四天王(10人)との戦い
――と。いうワケで。
次の日曜日に早速スク水ぬぐ男さんの実家に乗り込んだ私達だけど……。まさかラスボスの実家がお城だとは思わなかった。ハッキリ言ってぬぐ男さんの案内がなければ迷子になるレベルで立派な本丸と天守閣だったけど、あくまでそれは外観だけの話で実際お城の中は謎の覆面レスラー専用のタイツ売り場になっていた。
まあ、ラスボスを守護する四天王が10人も居るんじゃ小さい家って事はないだろうとは思ってたけどまさかお城とはね……。んで1階がコンビニで2階からがマンション……っていうマンションと同じような造りでスク水さん家の実家は1階が謎の覆面レスラー専用のタイツ売り場で2階からが本格的な天守閣という一風変わった造りになっていた。
と、先週の振り返りをしていたところに――
「でもぬぐ男さんのおかげで2階まではスムーズに進めましたよね? 2階からも四天王が出てくるまではノンストップでしたし」
これはグレーちゃんの発言。それにライダーさんが続く。
「うむ。しかもラスボスの城に乗り込んで最初の第1週で四天王を3人も倒せたのは上出来なのではないか?」
「確かにな……」
と頷くレッドだけど。
うん。実は私達は既に四天王という名のブルマ十神将を3人倒してきている。――で、今は当然だけどいつものファミレスに集合してミーティング中。んでなんで3人だけ倒して帰って来たかというと……まぁ、結論から言えば時間切れだったりする。知っての通り私達は日曜の朝30分しか戦わない。今はパンストセイントちゃん達と果麺ライダーさんの枠も使って1時間半という時間があるけれど、それでも第1週目では天守閣に乗り込み四天王を3人倒すのが精一杯だった。なので第2週目になる明日からは残りの四天王を時間の限り倒すって方針なんだけど……。
私はゆっくりと口を開く。
「いやあのライダーさん。3人も倒せたのは上出来って言ってますけど……ライダーさんが途中で『ちょっとコンビニ行ってくる』って言って急に引き返さなければもっと進めてたと思うんですけど? 大体変身して3分間しか戦えないのにその変身中、戦闘中にコンビニに行くってどーゆー神経しているんですかっ!」
「いや、そう言われてもあの時は今週の『週刊便座カバーマガジン』を買い忘れていたのを思い出して仕方なくだな……。アレを買わないと翌日からの便座カバー話についていけなくなるだろう?」
『確かに』
私以外の全員が頷いていた。
「いやいやいやいや嘘でしょう? それ週刊誌の必要あるぅ? 誰がわざわざそんな雑誌毎週買うっていうのよ!」
という私の疑問に即答したのはレッド。
「誰って全国の少年達に決まっているだろう……少年誌なんだから」
「少年誌なのっ!? そのタイトルと内容で?」
せめて主婦層がターゲットであって欲しかった。
と考えているところへブルー。
「まあまあピンク殿。買い忘れたのが『便マガ』では途中で買いに行ってしまうのも致し方ないとして……それでもライダー殿はコンビニから帰って来てちゃんと四天王を1人倒しているから良いではないですか」
「うっ……まあそうなんだけど」
――実はラスボスの城第1週目で出会った四天王3人を倒したのは私と小豆ちゃんとライダーさんだったりする。
まず最初に現れたブルマ十神将は2人で、カレーライスとグリーンカレーライスだった。無論なんの変哲もないカレーとグリーンカレーだったので私と小豆ちゃんが変身する事もなく美味しく頂いてこいつらは難なく撃破。強いて言うならトッピングがチャーハン……つまり普通のカレーでいう福神漬けやらっきょうの乗っている部分がチャーハンだったんだけど、そこがチャーハンじゃなくてエビチャーハンとかカニチャーハンだったらもっと美味しく簡単に撃破出来たと思う。
そんで次に私達の前に立ちはだかった四天王が――時速100キロで走るボディビルダーだった。「奴とは因縁があるからオレにやらせてくれ」と言ってボディビルダーに戦いを挑んだのは勿論ライダーさん。そりゃまあ地球に来ていきなり特に理由もなく自分を半殺しにした相手だもんね……自分の手でリベンジしたかったんだろうけど――。けど、その途中でコンビニに雑誌を買いに行くのはどうかと思いますけどね? リベンジよりも地球の平和よりも明日の便座カバーの話が大事……と。そして最後は3分間変身しちゃった後だから、結局果麵ライダーさんも変身しないまま時速100キロで走るボディビルダーを時速110キロで走って追い越して倒してしまうという……。じゃあもうバイク乗らないで自分で走った方がワンチャン速いんじゃない? って可能性まで出てきた果麵ライダーさんだった。
――という感じでとりあえずラスボスの城に乗り込んで四天王ことブルマ十神将を3人倒した私達だけど、結局この日のミーティングでは敵が敵だけに大した傾向もわからず対策も立てられず、明日からの第2週も行き当たりばったりで戦う事となった。




