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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
20/64

20話 合流

 終わった。

 とても強かった。

 ちょっと疲れた。

 ゴブリン王の首から、ドクドクと緑の血が池のように広がっていた。

「さらば強者よ」

 自然と言葉が出ることがある。

 今回は特に。

 

 何故か、剣を眼前にやり、目を閉じてそう述べた。

 打ち合えることを許した武具に、立ち向かえた強者に、そしてもう二度とかなわない武闘に。

 これが感謝? これが寂しい? これが、敬意? ……“ほまれ”?


 まだ終わってない。

 わかっている、奥の部屋に潜む悪意を。


 だが戦った者との“最期の会話”は外せなかった。


 奥の部屋、毛皮のぼろきれが垂らされ全容が見えない。

 隠れるように呪術士がこちらを覗き見ているのは、気づいている。


 ふと、ルーナと聞こえた。

 

 隠し通路の方にマルコが来ていた。


 あ、私の名前か。

 呼ばれたのか。


 満面の笑顔だな。

 それにしてもなんで来たのだろう?

 村はいいのか?

 救援は呼ばなくてよいのだろうか?

 倒しに来てる私がそう考えるのもおかしいのだが。

 手伝いに来てくれたのなら嬉しいぞ。

「よく来た! まだ敵はいるぞ!」


 彼らを待つことなく、部屋に近づく。


「テキ! ヤケシネ!」

 呪術士が妙にはっきりとしゃべったと思うと、今までとは違う杖をこちらに向けて笑った。

「!」

 なんだ?

 短くて先端に赤い石が付いている、棒でも骨杖でもなく、呪文も唱えない、走ればすぐに切り捨てられる間合いだぞ? いったい――。


 マルコ「嬢ちゃんワンドだ! でかい魔法が飛んでくるぞぉ!!」


 彼が叫ぶと同時に、奴の杖の周囲に奇妙な力が溢れ走っているのを、割と強く感じ取った。


 ――あぁ、これは、“魔法の感覚”だったのか、ずっとこれを、目覚めた時から感じ取っていたんだ――。


 ボゴオォウウウウッ!!


 火炎の大玉が突如杖から出現し、辺りを焦がすような熱風とまばゆい赤光を吐き出し、回転し地面をえぐりながら高速で迫って来た。


 足元に長い鉄の柄が転がっている。

 それに賭けてみた。

 槍斧を拾い、斧の刃の横を意識し、振りかぶった。

 やり方はもう王から教わっている。


 バガアアアァァァァッ!!

 少し遅れたが当たった。

 斧の板部分で打ち返すように。

 あわよくば跳ね返すか、はじき消すかする算段だったが、炎の勢い、いや圧力がとてつもなかった。

 まるで鉄球だ。

「っ」

 お互い弾けるようにふき飛んだ。

 あまりの衝撃に手から離れた槍斧はぶるぶると振動し何度か地面を跳ね落ちた。

 ゴオオオオオオオンッガアアンッ!


 ダンッ、ゴロゴロゴロズザアアアッ。

 受け身を取るように横に何度も回転して私は止まり、うつ伏せのまま弾け飛んだ火球がどうなった確かめる。

「っく」


 バアアアアアアアアアッ。

 それは呪術士の頭上、あの部屋の上部に跳ね返ってって、爆裂していた。

 ボンッボンッボボボオオッ。

 火山の噴火のように破裂し、火炎や火の玉や火の粉が辺り一帯に落下する。


 前に出ていた呪術士の法服に燃え移ってしまい、逃げまどいながら奴は衣を脱ぎ捨てた。

 肌をあらわにした呪術士の体表にはたくさんの落書きがしてあった。


 奴が放った魔法の出どころのワンド、らしきものは用済みとばかりに投げ捨てられていた。

 先端の火の色の石は色を失い黒ずんでいた。


 部屋を隠す毛皮の垂れ幕にも火が燃え移り、バラバラを燃え落ちてゆく。


「!」

 そこには、まるで女王とでもいうのか、異形の巨大なメスのゴブリンが鎮座していた。


 王よりは小型だが、ホブゴブリンよりはるかに大きく、その部屋一杯に広がっていた。

 体表は今までの変異の中でも青黒く、呪術士と同じらくがき模様、“刺繍”、がしてあった。


 そして、頭から下が溶けたかのようないびつに歪み、変異した異形の姿であった。

 まるで別の生き物だ。

 彼女はまるで、積み重なった死体の山に見える。

 足が見当たらず、自分で動けそうにない。


 呪術士が二匹威嚇するようにポツンと手前に控えていた。


 私は少しよろめいて起き上がり、大剣の落ちているところに行きながらそれを観察してた。

 

 なんだか火球を弾いてふっ飛んでから疲れが出てきたな。

 

 マルコ「ルーナ! 大丈夫か!」

「ああ、みんな無事か――マルコは、大丈夫か?」

 服の一部が焦げて穴が開いている。燃えたのか。


 彼と、村の夜警だった男達と戦った男達と、荷馬車にいたガストンと兄妹が揃って来ていた。


「皆で来たのか、救援はどうした?」

 チラリと彼らを見て言う。

 ちょっと来るのが遅かったが嬉しく思う。

 荷馬車の連中も村に合流できたようだ。


 視線をすぐに異形の女王達に戻した。

 彼女の目はまっすぐ私を睨んでいる。

 とてつもない憎悪の感覚が伝わってきている。

 なんというか、王と同じくらいの圧力を感じていて、正直困惑している。

 

 先ほどから感覚がおかしい。……いや、鋭くなってきているのか?

 気のせいじゃないなら、彼女から、何かがあふれ出てくるような予感がしている。


 マルコが何かしゃべっている。

 ちゃんと聞こう。


「そりゃねぇぜ! 抜け駆けしようったってそうはいかねぇぞ! 俺らも戦うっての!」

「そうだ」「そうっすよ! 姉さん」と村人達。


 ガストン「よぅルーナ、いい大剣じゃねぇか。実はケンウッドさんが街でとっくに救援要請はしてあったんだよ。てゆうかもう必要ねぇだろ?」


「うん、多分あそこの――」

 拾った大剣で指示したその場所で、変化があった。


「ギウウウウゥゥウウウウボォォアアア!」

 ブリュリュッ――ビシャアアッ!

 変異女王の身体の下からズルリと何かが出てきた。

 産んだのだろうか。


 ビチャピチャ。

 四足の、魔狼に似た何かだ。

 そしてすでに成体だ。

 先ほどの、あそこの部屋に引き入れられていた魔狼のことを思い出した。

読んでくださりありがとうございます。

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