アニバーサリー
「ところでお前達。前に少し話したが今年でスーパー戦隊ヒーローが何周年か知っているか?」
と。ミーティングののっけに全員に質問をしてきたのはレッドだった。
これにレッド以外の私達は互いに互いの視線を合わせアイコンタクトを送る。もちろん意味は「知ってる?」という質問だけど、返ってきた答えは全て「知らない」だった。なので代表して私が口を開く。
「知らないけど――それをわざわざミーティングで質問する辺り今年はちょうど何十周年記念って事?」
だとすると戦隊ヒーロー大集合もあるだろうからまた私達の出番が増える……。結局ラスボスを倒して最終回迎えたはずなのにずっと出ずっぱりになるんだけど――
レッドの答えは?
「いや、今年は48周年だ。つまりあと2年は周年記念はない。だが逆に言えば2年後は50周年記念なので盛大な祭りがあるだろう」
確かに。50周年は大きな節目だからかなり盛大なイベントになりそう。……と考えているとレッドは続ける。
「しかしそれは別として――実は今年はチョリッ酢☆彡かずをの生誕80周年で記念にスーパー戦隊ヒーロー大集合をするそうだ」
なんでっ! っと思うより先に私は口が動いた。
「ちょ、チョリッ酢☆彡かずをって腋から声と召喚獣出す声優さんでしょ? 私達の主題歌を歌ってくれてはいるけど戦隊ヒーローとそこまで関係なくない? なのにヒーロー全員集合しちゃうの?」
「うむ。まあ生誕80周年に加えデビュー10周年でもあるからな……奮発したんだろう」
「あ、あんまり答えになってない気がするんだけど……まあいいや。にしても今年80歳で、デビューして10年って70歳で声優になったって事? かなりの高齢でデビューしたのね?」
「何を言っている? チョリッ酢☆彡かずをは人間の年齢で言ったら6歳くらいで若手有望株と言われているんだぞ?」
80歳で若手!?
「あっ! でもそっか、この人も異世界から来たんだっけ? 人間の年齢で6歳って事はグレーちゃんみたいにエルフとか?」
私はレッドから視線を外して、チョリッ酢☆彡かずをとそもそもの知り合いだったグレーちゃんに訊ねてみると。
「いえ、チョリッ酢☆彡かずをさんはエルフではなくて人間と半魚人のハーフ。つまり半魚半です」
「ハンギョハン! 半半魚人とかじゃないのっ!?」
ってかそもそも半魚人が人間と魚のハーフだとしたらクウォーターが正しいのか? って、よくわからないから私は大人しくグレーちゃんの言葉に耳を傾け直す。
「いいえ半魚半です。えっとわかり易く説明すると――人魚はわかりますよねピンクさん? 上半身が美しい女性で下半身が魚の……?」
「うん。それはまあ知ってる」
「で、上半身がサバで下半身がカツオなのが半魚半です」
「ただの魚じゃん! それはただの新種の魚でしょう!」
という私のツッコミが炸裂しているとグレーちゃんはクスクスと笑い。
「とまあ今のは冗談で……本当の半魚半は見た目は殆ど人間で、人間と半魚人の良いとこどりをしたような特長を持っています」
「へぇ〜そうなんだ?」
まぁ魚寄りの姿じゃさすがに声優さんは出来ないよね……。と考えているとグレーちゃんは続ける。
「例えば水中で息が出来るとか、尋常じゃないくらい速く泳ぐ事が出来るとか、魔法は人間より得意とか、刺身にすると美味しいとか……」
ちょっ! 食べるのっ? それはもう魚寄りってか魚じゃない?
「あとは泳いでないと死ぬとか……」
マグロッ!? 良いとこどりじゃなくてデメリット出てきてる!
「体の部位に大トロ、中トロがあるとか……」
やっぱマグロじゃん!
「あとは腋から声と召喚獣を出すとか……そんなところですね」
「あ、それ半魚半の特長だったんだ……」
いや、てゆーかチョリッ酢☆彡かずをは半漁半なんだろうけどさすがに特長……いや特徴の半分くらいは冗談だよね……? じゃなきゃ声優さんやってられないし私達の主題歌歌えないよね……?
と私が頭に疑問符を浮かべていると小豆ちゃんが入り込んでくる。
「お前達。良くわからない韓国料理の話はもう済んだか?」
ええっ! 小豆ちゃんハンギョハンを韓国料理だと思ってたのっ! サムギョプサルみたいなっ? 確かに語感の雰囲気はそんな感じあるし美味しいとか話してたけども……。
「あ、小豆さん。ハンギョハンは韓国料理じゃなくてモンゴル料理ですよ?」
訂正するのそこじゃなくないグレーちゃん!?
「なるほど。モンゴルの海鮮料理という事か……」
しかももう料理なのは前提になっちゃってるし。
「まあ、話が終わったのなら私はレッドに聞きたい事がある」
と言って私達からレッドへと体を向ける小豆ちゃん。
「なんだ?」
「素朴な疑問なのだが、以前つみれが地球は平和で戦うべき敵がいない……という話で我々は今バトルロイヤルをしている訳だろう? ならば歴代ヒーローが大集合をしたところで我々は一体何と戦うのだ? まさかそっちでもバトルロイヤルをする訳じゃないだろう?」
あ、確かに!
「なるほどいい質問だ。無論やるのはバトルロイヤルではない。やるのは『スーパー戦隊ヒーロー大運動会』だ」
『スーパー戦隊ヒーロー大運動会っ!?』
口角を釣り上げるレッドに私達全員の声が揃った。




