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オヤジ  作者: 矢島大佐
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 一度、来た道を戻ったオレは、岩槻のインターから高速道路にダンプを進めたのよ。

 …何でも学者先生は、T大の医科学研究所とかに立て籠もってるらしくて場所は品川の白銀台なんだとよ。

 とにかく下道は、放置された自動車やゾンビ野郎で一杯だろうし、ここからなら東北道から首都高に乗っかってくのが一番よ。

 ホントは自衛隊の奴等のヘリコプター使って、空から救助して貰うのが良いんだろうが、あっちこっちが、こんな状況じゃ、奴等も手が廻らねぇ。

 …くよくよ考えねぇで、手っ取り早くやれそうなことを、やっちまうのがオレ様の主義だから、誰も居ねぇ浦和の料金所を突破して、高速をどんどん南へ進んでった。

 そうは言っても、野郎どもはどこにでも現れる。…大破した車の影やら、ぶっ壊れた防音壁の隙間なんかから、たまぁに何匹か、お客さんが寄って来やがるのよ。

 でもよ。オレが朝っぱらに苦労して取り付けた、ダンプのバンパーのH鋼材は無駄じゃ無ぇぜ。

 …そいつに跳ね飛ばされた奴は、半身不随、鋼材に引っかかって落っこちねぇ奴は、止まってる乗用車とのサンドイッチで上下分断の運命よ。

 オレ達が進んでく高架の高速道路から見える風景じゃ、生きてる奴等もかなり居るみてぇで、ビルの屋上から煙が上がったり、布にペンキで「SOS」って書いてある垂れ幕を下げた建物も見えたなぁ。

 …助けてやりてぇのは山々なんだが、こちとら先を急ぐ身の上だから、何にもしちゃやれねぇ。

 …まだ通じる無線で所沢の奴等に、逃げ遅れた奴の場所を教えるのが精々よ。

 自衛隊のヘリが、運良く通りかかってくれるまで、どうにか生き残ってりゃ良いんだが…。

 そんな首都高速も、最初のうちは障害物も少なくって結構距離も進んだんだが、都内に入った頃から道路を塞ぐ車が増えて来やがった。

 なにしろ高架二車線の首都高じゃ、車線を塞がれたら逃げ場も無ぇから、オレも用心してたんだが、遂に大渋滞に填っちまった。

 …しかも、絶対動きそうもネェ渋滞車両の向こう側から、ゾンビ野郎がうろうろ近づいて来るから参ったぜ。 仕方なしにオレは、ダンプをバックさせながら、近場のランプ入り口まで戻って行ったのよ。

 高速の入り口をバックしながら下って行ったのは初めてだったから、千住新橋の料金所のバリケードをぶっ壊しちまったが、怒る奴はここらには居ねぇだろ。

 …でもよ、下の道にもゾンビ野郎の団体さんが、待ちかまえて居やがるのよ。

 何匹のゾンビ野郎を引っ掛けたか判からねぇが、奴等の肉片にスリップしながらも、何とか料金所を抜け出して国道四号線に乗り入れた。

 荒川に掛かる千住新橋の上には、自衛隊のトラックがひっくり返って止まってた。

 …きっと戦闘でもあったんだろう。爆破された車両の破片や、弾の貫通痕だらけの乗用車が歩道にまで乗り上げてる。

 破片でも踏んでタイヤがパンクしたら詰まらねぇから、オレもダンプをゆっくり進めたんだが、よく見たら自衛隊のヘルメットやらバックパックまで落ちてるから、防戦側も相当な被害が出たんだろう。

 自衛隊の機関銃でも落ちてりゃ使えると思ったんだが、そんなにうまい話は無かったな。

 隅田川を渡って荒川区に入った頃には、正面からのお客さんも増えて来た。…ゾンビ野郎のしつっこさには、まったく嫌気が差して来る。

 …向かってくる奴は、、構わず踏み潰しながらダンプを進めるんだが、奴等を踏み潰す度に、嫌な音を立てて車体が跳ねるから、こっちも神経がどうにかなっちまいそうだ。

 そうこうしてるうちに、台東区の下谷警察署の前あたりにやってきた。

 見たこともねぇ程のゾンビ野郎の大群が道一杯に群がって、下り車線を埋め尽くして居やがるぜ。

 「こりゃ、やべぇ」と思った瞬間、突然下り車線の道路が爆発しやがった。

 ゾンビどもが何匹か吹き飛ばされて、ダンプのフロントウインドウにまで、奴等の千切れた破片が降ってきたからオレも驚いた。

 …次の瞬間、ダッダッダッとドラム缶を勢いよく引っぱたく音が聞こえてきたかと思うと、何匹かのゾンビ野郎が尻餅つくようにひっくり返ったのよ。

 オレにも判ったぜ。…ありゃあ、自動小銃ってやつの音だ。…どこかに生き残ってる奴が居るんだよ。


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