THE MOVIE
――先々週。ついに始まった戦隊ヒーローバトルロイヤル。といっても先々週は参加メンバーの自己紹介を兼ねた顔合わせだけでバトルはなし。そして先週――いよいよ本格的にバトルが始まったワケだけど――やってしまった。まさかの始まって第1週目にして私達だけで参加者を14人も倒してしまった……。
いやまあレッド、ブルー、グレーちゃんの強さは今更言及する必要はないと思うけど、他の戦隊の人達って謂わばこれから戦隊ヒーローの主役の座を勝ち取ろう! ……とする新人さん達なワケで、当然だけど初期設定の装備、強さになっている。これに対して私と小豆ちゃんは1度はラスボスを倒している、途中で1度はバトルスーツをパワーアップさせているという――俗に言う『強くてニューゲーム』状態なので他の戦隊のレッドの人でさえ相手にならなかった。
なので私達だけで14人という半分以上の人間を倒してしまう事態が起こり。更に不幸な事に残った11人……。この11人がまず私達ごはんですよの5人。サイコパス戦隊シリアルキラーのおばちゃんが5人。そして格闘戦隊グリーンベレーの緑茶という……イロモノ組の11人しか残らなかったってゆーね……。
――というところで今週のミーティングなワケだけど。
「んで。早速だけどバトルロイヤル参加メンバーが追加される事になったよ」
これを言ったのはそのバトルロイヤルのMCであるキリンちゃんだった。
「え? もう?」
と思わず呟いちゃったけど、まあそりゃそうか……まさか最初の戦いで半分以上も脱落するなんて誰も思ってなかったろーし。画を保たせるためには仕方ないのか……。
なので私は話を進めるための質問をする。
「それで? 何人くらい追加されるの?」
「56人」
「ごっ…………なんで初期人数より多くなってんのっ!」
と私が声を上げていると小豆ちゃんがそれを片手で制する。
「落ち着けつみれ良く考えろ。我々は1週で14人も倒してしまったんだぞ? ここからペースを落とすにしてもそれくらいの補充がなければ撮れ高がないのは目に見えている」
「うん。まあ……」
それは私も同じ考えだし……仮にそうか。仮に私達が14人ずつ倒していっても56人いれば4週は保つって計算なのかな?
――と。
「それについては俺から話がある」
と更に話に割って入ってきたのはレッドだった。
「実はこのバトルロイヤル。大好評につき映画化される事になった」
ええっ! まだ1回しか戦ってないのにもう大好評で映画化なの?
「つまり映画化に伴い要員を大量に補充し、その映画内で一気に人数を減らす事によって勝った人間の活躍を際立たせるという寸法だ。俺達はその筆頭らしく、監督からリーダーの俺に声がかかっていて出来れば俺達だけで20人くらいは倒して欲しいと言われている」
ああ、なるほどね。で、そうなると私達が約20人。他の人達が何人か倒すとして合わせて30人くらい倒すと仮定すると、映画じゃなくてレギュラーシーズンの増える人数は大体26人くらいって事か……? それならまぁそんなに増えたワケでもないのかな?
――ん?
私の頭にある疑問が浮かぶ。
「ねぇ、ちょっと待って。戦隊ヒーローが5人組って考えると56人って1人余ってない? それとも3人組のヒーローが2組混じってるとか?」
レッドかキリンちゃんが答えてくれるだろうと思ってした質問だけど。案の定答えてくれたのはレッドだった。
「いや、余っていると言えば余っているのだが実際には少し違う。そいつは『陰キャ戦隊ソロボッチ』という最初から1人の戦隊だ」
それ戦隊って言うのっ!? なんか違う意味でダークヒーローっぽいんですけど!
――としているとそこへキリンちゃん。
「因みに残りの55人は『陽キャ戦隊パリピ55』ね」
パ、パリピゴーゴーッッ!!
「パリピ55人とボッチ1人の56人なのっ? なんかちょっとイジメっぽくなってないっ!?」
「同感だな」
え? なんか珍しくレッドが同意してくれたんだけど……?
「55人もいると色が被りまくりらしい……」
そっちっ!? いやそっちじゃなくてボッチの話してたんだけど私はっ!
しかし私の心情など無視してレッドは続ける。
「なのでパリピレッドだけでもパリピレッド(純正)、パリピレッド(亜種)、パリピレッド(別種)、パリピレッド(雑種)といるらしい……」
「ええっ?」っと私が小声で漏らしているとキリンちゃん。
「いや、レッドはまだいいんじゃない? ブルーなんてパリピブルー(インチキ)、パリピブルー(ヤラセ)、パリピブルー(イカサマ)、パリピブルー(八百長)だよ?」
いやもう意味わからん。純正がいない時点でブルー全員偽物じゃん! 確かに紛らわし過ぎてちょっとイジメってかイヤガラセっぽくなってるけどさ…………視聴者への。
「まあ、イジメに関してのクレームは俺が監督に直々に入れておくとしてだ……その56人が揃い次第、話は映画に切り替わると心しておいてくれ」
レッドの言葉に私達全員が無言で頷いていた。