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嫌なモン見ちまったけど、ここで逃げたら男が捨たる。オレはユンボのギアをトップの三速に入れて思いっきり前進させた。
トップって言っても、時速は四キロぐらいしか出ねぇから、キャタピラの餌食になる奴は、そんなに多くは無かったな。
二~三匹は踏み潰したが、後の奴等はユンボの周りを取り囲んで、隙あらば這い上がろうとしやがるのよ。
この状況じゃ、止まったら負けだ…。それでオレは、ユンボを前進させながら、アームを左右に振って運転席に取り付かれねぇように注意したのよ。
解体仕様の強化アームが唸りを上げて、何匹かのゾンビ野郎を薙ぎ倒したが、そんなことぐらいじゃ奴等はへこたれネェ。
ダンプ運転する姉ちゃんも、半べそかきながら何とかユンボについて来たけど、ゾンビ野郎との団体行動になっちまって、オレが向こうに乗り移れねぇから、奴らに囲まれるばっかりだ。
そのうち、ユンボのアームの向こう側にハゲ頭のゾンビ野郎が一匹、這い上がってきやがった。
オレはアームを前後に振って、振り落とそうとしたんだが、野郎は馬鹿力があるらしく、そのアームにしがみ付いて、こっちに近づきいて来やがる。
オレも焦ったけど、運転席からじゃ、レンチでぶん殴れねぇから歯痒いモンさ。
そしたら、奴は運転席の右ウインドウに、真っ白い顔を押し付けながら、毛の無ぇ頭でヘッドバットを食らわしてきた。
窓ガラスが何時まで耐えるか判らねぇ。それに、奴の頭突きで頭の油だか血だか判らねぇモンが、強化ガラスに痕を残しやがるから、こっちも胸クソ悪くなってきた。
「チクショウめ」って、ユンボを左右に旋回させたんだが、アームが道路脇の生垣やブロック塀をぶっ壊しただけで、野郎は下に落ちやしねぇ。
そのうえ、奴の十数発のヘッドバットが効いたのか、強化ガラスにヒビが入って、いよいよ危なくなって来た。
オレはガラスが割れたら、すかさず散弾銃を使うつもりで、アームを操作しながら銃に手を伸ばしたのよ。
奴の渾身の一撃で、遂にガラスが割れて、ゾンビの汚ねぇ顔が運転席に飛び込んできやがった。
そいつがこっちを引きずり出す前に、オレは大きく開いたそいつの口に、散弾銃の銃口を突っ込んで、思いっきり引き金を引いてやった…。
おかしな体勢で、散弾銃を撃ったんで、手首や肘が痛くなっちまったが、野郎の頭の後ろが、きれいさっぱり無くなって、チョッとだけ残ってた奴の後頭部の髪の毛も吹っ飛んだから、これでさっぱりスキンヘッドになっちまった。
スキンヘッド野郎は運転席の割れたサイドウインドウに首だけ突っ込んで、宙づりの姿勢で動きを止めたから、オレはレンチを使ってそいつを押しながら下に落っことして更にユンボを前進させた。
そんなことしてるうちに、ユンボとダンプはゾンビ野郎御一行様を引き連れて、大通りに進出したのよ。
…片側二車線あるから、ダンプが追いついてこられるってモンだろ。
オレは、ユンボで追い越し車線を走りながら、向こうのダンプに飛び移るつもりで、レンチをつっかえ棒にフットペダルを走行状態に固定した。
割れた窓から首を出して、ダンプの姉ちゃんにユンボの側に来るように合図を送ったんだが、ゾンビ野郎が間に居るんで簡単には近づいちゃ来れねぇ。
それでもオレがやろうとしていることは、姉ちゃんにも判ったみてぇで、そのうちダンプがグイッと加速して近づいてきた。
何匹かのゾンビ野郎が、ダンプのタイヤの餌食になったのはいいが、姉ちゃんは…、よっぽど怖ぇえんだろう、引きつった目付きの形相でこっちを睨んでやがる。
オレは割れたサイドのガラス窓をくぐって、ユンボのボディの上に移ると、ゾンビ野郎に気をつけながら反対側に回って飛び移る用意をしたのよ。
ダンプが、何匹かのゾンビを振り落としながら近づいてきた。…ちょっとでもタイミングを誤れば、下に落っこちてタイヤの餌食か、奴らの腹の中だ。
オレは必死の覚悟でユンボの上から、ダンプの運転席に取り付けられてる荷台点検用の梯子にジャンプした。




