交わした約束
「今から話すことは、信じられないような話だけど、本当の事だから信じてほしい」
「うん、わかった」
こうして莉夜は話し始めた。
「私がシェアハウス出会うよりも前に、夢で何度も新に会ってるの。信じられないかもしれないけど、本当なの」
僕は、驚きのあまり口を開けたまま固まった。すると、莉夜が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「大丈夫? どうかした?」
僕はせっかく莉夜が真実を打ち明けてくれたのだから、僕も真実を話そうと決めた。
「大丈夫だよ、ただ、こんな奇跡って起こるんだなぁと思って」
「奇跡?」
「うん、実は、僕も莉夜とシェアハウスで出会うより前に夢で莉夜と会ってるんだ」
「本当?!」
莉夜は嬉しそうに、はしゃいでいたがすぐに真剣な表情になり、こう聞いてきた。
「じゃあ、夢の中でしたあの約束も覚えてる?」
……約束。
確かに僕は、夢の中で莉夜と会っていた時にある約束を交わした。
約束を交わしたことは覚えている。
だが、その内容だけがどうしても思い出せない。
「約束をしたことは覚えてるんだけど、どんな約束をしたのかだけ思い出せないんだ。本当にごめん」
すると、莉夜は少し悲しそうな顔をしながらも、笑顔でこう言った。
「大丈夫だよ。でも、いつかその約束を思い出してくれると嬉しいな」
そう言うと、莉夜は再び夜景を向いた。
辺りが暗くてよく見えなかったのだが、その時の莉夜は涙を流しているような気がした。
「必ず約束の内容を思い出してみせるから、それまで待っててほしい」
僕が莉夜にそう言うと、莉夜は涙拭いて僕の方を向いた。
「うんっ! ずっと待ってる」
こうして僕らは、絶景の目の前でまた一つ約束を交わしたのだった。
「おーい! りよっち~! 新く~ん!」
僕と莉夜の後ろの方から僕たちを呼ぶ声が聞こえたので、振り向くとそこには、シェアハウスの住人たちと苺が慌てた様子でこちらの方に走って向かってきていた。
「も~、めっちゃ探したんだから~。勝手に違う道を行ったりしないでよね~」
りっちゃんは本当に心配しているようだった。
息切れもしている。
恐らく、僕たちを探すためいろいろな場所を探し回ったのだろう。
「りっちゃん、みんな、本当にごめんなさい」
莉夜がみんなに謝りながら、頭を下げる。
その姿を見た僕も、頭を下げた。
「二人とも頭、上げて。私たちは別に怒ってるわけじゃないんだよ」
僕と莉夜が頭を上げると、そこには笑顔のみんなの姿が見えた。
それを見た僕は、思わず泣きそうになってしまったのだった。
「じゃあ、二人とも、戻ろっか」
僕と莉夜はりっちゃんに連れられ、キャンプ場へと戻った。
再びキャンプ場に戻った僕たちはだれがどのテントで寝るかを決めることになった。
今回は、テントを三つ用意したので、二人につき一つのテントということになる。つまり、一つのペアだけは、男女同士で同じテントで寝なくてはならないのだ。
「じゃあ、みんな、準備は良い?」
りっちゃんは、その掛け声とともに肝試しのペアを決める時に使った色付きの棒を持ってきた。
全員一斉に棒を引き抜く。
僕は、自分の引いた棒の色を確認する。
青色である。
僕は、他の人の引いた棒の色も確認してみる。
塩川さんと新城さんが赤色。
苺とりっちゃんが緑色。
そして、莉夜が赤色である。
奇跡的に肝試しの時と同じペアになったのだ。
「また、同じになったね」
「うん」
こうして僕たちは、ペアに分かれ寝ることにしたのだった。
僕と莉夜はテントに入り、横になる。
テントはお世辞にも大きいとは言えないサイズだったので、二人が横になるだけで肩と肩が当たるほどだった。
僕は、さっきのことがあるため、少し気まずかったが、莉夜はそんなことを気にするそぶりを全く見せず、テントの中で横になりながら、話しかけてくる。
「このテント、思ってたより小さかったね。これじゃあ、塩川さんと新城さんのところは、こっちよりも全然熱いだろうね」
「うん、莉夜は大丈夫? 熱くない? 少し離れようか?」
「うんん、大丈夫だよ。むしろこのままの方が……」
「え?」
「あ! ごめん! 何でもないよ!」
いきなり慌てふためいている莉夜を見ていると、僕は莉夜のこういう部分も好きになったんだなぁと改めて思ったのだった。
その後も僕たちは色んな事を話した。
学校での事。
上京する前の事。
テストの事。
そんなことを話しているうちに、僕たちは段々眠たくなってきたため、寝ることにした。
だが、寝る直前、莉夜は一言だけ気になることを言った。
「夢で約束したことを思い出したら、あの言葉を聞けるのを待ってるね」
そう言って、莉夜は眠りについた。




