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そんなことしてるうちに、道路の方が騒がしくなってきた。何匹かのゾンビ野郎が、物音に気づいて集まって来やがった。
丁度いい。オレは腕試しのつもりで、散弾銃を構えて引き金を引いた…。
おっと、安全装置を外すのを忘れてたから、最初は「スカ」しちまったけど、次は本気でブッ放したぜ。
…肩にガツンと反動が来たが、狙った奴に当たりゃしねぇ。鴨よりでっかい獲物なんだから、擦ったっていいだろうに、意外と難しいモンだな。
けど、奴等は、門の鉄ゲートに遮られて、なかなかこっちに入っちゃ来れねぇから、じっくり狙える時間は有るのよ。
オレはもう一回、よーく狙って引き金を引いた。
散弾が門の鉄板に当たって、すげぇ音がしやがったが、狙った奴の頭の天辺が吹っ飛んだ。
…でもよ、そんなことしてるうちに、野郎の仲間がどんどん集まって来やがったのよ。
アブねぇかも?。と思ったオレは、散弾銃の音に驚いて、玄関先に出て来た姉ちゃんと娘っ子に訳を話して脱出の用意をさせた。
囲まれねぇうちに逃げ出した方が良さそうだからな。
急いで姉ちゃん達をダンプの運転席に押し込んだんだが、ゾンビ野郎が二、三十匹も集まって来たモンで、簡単には脱出できそうも無くなっちまった。
仕方がねぇ。
「オレがユンボで奴等を牽制しながら、フェンス突き破って道路まで先導するから、姉ちゃんはダンプを運転しろ」って怒鳴ったんだが、当の姉ちゃんは「教習所以来、マニュアルの車に乗ったこと無ぇから無理だ」って駄々こねるのよ。
それで、オレは一発引っ叩いて「死にたくなけりゃ、やれ」って言ってから、ユンボに向かったのさ。出来なくったって、やらなきゃならない時もあるってモンだぜ。
ユンボのエンジンを余熱させながら、オレは散弾銃のタマを詰め替えたんだ。運転席は窓ガラスで囲まれてるから、中からはガラスが割れねぇ限り銃は使えねェだろう。
…先に発砲したら、割れた窓から、奴等に引き擦り出されるのがオチだからよ。
おっと、何匹かが鉄門を越えて来やがった。…用意はいいか、姉ちゃんよ。ついて来なけりゃ、いくらオレだってここでおさらばだぜ。
ゾンビ野郎が重機に跳びついてくるのと、ユンボのエンジンが掛かるのがほとんど同時だったな。
…オレは、何匹かのゾンビ野郎をユンボで引き摺りながら、ダンプの近くに移動したのよ。
前にも言ったが、このユンボは解体用のフォークグラップル仕様だから、カニの大鋏で奴等を挟み潰してやることも出来るんだ。
それで、姉ちゃん達が乗るダンプに群がってたゾンビ野郎を何匹か纏めて挟みこむと、胴体のところで上と下に別けてやった。
…けど、奴等はそんな事じゃ簡単にくたばらねぇ。
上半身だけでも這って動きやがるから、面倒でもその顔にキャタピラのスタンプを押しつけたのさ。
そうこうしてるうちに、敷地内に入り込んで来る奴らの数は更に増えて、いよいよヤバくなってきた。
オレは何匹かのゾンビをキャタピラで踏み潰しながら、フェンスの方にユンボを前進させた。庭木の障害物を避けながら進んで行くと、いつの間にか野郎が一匹、ユンボのエンジン部分に取り付いて居やがった。
ユンボのエンジンってのは、運転席のちょうど後ろ側に有るモンで、気がつかねぇうちに這い上がられたのさ。
それで、オレはアームを旋回させながら、ゾンビを振り落とそうとしたんだが、ユンボの中心に行くほど遠心力は弱いから、エンジンの上じゃ、簡単に落ちやしねぇのよ。
後ろの奴に気を取られてるうちに、更に何匹かに囲まれちまって、にっちもさっちも行かなくなっちまったが、こうなったら破れかぶれだ。
オレは旋回して、丁度後ろ向きになったユンボをバックさせながら、後ろのフェンスに体当たりさせた。
…衝撃で、ゾンビ野郎を叩き落とすのに成功したし、ついでにフェンスを半分ほどぶっ壊したから一石二鳥って言うモンだろ。
ユンボのフォークでフェンスの金網を引き千切って、ダンプが通れるぐらいに広げると、ホーンのスイッチを押して姉ちゃんに合図を送ったぜ。
…姉ちゃんも踏ん切り付けたらしい。ガクガクさせながらもダンプを発車させたから、それでオレもホッとして、そのまんま道路にユンボを進めたのさ。
けどよ。…ゾンビ野郎御一行様は、オレの到着を心待ちにしてたらしい。露地の道路の正面から、雁首並べてオレのユンボに迫って来やがったのよ。




