく大忙しだ。

 まずは小領地の領主を集めて王国で調印式を行い、正式に王国に編入される事を了承してもらった。

 その後はヴァンダム領の古城の麓に街を再整備するためにインフラ工事を始め、各町から移住者を募る。

 移住者希望を募ってると話が出た途端、実にヴァンダム領の人口の八割が応募して来たらしい。

 そんなに住めるだけの土地を用意出来るわけも無く、抽選で選ぶことになってしまった。

 こうなると古城に籠ってるだけにも行かず、各地に顔見せに行く位はせざるを得なくなり、余計に支持を強める結果となった。

 移動がシャルの転移門の魔法任せだった事もあって、一週間で全て回り切ってしまった。

 そこまで終わってようやく一段落、と言う所でノイベルト一家を古城に呼んだ。


「さて、お主が呼ばれた理由が何かわかっているかな?」


 古城には昔ながらの大きな、謁見の間がある。

 そこの玉座に公爵家が式典等に使うマントを羽織ってイフナース閣下に座ってもらい、ノイベルト一家を通した形だ。

 ある程度離れているので見た目年齢の誤差に気づくかどうか微妙な所だが、考えてみたら敬虔な信徒ほど教皇が近寄ってきたら頭を下げる物だし、そこで手を握られたりしても顔を上げるなんて滅多に無いので、実は近くでハッキリと顔を見た人なんて殆どいないんじゃないだろうか。


「いえ、皆目見当も付きません」

「そうか」


 イフナース閣下はそう言うとため息をつく。


「此度の西の国動乱の件だ」


 そう言われると、ハーゲンはあからさまに顔色を変えた。

 結局の所、今回の騒ぎの発端はハーゲンが画策した事にある。

 付近の小領地を取り込んで領地の規模が一番になるからバウワーと戦闘になる、だから助けて欲しいと王国に頼って来た事。

 それ自体がどこまで本当だったのかは知らないが、実は王国にバウワーを倒してもらうのが目的だった事。

 その後の事は元々想定して決めていたのか、何パターンか想定しておいて様子を見て変えたのかは知らない。


「だが、私はそこまで悪く言うつもりも無いのだ。既に状況として詰んでいたと言ってもいい形で安定してしまった状勢に、一石を投じて波紋を立てるのは悪い事では無い。その方法が戦いだった事も仕方ない部分があると言えよう。王国を巻き込んだのも、西の国を統一した所で何も変わらないと考えての事だと容易に予想は出来る」


 そう言って視線をテオに向けた。


「テオと言ったか。其方がトモヤを巻き込もうとしたのがそもそもの間違いであったな。あのままトモヤが此度の件を知らなければ、ある程度流れに任せてスムーズに事が運んだだろうし、もしかしたら其方の父がここに座っていた未来もあっただろう」


 ハーゲンが忌々しそうにテオを睨んだ。

 そこには父と子の関係性は見えない。


「だがテオとて自分の身が大事だろう。転生者で知識があるだけに、そのままでは失敗の未来が見えていても不思議は無い。だからこそトモヤに遭遇してコンタクトを取っても仕方のない事だと思う」


 俺はイフナース閣下とノイベルト一家の中間地点の横で、シャルと共にその光景を見ていた。

 本来はシャルの姿では場違いだが、かと言って王女の姿でも場違いになってしまう。

 いるにしてもイフナース閣下の場所が正しい。

 だが、イフナース閣下としてもノイベルト一家にしても、シャルが俺の護衛を兼ねている事はわかっているだろう。


「よって今回の件については私の独断で不問としたい」

「――本当ですか?」


 そう言いながら俺をチラ見するハーゲンだが、イフナース閣下は頷く。


「其方等の処分については私に一任された。勿論爵位も無くただの平民としての再スタートだが、それに不満があるようなら騒乱の罪で一家まとめて処刑しなければならなくなる」

「……ありがたくお受けいたします」

「しかし、それでは手に職も無く生きて行くのも辛かろう。よって私の仕事の手伝いをしてもらおうと思っている」

「そのような温情まで、本当に問題無いのでしょうか」

「なに、元々その程度で片を付けるつもりだったのがそこに居る。そもそも亡命した時点で爵位もなにも無いのだ。後はこの地を発展させる為に人生を掛けて貰うだけでよい」

「……ありがとうございます」


 少々複雑な気持ちをにじませる表情だったが、現時点ではノイベルトの家にとって救いのある結末じゃないかと思う。

 俺としても元々爵位剥奪とイフナース閣下の下働きで始末をつけるつもりだったし、将来的にテオがどこかの貴族と結婚出来ないように手は打ってある。

 そこまでするのもやり過ぎかもと思いもしたが、この二人のせいで少数だが死者も出てるし、迷惑を被った人は山ほどいるだろう。


「ですが、一つお願いがあるのです」

「ふむ、聞くだけ聞こう」

「我が子を王都の学校に通わせてやりたいのです」

「この地にも同じような学校を作る予定だが、それでは駄目なのか?」

「ええ。と言うのも転生者と知り、親子の関係を維持するのが難しくなっております。これを機に一度離れて考えたいのです。王都の学校でしたら寮生活ですし、一部ですが小さな子も通っていると聞きます」

「ふーむ」


 とか言いながらこっちを見ないでくれ。


「寮に飽きはあるのですかな?」

「……今年度は入試のハードルを上げて貴族の数を減らしました。代わりに入れるはずだった平民の入学希望が少ないせいで部屋に余裕はあります」


 もっと平民から入学希望が出ると思っていたのに、貴族の学校として認知されてしまっているせいで希望者が少なかったのだ。

 それも年々改善していくとは思うけど。


「ではそうしよう。王都での保護者はピレネー公爵家の誰かに頼むとするかな」

「元々繋がっていた分家でいいでしょう。流石にピレネー卿にそれを頼むとなると、厄介を持ち込むなと言われます」

「それはフレデリクでは無く其方の気持ちでは?」

「ええ、まあ」

「ではそう言う事にしよう。テオから何かあるか?」

「いいえ、王都でこちらの世界の事を学ばせて頂きます」

「見た目は小さくても中身は大人なのだな。なるほど、転生者と言うのは過去何人か会った事があるが、その中でもしっかりしてるようだな」

「ありがとうございます」

「では以上だ。ハーゲンよ、とりあえずはデニスの下で仕事に励んでほしい」

「わ、わかりました……」


 一瞬ひきつった顔をしていたが、元々ほぼ同列だったデニスの下で働くと言う事がショックだったのだろうか。

 前教皇猊下の下で働けるのなら教徒ならば涙を流して喜ぶのかもしれないが、実際は同じ領主だったデニスにこき使われる。

 これは思いの外ダメージがありそうだ。

 ノイベルト一家は退出していき、俺は何か疲れたなと今回の件がようやく一通り終わった事に安堵していた。


「それとトモヤ、頼んでいたここの働き手なのだが……」

「順次送り込まれてきます。まだ向こうでも人選に手間取ってまして」


 王都の優秀な人材も、挙ってこちらに来たいと言い出している。

 どんだけ人望あんだよイフナース閣下。

 そんな人たちには新教皇である楓子がちょろっと持ち場に顔を出すだけで一転するので、それに惑わされない真のイフナース閣下ファンの中から選んでいるのだが、多少ふるいにかけた所で結構な人数だから時間が掛かっているのだ。

 とりあえず兵力はそれほどいらない。

 イフナース閣下に歯向かう人間がいるのなら、それは教徒では無いのでこの辺の人ではありえない。

 イフナース閣下を個人的に面倒見る侍女に関しては、どうせその方がいいだろうと四十前後の独身女性をヴァンダム領で集め、その中からある程度の審査をして仕事を覚えさせている最中だ。

 とりあえず王城の暇そうにしてた侍女二人を捕まえて送り込んでみたが、まだ碌に仕事も無いので暇で困っているらしい。

 まぁいずれこの古城は大勢の人で賑わう事だろう。

 嫌でもイフナース閣下の元に集まって来るはずだ。


「にしても、転生者と言うのは苦労するものなのだな」

「さぁ、俺は転生じゃなく転移の方なので何とも言えません。生きづらさはあるでしょうけど、こっちで産まれた方が生活しやすいんじゃないかとは思いますよ? 人種もこっちの人だから変に目立たないし」

「さっき言ったように私は何人か会っているのだが、元々信心深いわけでも無いらしく、それほどいい反応を貰えなかったのだよ。あれは地味にショックを受ける」

「俺と同じ国からの転生者ならそんなものでしょう。さ、俺達もそろそろ帰りますが、イフナース閣下はどうします? 王都とこっち」

「個人的に地下の書庫で本を読みたい。また近い内に」

「わかりました」


 シャルに合図して転移門を開いて貰った。

 俺達はイフナース閣下に頭を下げてその中に入る。

 出て来たリビングでは、ようやく西の動乱も終わったし暇だろうとベスターが遊びに来ていて、俺がいなかった事に腹を立てていた。

 それを適当に宥めつつ、マリーネが入れてくれたお茶を飲んで一息つく。

 終わった。

 聖地巡礼からこっち、忙しさもあったが精神的にしんどかった。

 頭に来て西の事は西で片付けろとバウワーを利用しようとしたら逆に利用されそうになるし、そのせいでノイベルトにとって都合のいいように進まざるを得なかったし、結局バウワーは逃がしたっぽいし。

 だがまぁバウワー一家と一部を除いて大きな被害は無かったと言っていい。

 戦闘があった以上死者は付き物だが、それにしても被害はかなり少なく抑えられただろう。

 後はテオの入学手続きか。

 ほっとこうかな。

 文句言って来るだろうな。

 あいつに関しては色々思う所もあるが、処分はイフナース閣下に一任してしまった事だし、俺からはもう何も言わない。

 絡んで来たら蹴っ飛ばすかもしれないけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ