一番大事な物は何ですか? 百
エレベーターは一階に着き、扉が開いた先には未明が立っていた。
「どうだ?」
「……聴き込み終わり。具流目……クズ。具沢差は……いい人」
「具沢差は僕達とは気が合わないのか、やたら警察が嫌いなのか……ああは言ってるが、あまり捜査の協力してくれない」
「そりゃそうだろ。事件も解決できない上に、何か起きないと動きもしない警察を嫌いになるのも無理ない」
「警察をバカにするのもいい加減にしろ! それとさっきから勝手に捜査を…」
「日揮くーん。ここびょーういーん」
日揮は周りを見渡すと注目の的になっていた。失礼な事をした日揮は頭を下げた。
その行動に勝は驚いた。この程度で頭を下げる人間を初めて見た。驚いた表情を隠していたが、その後笑みを浮かべた。
「……お前は正しいが何か理解しているようだな」
「……どう言う意味だ?」
勝を睨む日揮だが、勝はその答えを教えなかった。
「で、倉井は?」
「倉井……入院中…具沢差と……仲良かった…」
「倉井と具沢差の仲がいい? そんな話はなかった。本当かそれは?」
「警察のやり方……バカ……人は嘘吐く……でも……言いたい時……ある」
日揮にはどういう意味か理解できなかった。彼女の代わりに不明が答えてくれた。
「何かを隠してる場合、口止めをされてあるなら、言うわけない。でもその話題を出されてしまうと頭で考えてしまう。そしたら同じ状況の仲間に、だあれかさんが聴いて回ってるという注意を出す。そして味方同士で思わず話してしまう。あれやこれやを」
「……つまり盗み聞きして得た情報か?」
「正解……子供が聴いてたのバレても……お咎めなし」
やり方は汚いが悪い手ではない。これで警察がやった聴き込みも意味がなくなった。
「さて、次に行くとしますか」
「次ってどこだ?」
「具沢差の家だよ。住所も覚えてるんだろ? 日揮刑事殿」
こういう時だけ丁重に呼びやがる。文句は言わずに車まで歩いて行き、エンジンをかけた。勝は具沢差が犯人と言った。だが彼が犯人と決めるのは速すぎる。
勝は助手席に乗り、後ろには不明と未明が乗る。シートベルトを締めたか確認した後、日揮はアクセルペダルを踏んで車を走らせる。
「彼が殺人を犯したと言うのなら、一体何時なんだ?」
「……さあな。だが奴に間違いない。お前はそうは思っていないようだな?」
日揮の心は勝に読まれていた。警察はまだ具沢差を犯人と疑っているが、日揮は犯人は別にいると考えていた。勝はまだ具沢差のアリバイがどれほど完璧か知らないんだ。
「……彼は具流目が行方不明になる前日に福岡に出張に行ってる。さらに帰って来た時には、妻と子供が迎えに行ってる。それは多数の目撃情報だ。第一の事件でアリバイがある事から考えて、第二の事件、倉井がいなくなった日のアリバイがなくても、この連続殺人事件の犯人として…」
「立証されない。それを壊すために必死に捜査をしてるんだろう?」
「………具沢差のどんな人間か聴き込みした時、彼は殺人犯ではないと思いたくなった。あそこまでいい人と言われる人は少ない」
「……そうだな。少ないな」
外の景色を眺める勝。沈黙が続くかと思っていると後ろの座っていた不明と未明が騒ぎ出した。
「ねえねえ! この車狭いね! 警察は儲かってないの?」
「……私達を運ぶならリムジンくらい持ってこい…」
「……探偵、ずっと二人が文句を言ってくるんだが、止めさせる方法はないのか?」
「同じ車に乗ったら、同じ感想しか出ないよ」
「ああ言えばこう言う二人だ。止めさせるのは無駄なことだ」
「はあ……そろそろ着くから我慢してくれ」
「案外早く着いたな」
「具沢差の家は病院からそんなに遠くない。家が近いと緊急な患者が出た時に、すぐに動けるからだそうだ」
「本当にいい人だね〜。でも無理して体壊したら元も子もないけどね」
車をゆっくりと停止すると、日揮はエンジンを切り、車から降りた。二階建ての一軒家、具沢差の家だ。車庫もあり庭もある立派な建物だ。
「あまり失礼のないようにしろよ。双子! お前達はここにいろ!」
「え〜!」「………」
不明のブーイングは無視して日揮はインターホンを押す。しばらくすると女性の方が出た。
「どちら様?」
「すいません、警察の日揮です」
「ああ、少々お待ちください」
またしばらく待つと髪の長い、綺麗な女性が玄関から出てきた。
「刑事さんまたいらっしゃったのに、すいませんが主人は今お仕事で…」
「ええ先ほどお会いしました。すいませんが、今度はあなたにお話を聞こうかと思って」
「私に……ですか? まあ構いませんが、そちらの方々は?」
「上司です。時間はそんなにかかりません」
「後ろの女の子二人は気にしないでください。少々行儀が悪く、車の中で待たせますので…」
「ブー! ブー! つまんない〜!」
文句を言ってる不明に日揮は注意をしようとしたが、女性は
「別に入れてもいいですよ。元気なのはいいことですし、女の子を待たせるのは男としていけませんよ刑事さん」
そう言われたら入れるしかない。日揮が困っている様子を見て勝は鼻で笑った。
「フッ、奥さんの言う通りだな日揮君。そういえばお名前を教えてませんでしたね。私は勝です。後ろは不明と未明です」
「私は具沢差味美。具沢差紳助の妻です」




