第一章 十年十色 第九話 努力していた過去
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武田響は高揚していた。
いきなり喋りかけられた。しかも知らない人に。自分の気持ちを見透かしたかのように話しかけられた。
ナンパかなにかの勧誘なのかと思ったりしたけど彼らの行動はそういう行動ではないと思う。というよりかは信じてる。
足早に家に帰る。落ち着いているつもりだけど周りからしたら落ち着いていないのだろう。周りをキョロキョロしながら慌てて帰っているのだから。気にしない、気にしない。こいつらは僕よりも下の存在なんだから。
家に帰り着く。響の家は少し大きめの家で庭もそれなりに広いし地下もあるくらい。親が教師をしているから安定した収入があるがそれ以上になぜこんなにも大きな家なのか。それは彼もまた特異体質を持った人だからだ。
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武田響は小学2年生になるまでの間は県外の町に住んでいた。
父親が体育の先生で母親が数学の先生。祖父は国語の先生で祖母は社会の先生。そんな教師一家の子供として彼は周りから期待されていた。
でも期待を裏切る形となる。
それは小学生の頃の通信簿。意欲、関心、態度はどれも5だが、それ以外は1つだけ3、ほとんどが1で少しだけ2があった。
この成績に対して親戚一同は両親にどんな教育をしているのかなど言われていた。彼は自分のせいで両親は怒られる。期待を裏切ったら誰かが怒られることを小さい頃に学んだのだ。
彼の両親は時に優しく時に厳しく自分を育ててきた。親戚から怒られても彼を責めたりしない、そんな両親だからこそ一矢報いてやると必死に努力した。けれど、結果は同じ。
努力しても無駄なこと。両親がただただ怒られるだけ。そんな現実を受け入れられない時に今住んでいる町、咲瀬町の小学校に転校が決まった。
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「た、武田響です。よ、よろしくお願いします!」
彼、武田響は人見知りで人に話しかけられると慌ててしまう性格だ。
そんな彼が転校してきた小学校のクラスメイトたち。今となっては誰と一緒にいたのかは分からないけれど自分も含めて9人、このメンバーが唯一の友達だった。
そんなある日のこと。彼はそのメンバーの中でも一番信頼されてて町のことに関して詳しい女の子に自分が前にいた学校での成績のことを相談してみた。すると、
「君はどうなりたいの?」
そう彼女は聞き返してきた。まるで、答えは1つでしょと言っているかのような顔で彼の表情をのぞき込む。彼は当然、
「こんなの嫌だ。お母さんやお父さんが怒られるのをもう見たくない。」
そう応えた。そして彼女は待ってましたと言わんばかりに立ち上がり笑顔でこう言い返す。
「それならいい方法があるよ。どんな願い事でも叶えてくれるおまじないがね。」
その時の彼女の顔は覚えていない。でも印象として強く覚えている。
次の日の夜。彼はたまたま近くにあの公園があった。
なんでも願いが叶うといわれている木が生えているあの場所。
ビクビクしながらドアを開けてそっと家を抜け出しその木に向かって全力で走る。心臓の音が耳障りになるほどずっと聞こえる。そして立ち入り禁止の柵を越えて木と柵の真ん中まで震えながら歩く。もしバレたりしたらどうしよう。そう考えながら。
そして彼は深呼吸を何回もしたあと願い事を言う。
「なんでもできる人になりたいです。この願い咲かせて下さい。」
この時に脳裏に蘇ったのは彼女の言葉。
「どんな願いも叶えてくれる不思議な木がこの町にあるんだけれど願いが叶ってもなにか不幸なことが起きるからそのことは忘れずにね。」
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次の日。彼は深い溜息をしながら昨日のことを思い出す。
結局、2時半まで願ったから叶わないのかな。そう思いながら学校に向かう。
今日は体育の授業がありサッカーだったのだが、小学生にして5人抜きのドリブルシュート。50メートル離れたところからのロングシュート。コーナーキックでカーブをかけてゴールを決める。
彼はあんなにも運動ができない。運動音痴だったのにも関わらずハットトリックを決めたのだ。
授業も今まで分からないことだらけで先生に聞いてばっかだったけれど今はスラスラと答えられる。
なんでもできるってとても気持ちいい!と思っていた。
その気持ちはずっとは続かない。
なんでもできるってことは逆にいうと弱点がないということ。人はそれぞれ弱点がある。サッカーならこのドリブルに弱いとかこのパスに弱いとか。勉強でもそう。国語とか文系は得意。でも、理数系はできないなど。
彼はそれが1つもないのだ。その気になればなんだって出来てしまう。みんなと一緒にやっていって得られる達成感も今までできなかった部分ができるようになった時の嬉しさもなにも味わうことができないのだ。
月日は流れ高校3年生となる。もうあの頃の必死に頑張っていた自分はどこにもいない。
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!
新しいキャラの武田響くん。
彼の過去を描きました。
次は彼の現在です。
1週間後当たりにまた投稿します。
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