13話「賢者……そして」
「ふん、初めましてなぞ白々しい。全く……あれほど禁術はやめておけと言っておいたのに」
「お師匠様……あの方達は?」
「あれが……残念ながら救世主という奴だ」
私の前でライデルとライトが意味深な会話をしている。
……全然ゲームと展開違うんですけど!
「ルーチェ、あれが……揺蕩うライデルか?」
「うん。だけど……」
「おい、ライデルってあのライデルかエルドア!?」
オーツがエルドアにそう聞いたが、めんどくさそうにエルドアはそうだよ、と答えた。
「ライデル様に……なぜ私の事を?」
初対面のはずだけど……。
「ばかもの! あれほど禁術を、特に時流を弄る事はするなと言ったのに」
「えっと【時の逆撫】?」
何を言っているのだろうか。なぜその魔法を使って時間を戻した事を知っているのだろうか。
「記憶を無くしておるのか」
「いえ、ばっちり覚えていますが」
クロイスに出会った事は絶対に忘れない。
「やれやれ……やはり忘れておるか。“目覚めよ”【覚醒】」
そう、ライデルが言った瞬間に、頭の中で、様々な記憶が蘇る。
「……これは……」
エルドアやオーツ、竜王、それにライデルやライト達を従えた私が女王になり、この国を建て直す記憶だ。
しかし、その後、この国は崩壊する。
私のせいで。
だから私は使ったのだ。【時の逆撫】を。
この幼少期に戻り、やり直す為。
だというのに、私は記憶を無くしてしまい、結局同じ道を歩みかけているようだ。
「ライデル様は……記憶を残したままなのですね」
「そうじゃ。儂は魂を縛っておるからな。いわば、時の流れの中で錨を降ろし、揺れる小舟のようなもの」
「……何を言っているかさっぱり分からないな」
「心配するなエルドア。僕もわからん」
エルドアとオーツは既に理解する事を放棄しているようだ。
「全く……だからわざわざ儂がこうやって来てやったんじゃ……」
「あの未来は回避できるのですか?」
「そのために危険を冒して禁術を使ったのじゃろうが」
「そうでした」
「行くぞ。ルーチェよ、貴様に必要なのは、フラグを立てる事でも折る事でも恋をする事でもない。魔術の修行じゃ」
「……はい」
こうして私は、ライデルとライトを引き連れて、無事地上に戻ったのだった。
☆☆☆
10年後
「ようやくこの時が来たわ!」
「で、今度は大丈夫なのか?」
意気込む私をエルドアが窘めた。騎士団長になったエルドアが剣についた血を払った。
既に、王の護衛達は全員斬り伏せてあった。
「ルーチェ様なら大丈夫です!」
ライトが励ましてくれる。
「貴様は……クロイツ家の!」
「こんにちはミールディア王」
玉座で震える、老人に私はゆっくりと微笑むかけた。
「随分と財産を溜め込んでいらっしゃるとか。しかも隣国に亡命する準備も完璧でしたね。崩れゆく自国の建て直しもせずに……それと私の暗殺計画もどうもお疲れ様でした。残念ながら全て無駄に終わりましたが」
「魔女め! くそ! 貴様さえいなければ! ゼンギル卿の息子よ! 助けてくれ!」
逃げようとする王をエルドアが剣で遮った。
「貴族連中は全員俺が掌握済みだ。あんたから王位剥奪の許可も出ている。すまんが大人しく捕まってくれ」
「くそ……くそ……! 貴様のような小娘に何ができる! この国はもう終わりだ!」
「エルドア、地下牢獄へと叩き込みなさい」
「処刑しないのか?」
「その価値もないわ」
「分かった」
そう言って、エルドアが王いや元、王を連行していく。
「それで、ルーチェ様……これからどうされるのですか?」
「決まってるわ……まずは根本から叩き潰して……スクラップアンドビルドよ!」
私は玉座へ座り、そう宣言したのだった。
というわけで?
一旦ここで筆を下ろさせていただきます
ここまで読んでいただきありがとうございました
続きは何かの拍子で書くかもしれませんが……