↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
21/367

21話 変異

 ビクター少年「うぇ、何ですかあれえ!」

 皆「うおお!?」「何だあの化けもん共は!?」


 うん?

 あ、そうか、見えてなかったのか。


 ここは日が差す広場の最奥の暗がりだからか、影になっていて、確かに目を凝らさないと見えない。

 特にあの部屋は壁の奥に隠れるように掘られているからな。


 それより産まれた何かだ。


 全身を覆う粘着質の汁が垂れて、乾いていくにつれ濡れた毛皮があらわになり、通常より大型の“魔狼”が起き上がる。

 奇形に変異していて、顎《あご》の牙が異常に発達して狂暴に伸び、バラバラに歪んだ並びで生えていた。

 眼は逆に退化? したかのように小さい。


 退化ってなんだろう?

 今言葉は出て来たが……。


 マルコ「何だありゃあ! あの、あれが女王か!? 馬鹿な! ありえんぞこれは!」

 ガストン「どうりで今回おかしいことだらけな筈だよ」

 彼らの知ってる女王とは違うようだな。


「ん?」

 逃げ込んだ呪術士が世話しているが、その一匹に突然、女王の水膨れした水死体のような腕がそいつを掴んで、口を歪ませるように変形させて……一息に飲み込んでしまった。


 皆「「!?」」


「ウギュァボアアアア!」

 変異女王の身体がボコボコと沸騰《ふっとう》したように蠢《うごめ》く。


 あれはまるで、二首ホブゴブリンが強力になったあの時と同じだ。


「ギヒィイイヤダァ!」

 もう一匹の法服を着た呪術士が悲鳴を上げて逃げ出す。

 嫌だと言ったな今。


 しかし、こちらに、穴から出る前に女王がまたもや捕まえて、いや、背中から拳を降ろし叩き潰した。

 ゴブジャアアッ!


 皆「「ぎえっ」」

 ソニー「ひいっ!?」


 そして半殺しのまま、また飲み込んだ。

 マルコ「あれ何してんだいってえ!? 食べちまったぞ!?」


「また何か産むのかもしれない! さっきも生きた魔狼を運び込んでいたんだ! それよりあの狼、来るぞ!」


 ビクター「狼!? (あんなのが魔狼!?)」

 妹ソニー「ルーナさんがわりと長めに喋った!?」


 待ってくれてたわけじゃないが、調子が出たのか、少し渇いた変異魔狼が、弾けるように爆走して来る。

 ドタタッドタタッ。


 だがあの小さくて素早しっこかった“変異黒ゴブ”より遅い。


 そして全然魔狼と同じ動きだ。


 ダッ。

 私も走り、奴がやはり飛び上がったところを下をくぐり大剣で割いた。


 ズバアアアアシャアアアッ!


 結果は、上手くいった。


 器用に大顎を避けて、奥から斜めに真っ二つに両断され、二つの肉塊が皆の目の前にドサァッと落ちる。


「……」

 だが食いつこうとした牙、いきなり少し大きく変化していた。


 地面に変異巨大化した頭が全部めり込んでる。

 崩れ落ちて溜まった土の山が柔らかいんだ。


 露出してる下半身は斜めに斬れ割れている。


「「すっげ」」


 ガストン「おいおい俺でも今の芸当はむずいぞ!?」


 マルコ「ルーナおめぇ……腕を上げたな」


「うむ」

 大剣がスヒュンと音を立てて血糊《ちのり》を弾いた。

 ビシャッ。


 ズルンッ!

 ブチュルッ!


 皆「「!?」」


 奇妙な音がし、また何か産み出すのかと変異女王の元を見る一同、しかし何も産み出されてはいなかった。


「上だ」

 なんと、涎《よだれ》を垂らし息を荒くする女王の顔のすぐ横に、さっき食った呪術士の頭部が出現していた。

 今二つ目もにょきにょき出て来たぞ? 水泡とか脂肪の塊じゃなかったのかっ。


「「おおおお!?」」

 マルコ「お、おいありゃあ、村に出た二つ首みてぇになったちまったぞ!? 自分を変異させたってのか!?」

 ガストン「言わずもがなだな」

 ビクター「三つですけど……」


 ソニー「あぁ! 呪文を唱えてますよ皆さん!」

 彼女気付いたのか、やるな。

 やはり呪文というのかあのブツブツ言ってるのは。


 そして魔法の力、魔力だろうか? 私にもわかるようになった。


 呪術士の首まで一緒になって唱えてる。

 そしてそれは一つの頭で放つより強力な力だとわかる。

 

 ソニー「あれは“同時詠唱”ですっ強力なやつです!」

 何。

 だがしかも、二匹分以上に、更に膨れ上がっていた。


 防がなければならないな。

 既に、弓の狙いはついている。

 ギリリ。


 バシュンッ。


 連続で放った。

 呪術士の首と、ついでに女王の額も狙い撃った。


 女王の手前の地面に黒い水溜りが出現している。

 バシュバシュバシュ!

 矢がなくなるまで、矢が駄目になろうと連射を続けた。

 

 謎の水溜りがどんどん広がる。


 女王は息がある。呪文も止まらない。

 弓持ちの村人も参加し、ソニーも水玉を唱え参加してくれるが、止まらない。


 ブツンッ!

「っ」

 さすがに限界が来て弦《つる》が切れてしまった。

 それが弾け当たって痛い。


 矢は二十本近く、三つの首に見事に刺さり、もはや表情も見えなくなっていた。


 右の頭が死んだように見える。

 呪文は防げただろうか。


 ビクター「す、すごい、でも、壊れちゃった」

 ソニー「と、止まった? 詠唱……」


 黒い水溜りの広がりは止まり、それはただの穴のように見える。


 なんだか変だ。全然波打ってないし、水っぽくもない感じだ。

 そして、嫌な気配が凄くアレからしている。

 冷たく凍えるような、近づき難《がた》い感じが。


「「ごくっ」」

 息をのむ一同。

 

 槍斧を拾いに走る。


 夜警の青年「あ、ルーナさん左! ゴブリン王が!」


「!」

 目を見開いた。

 王の死骸に黒い水溜りができている。

 そっちにもだと?


「?」

 女王を振り返ると手前に同じものがある。


 何だこれは!?

読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。