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オヤジ  作者: 矢島大佐
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 流石のゾンビ野郎も、タイヤローラーの巨体にゃ太刀打ち出来ねぇから、颯爽と走り出したオレ達は、向かうところ敵無って感じだぜ。

 中島の野郎は、余裕綽々で、車体の上からゾンビどもの観察を始めやがった。

 近くに女子大でもあるらしい。「もったいねぇ。…若い娘のゾンビが、大量に居るぜ」とか言ってやがったが、こっちはいちいち見ちゃいられねぇ。

 タイヤローラーの前に来る奴は、男でも女でも構やしねぇから、ズンズン轢き潰してやったのよ。

 それからオレは、先を行く都バスを見失なわねぇように、アクセルべた踏みで先行する都バスを追い掛けた。ローラー車はでっかくて、小回りが効かねぇから、露地を走り回ると道路の端に駐車中の乗用車なんかにぶつけちまうんだ。

 まぁ、車や建物をぶっ壊したって、文句を言う奴は居ねぇけど、バランス崩してひっくり返ったら、こっちがタダじゃ済まねぇから、ぶつかる角度だけは注意したぜ。

 そんなことを気にしながら、首都高の高架をくぐって外苑通りを下っていくと、それらしい建物が見えてきた。

 都バスに乗ってる姉ちゃんが、後部の窓ガラス越しに、手真似でその場所を指差してる。

 どうやらここが、偉い学者先生の居場所ってことらしい。

 バスの奴等は、そのまんまスピード上げて、行っちまったが、これから先は、オレ様の踏ん張りどころよ。

 それでオレは、閉じた医科学研究所の鉄門に向けて、タイヤローラーを突っ込ませた。

 …どこもそうだろうが、T大の研究所ってのも病院が併設されてて、看護婦や入院患者も多いのよ。

 鉄門の向こうにゃ、看護婦の服を着たゾンビ女が何匹か見えたが、ローラー車の体当たりで吹き飛んだ鉄門に押しつぶされた上に、オレ達の乗った十五トンの車両に伸されたから、細切れミンチになっちまったろう。

 研究所の木立を抜ける歩道は、タイヤローラーの車幅一杯だったが、オレは構わず強引にローラー車を進めながら、向かってくるパジャマ姿の患者ゾンビや、医者らしい白衣ゾンビを踏み潰して行ったんだ。

 …だけどよ。タイヤローラーの物音が敷地内に響き渡ったから、あっちこっちからゾンビの群れが集まって来ちまった。

 中島メガネ猿が、自動小銃の最後のマガジンでそいつ等に応戦し始めたけど、奴は学習機能が無ぇから、セレクターレバーはフルオートのまんまだぜ。

 あっという間に全弾撃ち尽くして、終いにゃ空の小銃の銃床で、ゾンビ野郎の頭をぶん殴り始めやがった。

 オレの方は、小回りの効かねぇタイヤローラーのハンドルを、左右に振り回して、車体に取り付かれねぇようにしながら、それでも車体にへばり付こうとしやがるゾンビ野郎を、片手の日本刀で叩き落とすのが精一杯よ。

 昨日の無線の状況じゃ学者先生は、ここのどこかに閉じ籠もってるみてぇだから、この騒ぎを聞きつけて、救出し易いところまで出て来てくれると助かるんだが…。

 ゾンビの群を引き連れて、医科学研究所の構内を進んでいくと、正面に格式のあるレンガ造りの建物が見えてきた。

 オレは学者先生の所在を確かめようと、その建物にハンドルを向けたのよ。…だけど建物の正面玄関からゾロゾロとゾンビ野郎が出て来やがったから、止まって待ってる訳にも行かねぇぜ。

 それでオレは、車寄せになってる玄関前の植え込みを、タイヤローラーで周回しながら、押し寄せてくるゾンビ野郎を、ミックスジュースに変えてやったのよ。

 車寄せの通路を十周もすると、正面から来る奴の数は減ったけど、そこら中に散らばったゾンビの血糊や破片で、タイヤが滑るようになってきた。

 オレと中島は、車体の横を狙って襲ってくるゾンビ野郎を、日本刀や小銃で叩き落としながら、更にミックスジュースの製造に励んだんだが、流石に二十周もすると、こっちの目も回ってきた。

 ふらつく体で車体の安全バーに掴まりながら、中島の奴は力なく自動小銃を振り回してたが、遂に「ゲロ吐きそうだ…」って()を上げやがった。

 それでオレも、周回軌道を離れて、ゾンビの少なそうな東の奥の方に、ハンドルを切ったのよ。

 いろんな建物があって、学者先生がどこに隠れて居るんだか判からねぇ。

 ゾンビ野郎に見つかったって構わねぇから、ローラー車のホーンのスイッチを連打して、オレ達が来たことを知らせてやった。


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