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オヤジ  作者: 矢島大佐
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 「地獄へ堕ちろ。ベイビィ」って怒鳴ってから、下のゾンビ野郎を目掛けて、火の点いたタバコを放り投げてやったのよ…。

 けど…残念ながら、映画みてぇに、簡単には燃えねぇんだな。

 仕方が無ぇから、タンクローリーの放出バルブの辺りを狙って、散弾銃の引き金を引いた。

 今度は効いたぜ。…いや、効き過ぎちまって、一瞬で火の海よ。

 …熱いの何のって、オレの眉毛までチリチリ言い出しやがるから、慌てて身を屈めたんだが、チラッと下を見たら、人の形をした炎が、狂ったように踊ってた。

 それから、あっという間に、炎が広がって駐車場と、その前の昭和通り一帯は火炎地獄って感じになっちまった。ゴム製品が焼ける嫌な臭いや目を刺激する有毒な煙も漂ってきた。

 真っ黒い煙で、噎せ返っちまったオレは、手近の窓から建物の中に入り込もうとしたんだが、その窓は、ちっと高い位置にあって、飛び付いたって届きゃしねぇんだ。

 オレも焦っちまったけど、こんなところでお終いにする訳には行かねぇだろ。

 それで、交通安全の横断幕を張るため、建物の壁に埋め込まれてる鉄パイプを足掛かりに、必死こいて二階の窓に登ったのよ。

 腰のベルトに挟んだナタで、窓ガラスをぶち割って、立ち昇る炎に尻を煽られながらも、何とか建物の中に逃げ込むことが出来たって訳さ…。

 もうチッと遅かったら、燃料に引火したパトカーの爆発に巻き込まれて危なかったかもな…。

 それでも、ゆっくりしてる訳には行かねぇのが辛いところ…。

 部屋ン中を確認しながら、散弾銃の弾を詰め替えると、出入り口らしいドアに向かって走ったのよ。

 開けたドアの向こう側には、残念ながらゾンビ野郎が一匹居やがった。

 オレは、突っ掛かって来たそのゾンビ野郎の眉間に、銃口を押しつけるようにして、散弾銃の引き金を引いてやった。

 「玉屋~」って感じで、花火が上がって野郎は後ろに吹っ飛んだんだが、よく見たらそいつは警察官の制服を着ていやがったのよ…。

 ヒョッとして?。と思って、気持ち悪かったんだが、そいつの制服の下を探ったら、ホルスターに納められた拳銃が見つかった。…ラッキーじゃねぇか。

 オレはナタを使って、そのニューナンブって拳銃のグリップに繋がってる盗難防止のヒモをぶった切ってから、そのリボルバーをジャンパーのポケットに押し込んだのよ。

 …そりゃぁ、撃ち方なんか知らねぇけど、この状況じゃ、武器は有った方が良いに決まってるからな。

 それから、階段使って三階に上がったんだが、ホールの先にゾンビ野郎が五、六匹、屯ってやがった。

 どうやらその先にビッシリと積まれてる、机や椅子のバリケードが、人間とゾンビの境界線みてぇだ。

 オレは、奴等が振り向く前に散弾をぶっ放したんだが、さっきの「お巡りゾンビ」に一発お見舞いしちまったから、上下二連の散弾銃じゃ弾切れってことだろう。

 畜生…まどろっこしくてしょうがねぇ。

 散弾銃のバレルを折って空の薬莢を排出すると、素早く次の弾を込めようとしたんだが…、目の前の奴等がこっちに迫って来るモンで、オレも慌てちまってポケットの弾を床にバラ播いちまったのよ。

 喉から悲鳴が出掛かったけど、それよりてめぇの足下に転がった散弾のタマを拾うのが先だろうよ。

 奴等を睨みつけながら、オレが床に手を伸ばした瞬間、タン・タン・タンと小気味いい機関銃の連射音がして、頭の上を熱いモンがチュンって音立てながら抜けてった。

 次の瞬間、ゾンビ野郎は、オレの方に向かってぶっ倒れながら、床を滑って来るじゃねぇか。

 …自衛隊の奴等も、アブねぇことしやがる。…こっちが頭を下げなけりゃオレの額に大穴が開いてたぜ。

 オレは急いで散弾銃の弾を込めてから、あいにくと致命傷にならなかったらしくて、立ち上がりかけてる茶髪娘のゾンビの腹を蹴っ飛ばしてやったのさ。

 それからオレは、「ゾンビになったお前らが悪いんだからな」って、心ん中で呟きながら、散弾の銃口を口に押し込んで、そっと引き金を引いてやった。


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