表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オヤジ  作者: 矢島大佐
25/30

25

 それからオレは、バスの床に座り込んだまま、泣きじゃくりながら武藤の名前を叫び続ける中島メガネ猿を殴りつけて、「しっかりしろ」って怒鳴ったのよ。

 頼り無ぇが、こんな奴でもオレよりゃ射撃の腕は上だろう。

 姉ちゃん達に持たせたライフル銃を無言で中島に押し付けると、バックの中からライフルの銃弾を取り出した。

 武藤の旦那が残してくれた二丁のライフル銃は、サコーって会社の猟銃らしい。

 中島は、胡桃の木目模様が渋く反射する猟銃を操作しながら、「ボトルアクションじゃ、連射も出来ねぇ」って愚痴ってやがった。

 さっきの銃撃戦で、中島が持ってる八九式小銃の残弾もタマ切れに近いだろうが、自衛隊の自動小銃に使える弾なんて、日本の銃砲店には売ってやしねぇんだ。

 死人の街を進むバスは、小松の運転で青山の外苑西通りに沿った裏道を抜けてきた、ハイカラな町並みに、汚ねぇツラしてフラフラ歩く、ゾンビ野郎のミスマッチが何とも言えず虚しいのよ。

 この街に生き残ってる奴が居るとしたって、表に出た途端に、奴らの大群に囲まれるんじゃ、隠れ潜んで助けを待つか、絶望して自殺するぐらいしか残された道は無ぇだろう。

 そんなことを考えながら、ビル街の上の方を見上げると、確かに生き残ってる奴も居るらしい。

 大通りの奥に見える高層マンションの屋上に、「誰か居る」って娘っ子が叫んでる。オレには見えなかったけど、どうやら噛まれて無ぇ人間が残ってるらしい。

 行って助けてやりてぇのは山々なんだが、こっちの頭数も少ねぇ上に、通りの向こうには、ゾンビ野郎の群が見えてたから、無理ってモンだろう。

 とにかく、出来るだけ早く学者先生を救出して、この腐れゾンビ病を退治できるように研究して貰うのが先決よ。

 それでオレは、小松に奴に先を急ぐように言ったのよ。

 武藤の旦那の犠牲で、新宿の銃砲店を後にできたんだが、彼奴の死に様を見ちまったオレ達は、お通夜の席の帰り道よ。

 黙ってて、誰も喋りゃしねぇんだが、それでもバスは進んでく…。

 小松の野郎は道路の状況を、よく知ってやがるから、なるたけ人通りの少なそうな裏道を選んで走ったんだが、それでもバスに体当たりしてくる、ゾンビ野郎の衝撃が気になって、乗ってる方も神経が参っちまいそうなのよ。

 まぁ、オレ達が進んでいく裏道にゃ、バスを止められる程のゾンビの大群は居なかったから、その点は救いだったけどな。

 そんな、こんなで、ゾンビの特攻攻撃を受けながら、しばらく進むと、左手に青山霊園が見えてきた。

 学者先生が立て籠もってるはずの、「T大の医科学研究所は、この先だ」って小松の奴が教えてくれたのよ。

 救出の作戦でも考えなきゃいねけぇんだが、ちっとも良い考えが浮かばねぇ。

 ボーッとしてるうちに、バスは明治通りとの交差点に差し掛かった。

 電気や電話の共同溝の工事でもやってるのか、車線が規制されてて、オレの馴染みの建設機械が、あっちこっちに置いてある。

 普段だったら、交通渋滞の根源だって、一般車両に目の敵にされるところだが、誰も居ねぇ道路の上に、オレの専売特許の建設機械が置いてあるんじゃ、使わねぇ手は無ぇだろう。

 それでオレは、運転手の小松にゆっくり走って貰うように頼んだのよ。

 どうやら、舗装の補修工事でもやるつもりだったらしい。

 アスファルトを敷くフィニッシャーや、路面を均すタイヤローラがカラーコーンの向こう側に置いてある。

 普通、街中の道路舗装工事ってのは、夜中にやるモンだから、機械を運搬してきて、これから仕事を、おっ始めようと思ったら、作業員みんなゾンビに早変わりしちまったんだろうな。

 それが証拠に、ヘルメット被った作業服姿のゾンビ野郎が、オレ達のバスに近寄ってき来やがったから、細めに開けたバスの窓から散弾銃を突き出して、ヘルメット野郎の鼻の下を狙い撃ちしてやったのよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ