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閉じこもりのいしょ? D

 澪紀は息を切らしながら部屋に入って来た。そこには目を疑う光景だった。


「な、何これ?!」


 驚いてよろめいてしまった澪紀。なぜなら不明と未明が肩車して金庫の周りに置いていき、一番上は大人でも手が届かないところにまで本を重ねてしまっている。


「お待ちしてました。開けるのにわざわざ来られなくても。正しいか確認したかったのですが」


「それよりもた、探偵さん! これは一体?」


「何でもないですよ。あいつらが雰囲気出すために本の城を作ってるだけです」


「ほ、本の城?」


「金庫を開けるのに普通に開けるんじゃつまんないじゃん! 豪華にしてあげてるんだよ〜」


 そう言ってせっせと本を重ねていく不明。だが澪紀には不満である。


「そんなの必要ありません! それよりも開ける方法がわかったのですね?」


「はい。ですがまず依頼料をください。答えるのはその後です」


「し、しかし、金庫を開けてから依頼料を受け取った方が……お金はそこに入っているのですから」


「ダメです。中にどれくらい入ってるのかわからないですし、何より大金だと私がもっと要求する可能性もありますよ?」


「わ、わかりました」


 澪紀は財布を取り出すと中から一万円札を取り出した。旗家はドアから離れて澪紀の付近に行った。かなり不信であった。この依頼に一万円でいいのか。普通ならもっととると思ってた。この探偵の考えがわからなかった。

 だが勝は、わざわざ持ってるならさっさと出せばいいのにと思っていた。金持ちなら一万円くらいとポンと出してくるかと思ってたからだ。たった一万円でと思い、何か裏があるかと不安がってるかと思ったが、それも違う様だ。そもそも一万円にしたのは金持ちは、それを大金と思うか安い金と思うか見たかったからだ。それも見れなかくて勝は心の中では残念に思う。


「確かに頂きました。ではお話ししましょう」


 顔には笑顔で対応して、勝は一万円札をポケットに入れると椅子に座ってる雪の所に歩いて行った。


「雪君は叔父さんから聞いた話、それが暗号であると貴方達は考えた。しかし謎は分からず、五つのアルファベットを全て打ったがそれでも開かなかった。つまりこれは順番があるって事だ」


「ええ……それで暗号の答えは?」


「……ゆめめざしばしょ、つまり叔父さんの夢だ。叔父さんはパイロットになりたかったんだろう? パイロットの目指す場所つまりは空だ」


「そしてひるにもひかりかがやく、昼にもだから太陽ではない。光が弱く昼には少ない星の事だ。とものこえがなくなれば……つまり死だ。友人の死を目の当たりにして飛ぶのが怖くなってしまったんだ。そしてはばたくひなをまち……雪君、君の夢は叔父さんと同じ、パイロットになる事だろう?」


「どうしてわかったの?! 僕言ってないのに?」


「叔父さんが話してくれたってことは、雪君にそうなってほしいか、なりたいと言ってたからだろう。だから包み隠さず飛べなくなったことも話した。例え子供相手だろうと」


「……それで探偵さん。答えは何なの?」


「まだわかりませんか?」


 ニヤリと笑う勝。澪紀はすでにイライラした様子だ。権田は澪紀の様子に焦ってる。勝も流石に何かしでかす前に答えを出すと決めた。


「これは暗号でもなんでもない」


「……え?」


「叔父さんの詩はただの詩だ。自分の一生を詠った思い出の詩。あんた達が子供から聞いた話で、それが金庫を開ける方法とは聞いてないんだろ?」


「じゃあ金庫は開ける事は出来ないって事?!」


「あー違う違う。確かに詩はあまり関係ないが、最後は間違いなく言ってる。そのいしつぐものにたからを。これでわかっただろう? あんたではなく息子さんの雪君に宝を、金庫の中をあげるという事」


 勝は金庫の前に行き、ダイヤルを回し始めた。ゆっくりと、慌てて飛ばしてしまったら面倒だから。


「雪君の名前、それを英語で『snow』。そしてそのまま打ってもダメなら雪は空から降る……積もる。下から打ってみよう」


「ちょっと待て! 『snow』は四文字のはずだ。だがアルファベットは五文字! それだと足りないぞ!」


 権田は全てのアルファベットを打ち込んでいるためよくわかっている。あんなの二度とやりたくない思いだ。だから五文字じゃないとすぐに気付いた。


「叔父さんが上手く仕組んだ罠さ。四文字だと雪君の名前に気付くかもしれない。だが五文字なら違うと思わせる」


 勝は一つ目の英語を打ち込む。


「二つを一つに。『v』を二つ並べたら?」


 勝は二つ目の英語を打ち込む。そして出た文字は旗家には見えてしまった。


「『v』が『w』に……」


 旗家だけではなく、澪紀も権田も驚いた。勝は三つ目、四つ目を打ち終えると金庫から金属の外れる音がした。


「やった! これで開くぞ」


「不明未明! 本はそれくらいでいいだろう。降りてこい!」


「……了解」


「ワクワク扉が開くよ〜」


 高い本の山の上で黙々と作業をしていた。金庫の扉前の上には、見事に瓦屋根に見える。上手く出来て不明と未明は満足だ。二人は軽い身のこなしで下に降りてきた。勝は後ろに下がって、指差して不明に確認した。


「それでは開けるのは澪紀さんで」


「ようやく手に入るのだな!」


 澪紀は興奮しながらも走って金庫の前に行く。旗家と権田も後を追う。澪紀が金庫を開けようとするが、女性一人の力じゃ中々開かず、二人も手伝った。そして中に入っていた物を見て、三人は言葉を失った。




 本だった。それは外にあったのと変わらない本だった。


「なんだ……何だこれは?!」


 澪紀は思考が止まって、見に見えてる光景が信じられなかった。旗家は一冊の本を取って、ページをめくったが、これはただの小説だ。こっちには何かの資料の様だ。それが何冊も置いてあるだけだ。


「う、嘘だ……嘘だ!」


 澪紀は本を出して奥に何かないか、本の間に何かないか探した。だが何もなかった。


「本だと……ふざけるなぁ!!」


 大声で叫び、本を投げ捨てた。その本は勝の足元に転がってきた。


「………あのバカ」


 勝は本のタイトルを見て、小声で呟いた。


「澪紀さーん。金庫は開けたので帰りますねー」


「待ちな! 誰が帰らせるかよ!」


 澪紀は懐に仕込んでた銃を取り出した。続くように旗家と権田も銃を取り出し、勝達に向けた。


「有り金全部……」


 澪紀達が金庫の中から出て、勝達に近くに行く瞬間、未明が近くの本を投げ飛ばした。当てたのは瓦屋根に積んだ本の山。


「な?! ぎゃあああ!!」


 逃げる暇もなく、澪紀、旗家、権田は崩れる本の山に潰されて行く。


「すまないな雪君、本を遊びに使って」


「ごめんね。本は読むものだから絶対真似しちゃダメだよ」


 不明も謝っていた。そもそもこんな本の山を作る子供がいないだろう。この二人を除いて。


「さてと……三人は生きてるかな?」


 勝達は本の山から発掘を開始した。と言っても、ある程度の場所はわかるのですぐに発見できる。不明は権田の顔を覗く。


「こっちの人伸びてるよ〜」


 権田は打ち所が悪く、気を失ってしまった様だ。勝はそっちよりもう一人の男を注意していた。


「いた。未明」


「……くそ。いてて!!」


「動くな」


「何だこいつ……ただのガキなのに俺が、力負けしてるのか?」


 未明は旗家の両の腕を背中に回してどこからともなく出した紐で縛り始めた。勝は澪紀を見つけ、顔を叩いて目を覚まさせた。


「う……?!」


「起きたか?」


「た、探偵さん、な、何の真似ですか?!」


「とぼけんなよ。お前らが強盗犯だとこの家に来た時にわかっていた。確認もしたからな」


「な、何故……何故わかった?!」


「まあまず変だと思ったのは依頼料だな。金額を決める時にお前は旗家の様子を伺った。わざわざボディガードの様子を見るなんて変な話。まるで偉い人が旗家の様だ。いや、それが正解か?」


「お前! あの時俺を見るから怪しまれたじゃないか!」


「うう……」


 旗家は怒ると澪紀は何も言い返す事は出来なかった。


「だがあんたもミスがあるぜ旗家さん。あんたこの家着いた時、澪紀が家の扉を開けた。普通に開けちまったんだ。鍵もないしボディガードとしてのあんたが動きもしないなんて、おかしい話が続いてる」


 勝の話に旗家は目を逸らしてしまう。自分にも失敗があったからだ。


「あんたに警備が甘いと言った時、何もしないのが一番とも言った。そんなザル警備、俺なら文句を言う。カメラやパスワード入力、それこそ金庫など、ある物を使えと。つまりこの家には重要な物なんてない。お前らは見せなくない物があるだけだ。例えば……死体か?」


「お父さんとお母さんは!? どこなの!?」


 雪は叫ぶように問いかけた。最悪の事態ならと考える。そして澪紀は何も答えない。


「殺したのか?」


「生きてるよ……二人ともベットルームで縛ってる」


「……よかった。お父さん……お母さん」


 涙を流す雪の頭を不明は撫でてあげた。


「不明、未明。雪君の本当の親を助けに行ってこい」


「……命令とは何様だ」


「……行ってきてください。あと面倒だが警察も呼んでくれ。雪君は残ってくれ」


 不明と未明は部屋から出て行くと、旗家が勝に質問した。


「確認したと言っていたな。この本の山は俺達を動けなくするために作ったなら、その前になる……一体いつ?」


 勝は何も言わずにメモ帳を旗家に見せた。そこには『あいつらは悪い奴?』と書かれていた。


「なるほど……メモを取るふりして筆談してたのか」


「おい何終わった感を出してる? お前達は殺してないと言ったが、叔父さんはどうなんだ?」


 勝はメモ帳を閉じて指を指す。二人とも何も答えずにいる。イラついた勝は旗家の顎を蹴り、旗家を気絶させた。


「お前には、手の指の感覚をなくさせよう……二回も質問させるな……叔父さんはお前達が殺したのか?」


 勝は澪紀の手の甲に足を乗せる。だんだんと足に体重を乗せていき、痛みを強くしている。


「や、やめてくれ! 殺す気は無かったんだ! ていうか私達は脅しただけなのに、あいつが急に苦しみだしたんだ! 私は悪くない!」


「何言ってんだ? どんな事だろうと死なない事なんかないんだよ。人は生きてる限り、死とは隣り合わせだ。そして悪い事はそれを最大に引き起こす。殺す覚悟もなくて、悪事なんかするなよ」


 勝は足を澪紀の手から離した。澪紀はほっとした瞬間、頭を踏みつけられる。悲鳴を出されるが勝は気にせず、ずっと見ていた雪に聞いた。


「雪君……家族の叔父さんを殺された気持ち。警察が来たらもうこいつらに何もできない。復讐をするなら今のうちだ。そこの本でもいい。角で頭を殴ってやれ。何度もすれば…」


「もういいよ……叔父さんは、目の前で人が死ぬのがとても怖かったって言ってた……僕も見たくないよ」


 寂しそうに言う雪を、勝はじっと見つめた。


「………そうか」




 一時間後、野々路と日揮が屋敷に着いた。待ちくたびれて不明と未明は眠ってる。雪も親子の感動の再会がすでに終わってる。扉前には強盗犯の三人が縛られている。


「遅かったな警察の方。それとも事件発生を聞いて素早い対応ご苦労様と言った方がいいのか?」


「ふん……お前がいると聞いて非番の私が呼び出された身にもなれ」


「じゃああと任せるわ。あ、あと日揮君はちょっと聞きたいことがあるから」


 勝は手招きをして日揮を呼ぶ。なんとわがままな態度だが、日揮は仕方なく向かった。


「聞きたいことはわかってる。この前捕まえた具流目大輝容疑者の面談だろ。だが……」


「死んだんだろ?」


「何故知ってる!? まだ世間には流れてないはずだ!」


「ダメ元で頼んでたんだ。予想はしている。相変わらず手が早いな」


「どういう事だおい?! 探偵!」


 勝は不明と未明を起こすと、雪の所に向かった。


「じゃあ俺達は帰るからお別れだ。あと叔父さんからの本、大切にな」


「うん! バイバイ探偵さん」


 手を振る雪に頭を下げる両親に別れる。家から出るとあくびをしながら不明と未明は呟く。


「……一冊くらい貰ったらよかったのに。あの本は数万円以上の価値がある本だったのに」


「……歴史的価値がわからん馬鹿」


「いいさ。あの本は雪君のところが一番価値がある」

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