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最終話 それでいい


 慧臣と別れた後、藍蘭は定宿がある村へ向かって歩いて行く。

 そこへ木の陰に隠れていた四十代くらいの女性が上着を持って現れ、藍蘭のあとをついて歩いていく。


「よろしいのですか? あれを令月様に見せてしまっては、危険だと思いますが……」

「いいのよ。どうせ、追いつきはしないわ。それより、至妙」

「————はい」

「あなた、慧臣の顔に見覚えがあると言っていたわね? どこの子だか、身元はわかったの?」

「はい。調べました。闇商人が絡んでいたので、少々時間がかかりましたが……あの子はやはり、秀麗の息子です」


 至妙は、藍蘭の月のように白く輝く姿を隠すように、大きな上着を頭からすっぽりと掛け、話を続けた。


「結婚した後、あまり連絡は取れていなかったのですが————人の縁とは、不思議なものですね。蜜姫様」


 紅雪と仲の良かった、人形職人の弟子、秀麗と至妙。

 秀麗の息子が慧臣。

 至妙の夫が紅雪の兄で、その娘が今後宮に側室妃の侍女として送り込まれた明了であるという、この不思議な縁を、月宮殿の王弟殿下が知るのは、まだまだ先の話である。



 *




「————な、なんだあれは!!」


 白い円盤が、山の上空からこちらに向かって飛んでくる。

 初めてその目で見た謎の飛行物体に、令月は瞳を輝かせながら夢中になっていた。


「一体、どうやって宙に浮いているんだ!?」


 白い円盤は、まるで誘っているかのように不思議な動きをしながら、宮廷がある方角へ進む。


「慧臣!! 馬だ!! 追いかけるぞ!!」

「え、追いかけるんですか!?」

「こんな機会はもうないかもしれない!!」


 慧臣は最初からすぐに動かせるように用意していた馬を連れて、令月の前に行くと、令月はひょいと軽い慧臣の体を先に馬に乗せる。

 令月は慧臣の後ろに跨って乗ると、手綱を持った。


「えっ!? なんで俺も!?」

「空を見ながら走らせるなんて危ないだろう! お前があれの動きをよく見て、私に伝えるんだ! 見失うなよ!」

「あ、はい! なるほど、わかりました!!」


(あんなの、追いつけるはずない。まぁ、上手くやろう)


 令月と慧臣を乗せて、馬が夜の村を駆け抜ける。

 李楽もそれに続いた。


(今は、これでいい。あの山には、二度と近づかないようにしないと)


 慧臣は令月の表情がいつもの少し腹がたつくらい楽しそうにニヤついているものに変わったのを、ちらりと確認して、安心する。


(令月様が何もかも知ってしまったら、この顔も見られなくなってしまう。知らないままでいた方が、いいこともあるんだ)


 月宮殿の王弟殿下は、怪奇話がお好き。

 そして、その従者は、主人のこの楽しそうな顔が意外と好きなのだど気がついた。


「こら、慧臣、私の顔がどこから見ても美しいのはわかるが、ちゃんとあの謎の物体を追え!」

「み、見てませんよ!! 令月様の顔なんて、親父の顔より見てるんですから、もう見飽きました!!」

「なんだと!?」



(こういうところは、少しムカつくけど……)


 主人が幸せそうなら、それでいい。



【最終章 王弟殿下と未知との遭遇 了】





 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 これにて、一度完結です。(コンテストに応募するには、文字数的に、このくらいが限界なのです)

 好評であればシリーズ化して、シーズン2として後日続きを書こうかなとか思っています。

 回収されていない伏線(なぜ蜜姫妃は令月を王様にしたいのか、令月は本当に明了と結婚するのか、慧臣の父親はどこにいるのか、など)は、そちらで回収できたらなと……


 この作品が面白い、シーズン2も読んで見たいと、少しでも思っていただけたら、星評価や、感想、レビュー等、何か反応を残していただけたら嬉しいです。


追加:ネトコン13入賞&書籍化決定しました!

   詳細は分かり次第、近況ノートやX等にてお知らせします。

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