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午後の西日に照らされた、茶色の建物の二階の窓から、ブラインド越しに、こっちを覗く人影が見えたのはその時よ。
…最初は、ゾンビ野郎かとも思ったんだが、ゾンビにしちゃウロウロ動きはしねぇし、伺うようにオレ達を見てやがる。
オレはタイヤローラーを建物に近づけると、「学者先生かぁ」って、でっかい声で呼んだんだ。
その人影が、軽く頷いたように見えたんで、助けに来たことと、早く脱出の準備をするように伝えたのよ。
後ろから迫って来るゾンビ野郎の呻き声にかき消されて、よく聞こえなかったが、先生の話じゃ、建物の中に野郎どもが五、六匹居るモンで簡単に出ちゃ来れねぇみてぇだ。
だからオレは、タイヤローラーを建物の玄関口の階段に乗り付けると、ギアをニュートラルに切り替えるが早いか、片手に日本刀、もう一方に散弾銃をひっ掴んで、車体の上から飛び降りたのよ。
中島の奴が、焦ったようにオレを見やがったが、「帰ってくるまで逃げるんじゃねぇぞ」って怒鳴りつけると、玄関のガラスドアを蹴り開けて建物の中に飛び込んだ。
…正面から背広着たプロパー風情の兄ちゃんゾンビが走って来やがった。…そいつは土方の作業で鍛えたオレが、力一杯振り回す、日本刀の一振りで首と胴体生き別れよ。
頭をストンと落っことしたまんま、胴体だけで何歩か走って来るモンで、足払い掛けてすっ転がしてやったのよ。
更に廊下を進んで次に出会ったのが、白衣の若い医者風ゾンビの二人組だ。
其奴等が目の前に来るまでに、散弾銃の二連射で二匹の頭蓋骨を吹っ飛ばしてやったんだが、お手々繋ぐように、仲良く重なってぶっ倒れたから、生きてた時はホモ達だったのかも知れねぇな。
オレが、ぶっ放した散弾銃の物音に気が付いて、奥の部屋から、更に二匹のゾンビが飛び出して来やがった。
波状攻撃の第三陣は、おばんと、若い姉ちゃんの看護婦ゾンビだったぜ…。
裂けた血まみれのナース服から、片一方の乳房が見えてたんで、思わずそっちに目が行っちまったが、そいつは「おばん」のゾンビの方だったから、容赦なく日本刀を横に振って、其奴の首の辺りに致命傷を与えてやった。
首の皮一枚で、かろうじて繋がってた「おばんゾンビ」の頭部は、後ろから来た「姉ちゃんゾンビ」がぶつかった拍子に、血も吹き出さずに、肩から腕をスーッと滑って転がり落ちた。
オレは、返す刀で姉ちゃんナースのゾンビ女に一太刀浴びせてやったのよ…。しまった。頸椎を狙ったつもりが、手元が狂っちまって、刀の刃が、そいつの耳の辺りに入っちまった。
いくらオレだって、頭蓋骨じゃ、そう簡単に真っ二つには出来ねぇぜ。
食い込んだ日本刀を、頭から生やしたまんま、姉ちゃんナースのゾンビがオレに跳びかかって来やがった。
手持ちの散弾銃は空薬莢だから反撃出来やしねぇ。体を捻ってゾンビ女を必死で避けるのが精一杯よ…。
ギリギリのところでゾンビ女の攻撃を避けていると、ズボンのポケットの重たい感触に気が付いた。
…武藤の旦那の顔を思い出したオレは、咄嗟にポケットから拳銃を掴み出す。
そいつは、死んじまった旦那が、「オレにでも使えるから持ってろ」って言ってたトカレフよ。
オレは無我夢中で、そいつの引き金を引いたぜ…。
オレの手の中で震えたトカレフは、狙った訳じゃねぇが、女の腹の辺りに命中して、幾らかの内臓の破片と一緒に、姉ちゃんナースを吹き飛ばすことに成功したのよ。
でもな、…ゾンビってのは、そんなことじゃ、くたばりゃしねぇ。
口から泡吹いて、立ち上がろうとしやがるから、掴まれねぇ程度に近づくと、後頭部のナースキャップを狙って、トカレフの銃口を向けてやった。
…衝撃で目ん玉が飛び出した姉ちゃんナースの脇を走り抜けながら、日本刀を取り戻したオレは、二階に続く階段を駈け上って行ったのよ。
学者先生が立て籠もってる建物ってのは、古びた病院みてぇな作りだった。リノリウムの床にゃ、医療用の器材やら、書類の紙が、そこら中に散らばって、戦争でも遭ったみてぇだぜ。
オレは階段の踊り場で、散弾銃のタマを交換しながら、二階の様子を伺ったんだ。どうやらもう、ゾンビの野郎は居ねぇみてぇだ。
それでオレは、片手に日本刀、もう一方に散弾銃を構えながら、抜き足、差し足で階段を昇ったのよ。
二階の階段を登り切ったところで、廊下の先を見たら、チクショウ!。もう一匹居やがった。




