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オヤジ  作者: 矢島大佐
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 表の方で鳴り出した小銃の連射音は、中島の奴に違いねぇ。

 オレは、銃砲店の二階の物音を気にしながら、武藤の旦那に「逃げようぜ」って言ったのよ。

 振り向いた旦那は、オレに散弾やライフルの弾が詰まったバックを放り投げながら、「こいつも持ってけ」って言うと、さっき自分が手に入れたベレッタの散弾銃まで渡しやがった。

 それから奴は、金庫の中のバラ弾を迷彩服のポケットの押し込むと、店主が口ん中にくわえたまんまの散弾銃を、(うやうや)しく取り上げたのよ。

 そん時、二階の階段をバタバタ言わせながら、ゾンビ野郎が現れやがった。

 オレは咄嗟に、散弾銃の引き金を引き絞ったんだが、日頃の訓練の賜物か、武藤の旦那の方がオレより早く撃ちやがった。

 ジーパンを履いてたそのゾンビ野郎は、至近距離から二発の散弾を受けたモンで、アゴから上が綺麗サッパリ無くなっちまって、男だか女だか判りゃしねぇんだ。

 …けど、じっくり観察してる暇も無ぇ。

 オレ達は、床に散らばった店の商品を蹴っ飛ばしながら、出口の方に急いだのよ。

 武藤の旦那は慣れたモンで、走りながら散弾銃の銃身を折って、空薬莢を交換していたが、よく見ると、左手の指の間に二発の散弾を挟み込んで一動作で装填してやる。

 やっぱり専門職は違うよなぁ。

 オレは、そんなことを感心しながらも、銃砲店のシャッターを潜り出たのよ。

 !

 引き攣った表情で八九式小銃をフルオートでぶっ放す中島メガネ猿の気持ちが、オレにも判ったぜ。

 …今まで見たことも無ぇほどの、ゾンビ野郎の大群が、バスのちょっと先まで、ザワザワと押し寄せて来てやがったのよ。

 一足先に運転席に収まった小松の野郎が、バスのエンジンを始動させたけど、行く先の道を塞がれてたんじゃ、動くに動けねぇ。

 その時、武藤の旦那がオレと中島を突き飛ばすように、バスの昇降口に押し込みやがったのよ。

 散弾銃を持った武藤が、外側から力一杯バスのドアを閉めたんで、オレは「どうするつもりだ」って怒鳴ったのよ…。

 ゾンビ野郎のうめき声にかき消されて、奴の声は聞こえなかったが、「あばよ」って言ったように聞こえたっけ…。

 …それから武藤の旦那は、散弾銃を連射しながら、ゾンビ野郎の大群に向かって行きやがった。

 そりゃぁ、いくら自衛隊の本職だからって、オレたちを助けるために犠牲になることは無ぇだろう。

 けど、旦那のおかげでゾンビ野郎の中心は、バスの前から大通りの方に移動してったのは事実だぜ。

 蚊の大群みてぇに押し寄せてくるゾンビ野郎に組み付かれて、血まみれになった旦那は、最後に隠し球を懐から取り出した。

 安全ピンを引き抜くとき、こっちに向かって「ニヤッ」と笑ったみてぇだったけど、その後すぐに、すげぇ爆発が起こったモンで頭ん中が真っ白になっちまった。

 気がついたときは、姉ちゃん達の悲鳴がバスん中に響き渡って、中島の野郎は泣き出す始末よ。

 …だけど、オレ達がボッとしてちゃ、旦那がせっかく作ってくれた脱出路だって、そのうちゾンビに埋め尽くされちまう。

 手榴弾の爆発でバスのフロントガラスから先は、ゾンビ野郎の破片だらけだったが、オレは運転席の小松の背中を叩いた。

 フルアクセルで奴らの破片の上を通過するとき、片隅に迷彩服の柄が目についた。

 胴体だけのそいつに向かって、オレは「バカ野郎め」って言ってやったんだ。鼻の奥がツンとして来やがって、震える声を隠すのに苦労したぜ。

 それでもバスが進むと、手榴弾の爆発でも死にきれて無ぇゾンビ野郎が何匹か、車体にしがみつくように体当たりをして来やがった。

 …だけど、スピードの乗ったバスにゃ、そんな奴らも敵わねぇ。ゾンビの突撃を弾き飛ばしながら、バスは大通りに脱出した。

 そこまで来れば死人野郎の突撃も減ってくる。オレはどうにか追撃を振り切ったと思える頃、バスを運転する小松に「品川の方へ向かうよう」伝えたのよ。


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